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「で、俺の秘密って何だよ?」
「思い浮かばなかったんだ?」
「だったら何だよ」
「俺が知ってる水品の秘密の話はね・・・・・・」

それ、言わなきゃだめか?
まあ、それくらいしかないけど。


『秘密の話(後編)』


「俺から言うね」
古泉が言った。
月代はえ?って顔してたけど
古泉は気に止めないように話し始めた。

「実は学校の敷地内で菜園やろうと思ってて
 空いてる花壇に種まき中なんだ」
なんだその秘密!
ああ、でも、見つかったら怒られるかもって意味では
秘密は秘密なんだろうな。怒られるのかな?
月代は不思議な顔して古泉を見てた。
「何、植えるんの?」
「花壇じゃせいぜいハーブくらいかな。
 家庭科部で使う分くらいは育てたいのよね」
「もっと広いところがあったら?」
「野菜かなぁ。そうなるともう家庭科部じゃなくて園芸部よねぇ」
「園芸部かぁ」
俺にとってはわりとくだらない話なんだけど月代は真剣に聞いてた。
「俺の秘密は終わり。
 水品がくだらないとか思ってそうな顔してるけど
 次は水品だからね。」
「俺?」
「そう。水品。
 自分で言うのが嫌なら俺が話そうか?」

・・・・・・。
・・・・・・。
「否、いい」
ああ、どう言おうかな?
言ってしまえば大した話でもない。
改まって言うから言いにくいだけだ。
でもなぁ。勘違いかもだしなぁ。でもなぁ。
本人目の前にしていまさらな話言いにくい。

「言いたくなかったら言わなくてもいいよ」
月代が眉をひそめてそう言いそうな顔をした。
ばっか。言うよ。言いたくないわけじゃないから。


「違うかもしんねぇけど」
「うん」
 
ああクソ。
柔らかに俺を見る月代の表情があの日に重なる。

「教室で会うより前に見た・・・・・・と思う」
「え?」

「月代を」
「俺?」
「桜の下にいただろ?
 ・・・・・・いた・・・・・・よな?」
違っていて欲しいのか
そうであって欲しいのか
ずっとよくわからなくて言えずにいたけど、
肯定してくんなきゃ秘密交換にならない気がして
今は月代が頷いてくれることを漠然と願った。 

「そうかも。
 ・・・・・・ああ、それで」
「なんだよ!」
「教室で水品が大声出したの
 そういうことだったんだなって」
「おっ覚えてたのか!」
「忘れないよ」
月代がくすくす笑う。
古泉もごもっともと苦笑する。
「もっと早くに学校来れたんじゃねーのか?
 なんで5日遅れで入学とかして来てんだよ」
以前聞いたときは家庭の事情とか言ってたっけ。

「こーら。
 水品が秘密話す番でしょ。
 なんでつっきーに質問してんの?」
やんわりと古泉が言う。
だって俺の秘密もう言ったじゃん。
「まだ終わりじゃないでしょ」
見透かしたように古泉が付け加えた。
「何をだよ」
「・・・・・・」
無言の圧力。

勘弁してくれよ。
桜の下で泣いてただろう?
それを見て俺も泣きたくなった。
とか、儚い幻のようだったとか、さ
そう言うこと言えってことなのか?

「違うよ」
古泉はまたも見透かしたように言って
「ごめん水品。
 俺の無理強いだったわ」
と神妙な顔して謝った。
何だか解らないが俺は解放されたらしい。 
つまりは俺の秘密の話は終わりってことだ。

いよいよ月代の秘密の話だなって月代を見たら
「やっと言える」だってさ。
言いたかったのかよ。

「俺、学校関係者なんだ。
 って言うか・・・・・・理事長代理?」
「は?」
「・・・・・・」
さすがの古泉も絶句の様子。

「だから水品の話も古泉の話も
 意外と関係なくはないというか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「どう言えばいいのかな。
 俺の保護者だった人がこの学校の後継者だったんだけど
 その人それできなくなっちゃって俺が急遽任されちゃって」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「つまり、表立っては秘密なんだけど俺がこの学校の理事長ってことになってる。
 その手続きで入学が遅れたけど学校には来てたりしたところを水品に見られてた、と」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「だから古泉の菜園の件。
 友達だからってことじゃなくて良い提案としてもらっとくよ。
 確か使われてない畑あったはずだから認可も容易だと思う」
「・・・・・・それはありがたいけど」
やっと古泉が言葉を発した。
「これってかなり重要な秘密なんじゃないの?
 バレたらクビになったりするんじゃないの?」
俺はそこまで考えが及ばなかったけど
古泉に言われて重大さに気づく。
「クビはともかく学校は変わらきゃなんないかもだけど
 一応、表立っては身代わりになってくれてる人がいるから
 秘密も通せるし実質そこまで大変な事態にはならないと思ってる」
「そうなの・・・・・・それでも・・・・・・」
なんで俺を見るんだよ古泉。
俺がバカやってうっかりバレるんじゃ?ってか。
「なんでそんな大事なことを俺達に話す気になったの?」
視線を月代に戻してから古泉は心配そうに言う。

「古泉と水品だからだよ。
 君たちからバレるなら良いんだ。
 秘密にしておくほうが心苦しかったから」
だってさ。
君たちって言い方は照れ隠しなんだろう。

俺と古泉はなんとなく顔を見合わせて
「ありがとう」
「おう」
と言った。

なんか月代の秘密はとんでもなかった。
でも、別に月代は月代だし。
理事長だろうが学園長だろうが
だからなんなのか俺の頭じゃわからない。

「使われていない旧校舎をね、」
なんだ?
「見回ったときがあったんだけど」
なんだなんだ?
「人なんているわけないと思ってたら
 いてさ、見つかったことがあってさ、
 だからそいつにはいつかバレるかも」
だれだよそいつ。

「うちのクラスの上杉」





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「俺の秘密聞いてくれる?」
唐突というわけでもないけれど
昼休みに屋上で俺と古泉と月代で飯食い終えて
いつもどおりだらだら話してたところで月代が言った。

『秘密』

「秘密って、こないだのアレ?」
古泉が問う。

アレってのはアレだ。
こないだのスポーツテストの約束事。
俺が一方的に勝負を挑んだスポーツテスト。

勝敗のつけ方なんて特に決めてなかったけど
月代はその日体調を崩してたみたいで途中で抜けた。
だからなのか月代は「水品の圧勝だったな」とか言った。
「棄権」は「負け」ってことらしいが俺は納得いかなかった。

なにせサッカー部推薦入学の俺は
帰宅部で熱まであった月代に走りで完勝できなかった。
(つまり100m走で負けた。なんとか50と200は勝ったけど)

そんでそれを負けとした月代が言ったんだ。
「何がいい?」って。
別に負けたら何するとかも決めてなかったし
俺はとにかく月代と競いたかっただけだから
いらないって、そもそも病人相手に勝負もあるかって、
そう言うつもりだったし、そう言うべきだったと今も思う。

けど、
俺の口から出た言葉は
「秘密教えろ」だった。
横にいた古泉はが呆れ顔だったのは正しい。
月代本人は「いいよ」って何を話そうか考える顔をした。

違うんだ。
いや違わないけど。
そういうつもりはもともとなかったんだ。

けど、月代の様子を見に行った保健室に
なんでか接点のなさそうな上杉がいてさ
そんでその上杉がなんか意味深な顔で
「月代が熱を出したのは俺のせいだから」
とか言うもんだからもやっとしたんだ。

そんなん俺知らねーし。
なんなの?その言い草。
まるで上杉と月代だけの
秘密が存在するような言い方。

で、
「秘密教えろ」
となったわけだ。
さすがに上杉との、とは言わなかったけど。

アレ、の説明は終わり。
そんで今何らかの秘密を
月代が話そうとしている状態。
何を言うつもりなのかいつになく真剣な顔。
これって結構まじめに秘密打ち明ける感じ。

月代が口を開きかけたトコで、
「待って。ストップ」
古泉が遮った。
「なんだよ古泉」
なんとなくほっとしながら訊ねる。
「俺は勝負してないし、勝ってもないのに、
 聞いてもいいの?」
だって。
確かに古泉は関係ないのかもしれない。
けど、さっきの、月代の顔見たらなんか、
俺だけが聞いてもいいものかと思ったんだ。
だから聞くなら古泉も一緒がいい気がするんだけど。

「いいよ。むしろ聞いて欲しいんだ」
月代はなんてことないように笑った。
古泉はそれでも納得いかない顔で、
「う~ん。ちょっとまって」だってさ。

「なんか不公平」

少し考えてから古泉が言った。
ああ、さっきの月代の顔見たら
確かにそう言いたい気持ちは解る。
月代の秘密は聞きたいし知りたいし
だからあの時小狡くもああ言ったけど
月代の負けとか思ってないのにそれってやっぱ、

不公平。
だよな。

「不公平?」
って月代は首をかしげて笑うけど
「不公平」
って古泉が念を押すようにもう一度言った。
俺も「そうだな」って古泉に不本意ながら同意した。

「だから、俺も水品も秘密言うよ」
おいおい。俺の同意なしかよ古泉。
まあ、うん、同意するけどさ。
つーか・・・・・・

「・・・・・・構わねーけど、俺、秘密って浮かばねぇんだけど」
聞かれりゃ何だって答えるけどそれじゃダメなのか?
ダメなんだろうな。そう言うのjは秘密って感じがしない。
月代には強要しといて自分は浮かばないってどうなんだ?

「俺もすぐには浮かばないから
 つっきー明日。明日秘密の交換しよう?」
古泉が提案する。
俺は明日になっても浮かばない気がするけど
とりあえずうんうん頷いて月代の顔を見る。
「律儀だな~」
って月代は笑って
「ありがとう」
って嬉しそうに言った。

ああ、俺、同意して良かった。
古泉がいてくれて良かった。
一方的にならなくて良かった。

秘密。
秘密か。
どうしよっかな。
マジで浮かばない。
月代は何言うつもりだったんだろうな。
古泉はきっとそれなりのこと考えて来るんだろうな。
マジで俺はどうしよう。でも月代の秘密聞きたいしな。

そんなことを考えてたら古泉が
「浮かばなかったら水品の秘密は俺が話してあげるよ」
だって。

はあ?
俺が浮かばない俺の秘密をなんで古泉が話せるんだよ?
意味がわからないけどニヤニヤしてるから何かあるらしい。

******

スポーツテストとかアレについての説明を加えたもんだから
思った以上に長くなってしまいました。前後編とか。
一応書くだけ書いてサイトアップの際に考えます。


今日は先輩達とレギュラー組は遠征に行っていて
残った1年組同士による他校との交流試合。
練習試合も滅多にさせてもらえない俺らは
こういうガチな試合は高校入って初めてで
朝からテンションマックスだった。

とは言え試合は午後からで
もちろん真昼間に試合なんかしない。
この時期にそんな時間に試合なんかしたら
熱中症のオンパレードで試合になんかならない。
午前中はランニングとストレッチと軽いメニュー。
そんで昼間はみんなで屋内で一斉に雑魚寝の昼寝。
で、起きてシャワー浴びてユニフォームに着替えて集合。
うちのグラウンドは設備が立派だと評判どおりのグラウンドで
練習試合や対抗試合はうちでやることが多い。もちろん今日も。

「レギュラーユニフォームだ」
生田が言った。
普段俺らが着ることのないユニフォーム。
海が近い直身高校のチームカラーは
海の色を映したターコイズブルー。
俺は密かにかっこいいと思ってる。

ピッー。
試合開始のホイッスルが鳴る。

キックオフとともに試合が始まる。
サッカーまみれの暑い夏が始まる

ちょっと張り切りすぎたかもしんない。
だってさ、レギュラーユニフォームなんか着ちゃって
俺のやりたいポジションでのガチな対抗戦なんだもん。
張り切らない方が嘘っていうか張り切らないわけないって言うか。

とにかくキックオフから走りまくった。
前線から追って追ってプレス掛けまくってたら
いい位置でボール拾えたもんだから迷わず打ったら先取点。
俺のやりたいトップ下左サイドはやっぱり俺の得意なポジションで
裏をかいて走り抜けたらいいボールが来たからそのまま流し込んで2点目。
まあこれはドンピシャのクロスをあげた生田をほめてやってもいいかもな。

とにかく俺はノリノリの絶好調で、
前半は失点もあったけど2-1で折り返し。
ところが後半立ち上がりでいきなりこけた。
あ、やばい。体重かかっちゃたかなと思うと同時にこけた。
こけながらサッカー選手にとって最も怖い二文字が浮かんだ。

怪我?

痛みに立ち上がれないでいる俺を見て監督(代理)は交代を指示。

やむなく交代させられた俺はピッチの外でアイシングしながら
まだ走り続けてる生田達をたぶん呆けた顔して見てた。

「かなり痛むか?」

最初誰かが何か言ってるな
くらいにしか思わかなったから
なんとなく聞き逃して試合を見てたら、

「水品」

と俺を呼ぶ声がした。
振り返ってその声の主を見たら
そばでしゃがんで珍しく神妙な顔した月代がいた。

「なんでいんの?」
「それより痛みは?」

「だいぶ引いたかも。
 なんか頭ぼーっとしてて解んねー」
「ちょっと見せろ」
なんだおまえトレーナーみたいだな。
とか思いながらひねったところを見せた。

「これ痛い?」
とかいいながらあちこち押してくる。
さっきはけっこうひねったかもと思ったけど
一時的なもんだったみたいで全然痛くない。

「けっこう平気。
 今なら入ってやれる」
そう言ったら
「そうみたいだな。よかった」
と月代があからさまに安堵した。

「大活躍だったな」
「見てたのか?」
「うん」
「後半はこのざまだけど。
 久々の試合だったから最後までやりたかった」
「大事に至らなくてよかったよ」
「そりゃそうだけど」
アイシングをといて立ち上がって足首を回す。
踏み込んで体重をかけても全く問題ない。
これなら少し我慢してから続ければよかった。
そういう顔をしていたせいか、
「慎重すぎるくらいでいいんだ」
と月代が言った。

「水品の目標は国立なんだろ。
 こんな練習試合で無茶するより
 いずれ来るレギュラーの試合に備えろよ」
とも言った。
こいつはさ、俺の夢、本気にしてる。
本気で俺がレギュラーになって全国行くって
まだ紅白戦すらさせてもらえない俺を見て言うんだ。

「そうだな」
「そうだよ」

試合は3-1でうちの勝ち。
つっても月代の言うようにただの練習試合。
しかも1年生同士の記録に残らない練習試合。
試合を終えたらクールダウンして今日の部活は終了。

月代が俺が帰りの準備終わるまで待ってるつーから
急いでシャワー浴びて着替えて落ち合った。

「なんでいたんだ?」
今日は土曜で学校はもちろん休み。
部活動もない月代がいる理由がわからない。
「図書委員のヤボ用。
 終えて渡り廊下歩いてたら
 サッカー部試合してんの見えて
 水品試合してんじゃんって見に来た」
「図書委員って意外と面倒なんだな」
「好きでやってるからいいんだよ」
「好きでやってんならいいけど」
俺は、今日の試合、月代が見てたこと
実は、かなり、なんか、嬉しかったんだ。
怪我しかけるとこも見られたけど活躍も見てたから。

「レギュラーユニフォーム似合ってたよ」
とか言ってくれるし。
「そのうち名前入りのを勝ち取るぜ」
って言ったら
「期待してるよ」
とか言ってくれるし。

腹が減ったからラーメン屋喰いに行ったら
帰りしなに商店街の福引券を2枚くれた。
「七夕まつりって書いてある」
見ると確かにそう書いてある。
練習試合の日にちを丸く囲ったカレンダーを思い出した。

「確か今日7月7日だったぞ」
「そういえばそうだな」
ぶらぶら歩いていたら福引会場にたどり着いた。
「この券1枚で1回できるみたい」
「おっしゃ。
 勝負だ月代!」
「りーかい」

結果。
まあそんな簡単に白玉以外は出ねぇよ。
残念賞のポケットティッシュ山積みだもんな。
そんだけ残念賞の白玉が入ってるってことじゃん。
別に白玉だって悔しくなるレベルの運じゃねーっつの。

それなのに月代ときたら。
俺、月代のこういうとこがさぁ。もう。

「水品にやるよ」
なんでワールドカップ仕様のサッカーボール当ててんの?

福引会場では景品と一緒に短冊ももらった。
会場に飾られた笹の葉に吊るしてくださいだって。
人がごちゃごちゃいたら面倒くさいんだけどそれもなくて
俺と月代はなんとなく流されて願い事を書く事になった。

俺は、俺の願いごとは書くまでもない。
中学の卒業アルバムにも残ってるし、
小学のころから、サッカーを始めたころから変わらない。
夢は全国、国立、そんでもってスターなサッカー選手になる。

ふと、月代の願い事が気になった。
サッカーボールとか当てちゃう月代。
おまえの願い事ってなんだんだろうな。
書いてるのを覗こうとしたら「だめ」だって。
ちぇっ・・・・・・隠されると気になるじゃんか。

月代が吊るした場所を横目でインプットしてから
書き終えた俺は何食わぬ顔でその短冊を見てやった。
俺は動体視力に自信アリなわけでチラ見で十分読み取った。

で、今書いた願い事を吊るすのをやめた。

「すいません。
 書き間違えちゃったんでもう一枚ください」
福引のおじさんに言ったらターコイズブルー色の短冊をくれた。

レギュラーユニフォームを勝ち取る!

勝ち取れますように。ではなくて勝ち取る!
その方が俺らしいしそうじゃないとだめだ!

書き直す俺のそばで
月代はふわふわと笑っていた。

七夕はさ、1年に1度あるんだから
レギュラーになってから来年新しい願い事書けばいい。
俺の今の目標はこれしかないしそのために頑張るだけ。

一番高いとこに吊るして振り返ったら
夕暮れが押し迫る提灯の光を受けて
やっぱり月代はふわふわと笑ってた。

月代の短冊に書いてあった。

”バカが怪我をしませんように”

自分のことじゃねーのかよ。
バカってなんだよ。

鼻先がツンと痛かった。






 



 
 
もうすぐ春休みだなーサッカー部の俺には休みなんてないけど。と
白い息を吐きながら自主練習にストレッチしてたら 
「月代、上杉と付き合うって」
古泉が唐突に告げた。

「はぁ?なんだよそれ、意味解んねーし」
「恋人同士になるってこと。
 理解できた?」
「できるか。んな話、聞いてねーし」
「今、聞いてるじゃない」
「月代から聞いてない」
「俺が止めたから」
「はあ?」
「つっきーが水品にも報告するって言ってたけど
 俺から言うって止めたの」
「なんでだよ」
「泣くからだよ」
「誰がだよ」
「もしくは暴走するからだよ」
「だから誰が、」

古泉は黙って俺を見た。
俺かよ。

「男同士で恋愛もくそもねーだろ。
 月代はバカだと思ってたが上杉もかよ」
「その上杉の方がずっとつっきーのこと好きだったの、
 水品がいちばん知ってたことじゃない?」
「うっせぇ」
知ってたけど
知ってたけど
まさか月代がOKするなんて思わねーじゃん。

「いままでそんなそぶり全然なかったくせに
 なんでいきなりそういうことになってんだよ。
 意味わかんねぇ」
「つっきーの中で動いたのかもね」
「何がだよ」
「上杉への感情」
「なんで今更・・・・・・」
「保留期間を生かせなかった水品に言われたくないよ」
「なんだよそれ」
「もういいよ。解らなくて。
 その方がキミのためだろうし」

ひらひらと手を振って中庭から校舎に向かって行く古泉を見ながら
信じられない気持で青い空を仰ぐ。
上杉と月代が付き合うだってさ。

「信じられっかよ」
信じたくねえよ。


『like or love』


上杉と月代が付き合うことになったらしいが特に変化はない。

2年に進級して月代は俺と同じ教室でバカなこと言って笑ってるし、
上杉は月代と違うクラスになったから月代と一緒にいる機会少ない。

二人が一緒にいるとこを見る機会がそもそも少ない。

ただ時折、
廊下で並んで話している二人を見る。
合同体育の授業で笑い合ってる二人を見る。

「月代とあの上杉って仲ええの?」
その光景を見ていたら2年になってから時折つるむ細山田が聞いてきた。
2年になって同じクラスになって月代となんか仲いいから俺も仲良くなった奴。
「あの、って何だよ?」
「優等生って言葉がぴったしな上杉と、って意味。
 なんか月代とおるようなイメージないし。
 や、月代が不真面目ゆう意味やないで」
うん。細山田の言いたいことは解る。
「同じクラスだったんだよ、去年」
付き合ってるんだってよ、今。とは言えねぇじゃん。
「あ、そうなん。けど、それだけやろ?」
「俺も月代とはそれだけなんだけど?」
「それ言うたら俺も今同じクラスってだけやけど、
 なんかなー、上杉って近寄りがたい感じあるからかな」
「話せば気さくでいいやつだよ、上杉は」
月代に恋心さえ抱かなければ、さ。
「あ、そーなん。
 んじゃ、今度、月代とおるときうかがって話しかけてみよ」
「おう」

あー、マジで付き合ってんだなーって思うときが、ある。
付き合い始める直前くらいに怪我した上杉をすげぇ心配してる月代の顔とか、
放課後の廊下で月代を待ってたりするときの上杉のすげぇ嬉しそうな顔とか、
「上杉」って呼ぶときの月代の優しい声とか、
「月代」って微笑むときの上杉の甘い声とか、
付き合ってるって知んなきゃきっと気が付かない些細なことでも気付かされる。

その度に少し、おもしろくねぇって思ってる俺がいることにも気付かされた。

「月代、」
「ん?」
俺に接する態度まで最近やけに優しいのにもむかつく。
「付き合うってなに?」
「え?」
「だから、付き合うって具体的にどういうことなんだ?」
「大切にする、ってことかな」
「上杉を?」
「うん」
俺より?古泉より?楠木より?と問い掛けて辞める。
だってさ、大切にする、って定義からして曖昧すぎる。

「具体的にどうなんだよ?
 キスとかそういうことをするかしないかってことか?」
代わりに聞いたダイレクトアタック。俺はほんとバカだよな。
月代の沈黙が痛い。けどここ聞かないとなんかすっきりしないんだ。

「同じようなこと、俺、上杉にも聞いたことあってさ、」
え?こんな質問にちゃんと考えて答えてくれんのか?
「愚問だったんだろうな、って今、聞かれて思った」
「え?」
「したければするかもだし、
 しなきゃしないでもいいんだ」
したければするのかよ。と、なぜか沈む俺がいる。
「好きでいていいんだって安心があって
 そういうのにドキドキできる関係があるだけでいいんだ。」
上杉にドキドキすんのかよ。って、ますます沈む俺がいた。

「・・・た・・じゃん」
「え?」
「月代に俺、キスしたじゃん」
覚えてねーけど。
「あ、うん」
「あ、ん時はドキドキとかしなかったのかよ」
「水品の行動にいちいちドキドキしてたら身がもたねーよ。この酔っ払い」
ちぇ。
「悪かったな」
「べつにいーよ。
 おまえが後悔しなけりゃ、さ」
いーのかよ。

「上杉は男が好きなのか?月代もそうなのか?」
俺はさ、月代は違うって思ってた。
だから上杉の一方通行片想いで終わるんだろうって思ってた。
上杉も女にもてるしそんなイメージなかったからそのうち目が覚めんだろって思ってた。

「上杉はどーなのかな。こういうの初めてだって言ってた。
 俺は、俺も、どーなのかな。男でも女でもあんま、抵抗ない」
俺でも、か?と聞きそうになったけど、自分の発言の無礼さに気付いて
「ごめん。不躾な質問ばっかした」
今更だけど謝る。
だいたいこいつ、月代、
んなこと聞くなって怒ればいいのに、
ちゃんと聞いてくれて答えてくれるのがわるい。
「水品だったらいいよ。
 理解してくれようとしてるんだって思うし
 マイノリティだって距離置かれるよりその方がいい」
「そうかよ」
少しだけ解ったから。
上杉が月代に告白した理由。

月代を独占したかったら恋人になるのがイチバンだってそう、思ったんだろ?




月代にばかばか言われる俺だけど
(そのぶんばかばか言い返してるけどな、あいつもばかだし)
だからって俺がいつも何にも考えてないわけじゃない。

上杉の告白にはホント驚いた。
上杉は上杉の考えがあっての恋なんだろうとは思う。
上杉が今はまだその時じゃないと決めたんなら俺は言わない。
月代にも誰にも。俺はそこまで無神経な人間であるつもりはない。

でもこの事実を隠せるほど俺は賢くなかったようで、翌日いきなりバレた。



『事後処理』



「なんかこそこそしてるんだよね、君」
昔から人一倍鼻の利く古泉に感づかれた。チッ!タレ目のくせに!
「なんのことだよ?」
「自分で気付かない?挙動不審すぎるよ?」
「どこがだよ!普通だっての!」
「なんなのよ。ホントに無自覚なわけ?」
「だからなんだってんだよ・・・・・・」
「仕方ないから教えてあげましょう」
「なにをだよ・・・・・・」
「つっきー見る回数が多い。
 目が合ったらいつもは噛み付くくせに今日はよそよそしく目を逸らしてます」
「う・・・・・・」
「次に、つっきーの隣の席も気にしてる。
 ・・・・・・上杉?」
「ぐっ・・・・・・」
「ああ!」
「なんだよ」
「口を割らなくてもなんとな~く解った。ていうか確定?」
「なんでだよ」
「でもどうして水品が知ってるわけ?」

あああああああああ・・・・・・!古泉ぃー!
コイツエスパーか?それとも俺が悪いのか?

「間違われたんだよ!」
これで納得できんならマジで解ったなコイツ。
「なるほど、とんだ人違いしちゃったものだね上杉も。
 よりによって水品になんて。で、再チャレンジするって?」
マジで解っていやがるらしい。

「しねぇって」
「ふうん。それから?」
「は?」
「水品は?」
「は?」
なんか昨日も同じ質問された気がする。上杉から。

「あ~まだ気付いてないのね、まあいいわ」
「まあいいわ、じゃねーよ。なにがだよ古泉」
「それは自分で気付くまで気付かないというか認めないと思うよ。水品はね」
「意味解んねー。兎に角、俺は言うつもりじゃなかったんなからな。古泉も言うなよ」
言わねーだろうな、古泉は。と思う。
俺より全然ポーカーフェイスでひらひら笑って
素知らぬ素振りで変化なんか微塵も見せないんだろう。

「俺は言わないけど、水品の態度でバレないようにね。
 とくにつっきー本人に。
 そうねぇ。動揺しそうになったらこのつっきー思い出したら?」
「は?」
古泉が携帯をいじって手渡した。
画面には月代の白目を剥いたアホ顔がこれでもかと映っていた。マジでアホだ月代。
こんなのに告白を試みる上杉はこの月代を見たら眼が覚めるぞ。マチガイナク。
「ぶっははははははは。なんなのこいつ。なんなのこの顔。俺にもくれ古泉」
「いいよ。はい、送信っと」
これ上杉に送ってやろうかな?と、
改めてみたら別に教室で見せないような珍しい顔でもなかった。

なんでこんなのに想いを寄せちゃったんだろうな。
優等生ってのはどっか思考の路線がおかしいのかな。
アイツ結構イイヤツっぽかったし、頭もイイのに、もったいねー。
とか色々どうでもいいこと考えてたら日誌を抱えた月代が弁当片手にやってきた。

「昨日の日誌書き直しだって。
 なんでだよなぁ笹山ちゃん横暴」
「なんて書いたの?」
「書くことないから笹山ちゃんの似顔絵を」
「ばーか。当たり前だろ!ばか月代!」
「おっ?元気になったか?今日いちばんの挙動不審小僧め」
月代にも見抜かれてたのか。不味い。
「うっせ。変な顔」
「変な顔ってなんだよ」
「これだよ」
「うーわー、なんでおまえ俺の顔、携帯の画面で見てんの?
 おまえ俺のことどんだけ好きなわけ?ファンなのか?そうだったのか?」
「どの画面見て、んなことが言えんだよ。このアホ面見ろよ」
「愉快でいいだろアホ面」
自分でもアホ面言いやがった。
もう月代の顔がアホにしか見えなくなった。

マジ古泉には感謝だ。
古泉いなきゃいつかバレてた。
どう考えても本人にバレるのは最悪だ。
それに、やっぱ、古泉にバレて良かったと思う。
俺一人で抱え込むのにはどうにも荷が重い秘密だ。
何か思うことがあったときに相談するならj古泉は適任だ。

そういう訳で本当は不本意だったんだけどごめんな上杉。と、心ん中で手を合わせる。








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BrownBetty 
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