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今日は朝からどんよりと曇った鈍色の空で
なんとなく陰鬱な気持ちで登校した。

その上。
それ以上に。
もう朝のHRが始まるというのに月代が教室に来ない。

高校に入学して登校日こそ遅れた月代だが
それ以外一度だって休んだことや遅刻をしたことがない。
むしろ朝は早い方で隣の席でおはようと笑う月代がいたのに。

今日はまだ来ない。

朝の部活を終えた水品が
「月代まだ来てないのか?」
と古泉に聞いているのが聞こえた。

担任の笹山先生はHRを始める前に座席を確認して
「月代がまだだな」
と言った。
学校に連絡もしていないのだろうか。
俺は空っぽの月代の席を見ながら不安に思う。

「あいつ何やってんだ!」
と水品が呟くのと
「携帯も切ってるのかしら?つながらないわ」
と古泉が返すのが聞こえた。
いちばん仲が良さそうなこの二人が連絡を取れていないことに
言い知れない胸騒ぎを感じながら再び不在の月代の席を見た。

それから昼になっても月代は登校して来なかった。
笹山先生を追いかけて聞いてみようと廊下に出たら
月代に対する俺の感情を知っている佐原が戻ってきて
「水品と古泉が今廊下で笹山先生に月代のことを聞いていたぞ。
 やっと連絡がついたらしいが、午後の授業にも間に合わないそうだ」
と月代に関する情報を教えてくれた。
「そう・・・・・・なのか。
 どう・・・・・・したんだろうな」
「さてな。
 授業に間に合わないほど遠くにいるのか。
 ひとまず病気や怪我ではないようだったぞ」
ほっとしたように佐原を見たのだろう。俺は。
「ひとまずは良かったな」
と佐原が笑った。
「ああ」
「ただ、」
俺が頷くも束の間、佐原が言った。
「関係ないような気もするが今日はバレンタインデーなんだな」
「え?」
「いや、月代が来ないのを懸念してあの二人も色々憶測していたようでな」
と佐原はまだ廊下にいる水品と古泉を一瞬見やる。
「どこぞの女子に告白でもされてそのままサボってたら容赦しないと言っていた。
 言ってみた後で、月代に限ってそれはないと二人同時に首を振っていたがな」
「そう・・・・・・か」
バレンタインデー?告白?今日?
ああそうか、今日はそういう特別な日だったのか。
特定の女子校と学校行事は合同で行ったりしているが
そのうち合併するにしても一応今のところここは男子校だ。
そうなるとそんな機会は通学中・・・・・・月代が誰かに告白された?

「だからそれはないとあの二人が否定していた」
俺の感情を読み取ったように苦笑して佐原が言った。
「それはない?」
「少なくともそんなことで浮かれて学校にも連絡しない月代は月代らしくないと思わないか?」
「・・・・・・思う」
「明日になれば分かるだろう」
佐原はそう言って、
「余計なことは考えぬことだ」
そうとも言って、苦々しく笑った。

月代の席は空席のまま
月代の姿がないままで授業が終わった。
月代の姿がないことは酷く虚無を感じさせた。

月代に会いたい。
一目見るだけでもいいから。
胸がざわついて気持ち悪くなるほど
自分の感情が抑えきれなくなるほど
俺は彼を、月代の存在を、求めて止まないのだ。

「月代は今日どうして休みだったんですか?
 病気や怪我ではないんですよね?
 課題とノートを届けに訪ねて行きたいんですが」
俺の言動が意外だったのだろう。
放課後になるなり教員室に駆け込んでそう言ったら
笹山先生はポカンとした顔をして物珍しそうに俺を見た。
「届けにって家までか?」
「はい。住所教えていただけますか?」
「う~ん。
 ・・・・・教えんこともないがすれ違うかもな」
「はい?」
「行かなくても月代はもうすぐ学校に来るぞ」
「・・・・・・今からですか?月代が?」
「おうよ。
 無断欠席は無断欠席なわけよ。
 どんな事情があったにしてもな。
 だから反省文は書いてもらうぞって言ったらな
 今から書きに来るとさ」
「反省文を書きに今から・・・・・・」
「おかしな奴だよな。
 今日のことは今日中に責任取りたいんだと。
 てことで、もうちょっとしたら来るんじゃないか
 その前に上杉は生徒会あっただろう?ちゃんと行けよ」
「・・・・・・はい」
月代が来る。
月代に会える。

幸い本日の生徒会室は
プリント配布のみで終わり
すぐに教室へ向かうことができた。

息を切らして向かったほの暗い教室の片隅には
・・・・・・月代がいた。
あっけなくそこにいた。

今日ずっといなくて不在が不安で仕方なかった存在。
会いたいと思えば思うほど胸がざわついた存在がいた。

「月代」
俺の言葉にゆっくりと振り返った月代は
「ああ、上杉」
と俺の名前を呼んだ。
その声もその表情もなんだかいつもと違う。
ぼんやりとしてどこか心もとないような雰囲気を纏っている。

「月代」
「ん?」
「今日いなかったな」
「ああ、うん。連絡するの忘れてて
 反省文書かされてるとこなんだ」
机の上に広げた用紙をめくって答える。
知っている。
だからここに来たんだ。
だからここに会いに来たんだ。

会いたかったんだ。

「上杉? 
 どうかした?」
月代をただ見つめたまま
固まって動けない俺は立ち尽くしたまま、
月代を見つめるだけで言葉を紡ぐことができない。

どうかしたのは月代がいなかったからだ。
どうかしているのはやっと月代に会えたからだ。
それなのに今、目の前にいる月代が儚くて不安になる。

キュキュっと床を歩く音がして月代が近づいて来る。

「心配してくれたんだって?
 さっき笹やんから聞いた。ありがとな」
首を横に振るのが精一杯なのに
染み入る月代の存在が優しい声が
この身と心に波紋を広げて胸が詰まった。

「じゃ俺、これ出して来るから。
 また明日ね」
そう言ってこの場を去ろうとする月代の存在が
惜しくて寂しくてもっとそばにこのままいて欲しくて言ってしまった。

「好きなんだ。ずっと。月代が。
 好きだ」

きっともう限界なのだ。
隠しておくことはできない。
こんなに好きならいつかはバレる。
佐原にだって古泉にだってバレている。
水品にだって知られてしまっているんだ。
曖昧にいつかバレるよりも言って楽になりたい。
何かを望むわけじゃないんだ。望んだりはしない。

ああ、そんなことよりも俺は・・・・・・月代に告げたかったんだ。

「好きなんだ」
顔をあげることも出来ずにもう一度告げると下から覗き込む月代の顔があった。
喜んでいるようには見えないけど嫌悪されいているようでもなさそうな表情。

「・・・・・・好きって、俺と付き合いたいってこと?」

そして直球。
付き合いたい?俺が月代と?
こんな面白みのない男の俺が?

「違っ・・・・・・その、そういうことではなくて」
そこまでは望んでいない、と言えば嘘になる。
ただそこまで望んでいると言えば振られてしまう。
「友人としてでも近い存在になりたいと」
これくらいなら言ってもいいだろうか?

そろりと目を開けて月代を見た。
特に表情の読めない瞳が黒く深く濡れていた。
夜の闇で月夜を映して揺れる海に浮かぶ月のようだ。

「うん、そっか、よろしくな」
言葉を紡ぎかねていると息を吐くように月代が言った。
「とうとう雨が降りだしたな
 上杉、傘持ってる?」

気がつくとトタトタと雨粒が窓を叩く音が聞こえる。

「ああ、朝から曇り空だったから・・・・・・」
「そっか。よかった。
 もう遅いし下駄箱まで送る」

ほんの少し空気が緩んだ気がした。
ほんの少し月代が笑った気がした。

 
「俺、これ提出したあと保護者呼ばれて面談だから
 一緒には帰れないけど、気をつけて帰って、上杉」

下駄箱まで送ってくれた月代は反省文でひらひらと振りながら言った。
ああもうさすがに離れなければ、帰らなければ、行けないんだなあと、
肩ごしに振り返ったら、

「ありがとう」

と月代の声が追いかけてきた。
その声の優しさに体が震えた。





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