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入学してから初めてのバレンタインデー。
そういうものにあまり興味がないと言いながら
家庭科部員の俺と佐伯さんと佐々木さんとで
昨日作った手作りチョコ。まあイベントだしね。
俺も佐伯さんも佐々木さんもあげるのは同性。
いわゆる友チョコってんだから華のない話だけど。

んで、まぁ
俺は水品とか月代にあげようとおもって登校した。
水品のおバカさんはサッカー部の朝練でまだいない。
いつも早い月代もなぜだか今日はまだ来ていない。
どこかでだれかにチョコ手渡されてるのかな?
月代ならそれもありそうなのに想像つかない。

なんでかな?
共学なのに女子部と男子部で隔離してるから
女子と話してる月代って言うのが想像できないのかな?
それとも上杉やら水品やら同性に恋愛感情もたれる月代だからかな?

どっちも違う気がする。

まあいいや。
と時計を見たところで水品登場。

「朝練にさ、女子が見に来てんの。今日」
だって。

「女子?ああバレンタインだから?」

「そう。
 若山先輩とかに渡そうとしてやがんの!
 若山先輩、本命いるからって義理チョコだけ受け取ってた!」

「ふうん。水品は?」

「義理チョコなんかいらねぇよ!」

「義理チョコすらもらえなかったんだ?」

「いらねぇんだよ!」

「んじゃ友チョコあげるよ。
 つっきーにもあげたいんだけど
 珍しくまだ来てないのよね~」

「まじか?
 便所でも行ってんのかと思った!」

そのうちにチャイムが鳴ってHRが始まった。
あれれ遅刻?それともお休み?月代来ないの珍しい。
昨日の様子はどうだったっけ?具合悪そうにしてたっけ?
そう考えればなんかちょっと表情が優れなかったようにも思えてくる。

1時間目も2時間目も来ない。
水品も気になるようでそわそわしてたから
一緒に担任の笹山先生のところへ向かった。

「月代?
 そういや来てないな。
 連絡も今のところないようだ」

びっくり。
だって月代は無断欠席するようなタイプじゃないもの。
せめて俺や水品にはなんらかのこと言ってくれるでしょ?

笹山先生が月代の自宅に電話をかけたけどつながらない。
俺や水品が携帯に電話をかけたけど電源が入っていない。

「どういうこと?」
「何やってんだあいつ?」

水品と顔を合わす。

「告白されて浮かれておさぼりデートしてる
 ・・・ってのはつっきーには考えられないなぁ」
「ふん!あいつがそんなんで浮かれるかよ!」
あんたならありそうだけどねぇ水品。
まあ、その前に告白されないから大丈夫。
それよりも、 
「バレンタインデーだからって
 女の子に拉致されたりしてなければ、
 嫌な予感しかしないんだけど」
「嫌な予感?」
「病気か事故・・・」
水品がみるみる青ざめた。
「ちょっと遅れてるだけならいいんだけどね。」

自宅に電話して出ないってことは
外出してるってことなのかなぁと
月代の席を見たら隣の席の上杉と目が合った。
上杉も心配してるんだろうなぁ。月代の事好きだもんなぁ。

遅れてしまりのない顔で照れ笑いしながら登校してくる月代を待った。
けれど3限目を終えても4限目、はたまた放課後になっても現れなかった。

月代の家を訪ねようと笹山先生に
月代の住所を尋ねに職員室に向かう。
水品も行きたがったけどなんとか言いくるめて部活に向かわせた。
月代は水品が部活頑張っているのが好きだから自分のためにサボらせたら
後で絶対悲しむと思うし責任を感じると思う。そういう月代だから今日の行動は不可解だ。

笹山先生に先客がいた。

「俺も行こうか?」
と笹山先生が返しているところを見ると
どうやら月代の自宅に上杉が向かおうとしてるらしい。
「大丈夫です。
 なにかあったら連絡します。
 自宅にいないかもしれないので
 学校に連絡があったときのために先生は学校にいてください」
至極最もな返答だ。
さすが優等生の上杉だ。

実を言うと俺も今日の部活
老人ホームに慰問料理教室なんだよね。
佐伯さんと佐々木さんに任せるつもりだったけど。

「上杉?つっきーの自宅行くの?」
職員室を出たところで声を掛ける。
上杉、月代とは割と話すみたいだけど
俺とこうして話すことないからなんか新鮮。
「ああ。
 古泉も、か?」
「そのつもりだったんだけど、」
「自宅にはいないようだから
 無駄足かもしれない。
 所在がつかめたら連絡するので
 ここは俺に任せてくれないか?」
案外はっきりと断られた。
仲のいい俺よりも適任だと思ってるの?
生徒委員だから?学級委員だから?
なんて意地悪は言わないよ。
「これ俺の携帯番号。
 心配してるからよろしく」
携帯番号を紙に書いて渡す。
「解った。任せてくれ。
 それから、すまない。ありがとう」
すまない。ありがとう。だって。
窓の外を見たら白いものがチラチラ舞ってる。
「雪、降ってきたみたい。
 自宅にいなかったら無理しないようにね」
「ああ」

急ぎ足で廊下を歩いて行く上杉の後ろ姿は
無理してでも月代に逢いたいと言っていた。

部活を終えてもまだ上杉や月代から連絡なかったら
俺もやっぱり行ってみようと笹山先生から月代の住所をもらった。
そうなる前に上杉が月代と接触できるにこしたことはないけれど。

もし、もしそうなったらどうしよう。
夜になっても上杉からも月代からも連絡がない。
月代が世界でたったひとりどこかに消えてしまったら?
海外在住らしい月代の家族を知らないからなにも手掛かりがない。
月代には周りに所在を告げられる保護者や身内がいないことに、
今、こんな時、改めて知らしめられて足元が崩れるように愕然とした。


月代はなんて孤独な世界で生きているんだろう?


いつもの気の抜けたような
それでいでほっこりするような
月代の笑った顔が脳裏に浮かぶ。

そんなこと微塵も感じさせない月代だから考えなかった。

無事でいて。
笑っていて。
祈りをこめて携帯を握りしめた。

こわいことがおこりませんように。

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「なにそれ?笹?」
月代と廊下を歩いていたら
水品が笹を肩に担いでいた。
「笹。願い事飾るんだってよ。」
「部活で?」
「サッカー部が笹取って来たけど誰が飾ってもいいんだぜ。
 男子棟にひとつ女子棟にひとつ中央棟にひとつずつ
 置くんだ。今週一週間。」
「ふうん。」
「七夕ね~」
俺が言うと。
「そうだ。」
と水品が鼻息を荒くした。
「それはどこに持って行くの?」
と聞いたら
「男子棟のが足りねぇらしくて
 男子棟に追加分。」
なんだそうだ。
月代が「足りないって?」と問うと
「願いを飾るにはひとつじゃ足りねぇんだと。」と水品。
「願い事が多いの?」と俺が聞くと
「願い事?」と月代が聞くから
「短冊に願い事書いて吊るすのよ。
 七夕だから。」
そう説明したら
「願い事かぁ。」と少しだけ笑った。
「水品も願い事書いた?」
月代が水品に問う。
「おうよ!全国制覇だ!」
夢は大きいことで。
でも君まだレギュラーでもないじゃない。
とは思うけど別に口には出したりしない。
「俺もたんざく書いてもいいの?」
願い事なんかなさそうな月代が問う。
月代の願い事なんて想像もつかない。
なんでも叶いそうってわけじゃなくて
特に願いなんかなさそうなんだもん。
そう思ってたら、
「おう!この紙に書け!」
水品が紐付きの白い短冊を渡した。
「書いた。で、笹に吊るせばいーの?」
「そうだ。」
月代がなんて書いたか気になる。
俺も、たぶん水品も。
見ていいかな?
聞いていいかな?
もやもやしてたら水品が聞いた。
「なんて書いたんだ?」って。
「水品と同じこと。」
月代はあっさり答えて
「俺も水品の全国制覇見たい!」
ってうへへって笑った。
ああなんか月代らしいや。
「自分の願い事ねぇのかよ?」
「俺の願い事だけど?」
「自分のことじゃねぇじゃんか!」
水品は怒り口調で照れたように怒鳴ってる。
「俺自身のことねぇ・・・
 叶わなそうなことしか浮かばないし
 叶っても本当に望んだことかも解んねぇし。」
「意味解んね!」
「だよなぁ。
 そういうことだから俺の夢背負って叶えろ水品。」
なんかねぇ
なんだかねぇ
「俺も書くわ。
 水品一枚ちょうだい。」
「お、おう。」
はい、できた。
笹に吊るす。

豊作でありますように

家庭科クラブ調理用食材を学校の敷地内で育ててる俺。
そりゃ願うでしょ。天の川に。だって天気に左右される野菜ですよ?

俺の願い事を読んだ水科は
「そこ!俺の願いに便乗するとこじゃねぇのかよ!」
とわめいた。
月代は、ははっと小さく笑った。

俺たちはこれでいいんだよ。
ただね、やっぱりね、月代は
なにか願いを持ちたいと思えたらいいなぁって思ったから
あとでこっそりそんな短冊も吊るしに行こうかなって思ってる。

強欲な月代。
想像できないけどたまにはいいんじゃない?

「ああ、こうなったか。」
部活で「送ってもらった。」と佐伯さんが携帯を見せてくれた。
とりあえず本人に見せるかなぁと携帯に送ってもらった画像を見る。

「なあ、古泉これなに?」
「いちおう本人には見せておこうと思って。」
月代の携帯に送った写メ。
月代は携帯を開いてそれを眺めている。
「これだったんだな。」
「え?なに?心当たりあるの?」
「あるもなにも昨日の放課後
 上杉と図書委員してたときのだもん。
 なんか図書室の空気が変だと思ったんだ。」
「佐伯さんって料理部の子のクラスメイトが
 球技大会で活躍してたつっきーを男子棟の図書館で
 見かけたことがあったのを覚えてて見に行ったんだって。」
「俺、そこまで活躍した?
 野球でメインピッチャーやってたの生田だし。」
「サッカーのもあるんじゃない?」
「あんな代打たいした時間出てないし。」
珍しく月代が不機嫌でちょっと可愛い。
いつもは歳不相応に動じない月代だから面白い。
「まあ、時の人だった月代を探しに行けば
 クールドールの上杉と一緒にいるんだから。
 女子大盛り上がりだったって言ってたよ。」
「クールドール?」
「上杉が人形みたいに冷めた精悍な顔してて
 無駄のない振る舞いと無感情に笑わないことから
 近づき難い冷たい精巧な人形みたいだって
 そんな風に呼んでる上杉ファンがいるみたい。」 
「う~ん。こないだよろけてたよ。
 危なっかしくてちょっとびびったけど。
 っていうか上杉笑うよな?笑わないっけ?」

うん。俺はね、少し女子たちの言うことも解るんだ。
上杉は月代といるときとそうじゃないときって違うんだ。
調理場から見える生徒会室への廊下を生徒会のメンバーと
歩く上杉の横顔は確かに少し冷たくきつい表情に見えるし隙がない。
逆に月代と話す上杉はどこか少し嬉しそうで柔らかく見えるんだよ。
だから、図書室で月代といる上杉の姿を見た女子が騒ぐのも無理はない。

「女子は別棟だから遠くでしか見れない分
 そういう上杉を目にする機会がないんだろうね。
 たまに目にしても壇上で演説してる真剣なトコばっかりでしょ。」
「なるほど。
 ちゃんと話せばおもしろいヤツって解んのにな。」
「おもしろい?上杉が?」
「うん。なんかおもしろい。
 ちょっと癒される。」
そう言ってうへへと笑った。
ちょっと機嫌が治ったようだ。
「さすがに俺はそういうイメージ無いけど、でもうん。
 無感情とかは思わないね。」
むしろ熱い人なんじゃないかと思う。
特に月代に対して、いっつも熱い視線で見てるもの。
「だよな。」
話に飽きたように伸びをして言った。
「写メどうする?」
「ん?」
「貴重な写メらしくて偵察に行った女の子達だけで
 こっそり楽しむつもりらしいからそんなに広まらないと思うけど。」
「あーうん。自分の知らないトコで知らないヒトがそう言うの
 眺めてると思うとちょっとむず痒いけど撮られたもんはしょーがないっつーか。
 どうしようもないしな。あんな球技大会で生まれた興味なんてきっとすぐ逸れるし。
 多分明日には別のやつにキャーキャー言ってるだろうから過ぎるまで放っておけばいいよ。」
「ふふ。
 調理部の彼女達と同じこと言ってる。
 一過性の熱病って言ってたよ。」
「さすが女子だ。
 写真はなー俺だけだったらしばらくして削除だろうけど上杉も写ってるからなぁ。
 熱病冷めた後に上杉と写ってるこいつ邪魔なんだけどってなったら悲しいよな。」
とか言いながら楽しげに笑っている。
月代も黙ってればクールドールっぽいと俺は思う。
綺麗な顔してるしときどき酷く冷めても見えるから。
「俺は保存しておくよ。」
なかなか貴重な2ショットだし
「これ月代に見せるために取引してもらった写メだし。」
「へ?取引?」
「月代の情報あげちゃった。」
「ふうん。どんな?」
「上杉といたかもだけど
 普段はすんごいバカとつるんでますって。」
「あはははははっ!すげぇ情報だ!」
「それから料理上手のオトモダチもいますって。」
「うん。古泉の料理美味いもんな。
 いままでいろんなもん食べてきたけど古泉のがいちばん美味い。」
「褒め殺し。」
「事実だし。」
「麻婆豆腐作ったんだけど食べる?」
「やった!食べる!」
「んじゃお昼調理室で食べよう。」
「楽しみだ~!!!」

「な、に、が、楽しみだぁ!!!」
月代が大きな声で両腕を上げて叫んだのが聞こえたのか
俺らを探していたらしい水品が猛スピードで駆けて来て月代に突き当たった。
月代は避けれるだろうに避けた時のバカのダメージを考えて避けるのを止めた。
水品は月代にぶち当たり、一緒にごろごろと転がる。月代からしたらとんだダメージだ。
「ぎゃー」
おまえが叫ぶな水品。
「痛っ・・・なにも突進してこなくても・・・」
ごもっともだよ月代。
「何やってんの。
 水品もいい加減もう少し脱バカしなさいよ。」
二人にしゃがんで痛そうにしている箇所をさする。

「おまえらが俺を置いてこんなとこで楽しみな話とかしてるからだ・・・」
はいはい。仲間はずれが寂しかったのね。
って言うか水品は月代がいないと寂しがるんだよね。
「ごめんごめん。
 古泉がこれ撮られたの教えてくれたんだ。」
あっさりと写メを水品に見せる。
水品に変に隠さないのがなんかいいなと思う。
俺からは見せる気がなかったから月代本人がそうするならいいんだ。
「ナニコレ?月代と上杉じゃん。
 ドココレ?図書室か?つーか目線ちがうし。隠し撮りか!」
「全部正解。」
「誰に?ああ女子か。
 ぶっちゃけ遠いし。ピントも微妙じゃね?
 わざわざここまで来て撮んなら撮らせてくれって言えよな。」
「水品、大正解だ!」
「水品にしてはすごく正しいことを言ったわね。」
「なんだよ、バカにしてんのか?」
「いや、俺はむしろ尊敬した。
 そーなんだよなんか気持ち悪いなーって思ってたんだけど、
 そういうことだよ。
 意識してない自分の写真なんて薄目で写ってる写真より気持ち悪い。」
「頼まれれば写真くらいねぇ・・・。」
むしろ上杉なら転送してくれるならっ撮って欲しそう。
「写メなんて正面向いてガン見じゃねーと楽しくねーじゃん。
 よし!俺らは肩組んで撮るぞ!こっち寄れ!」
水品が自分の携帯を掲げて俺と月代を寄せる。
水品の合図と共にちいさなカメラのレンズを見る。
「っら!見ろ!俺カメラうめー!」
確かにキレイ収まって笑う
月代と水品と俺がこっちを向いて楽しそうに写っている。
「ほんとだ、これ俺にも頂戴。」
「俺も。」

撮るならやっぱりこういう写真がいいね。
けど、どんな写真でもたぶん、嬉しいんじゃないかな、一緒なら。
「つっきー。 
 隠し撮りの写真のこと上杉にも知らせてあげたら。当事者だし。」
「うん。そうする。」

上杉はきっと保存する。


「ねえ古泉君、昨日の球技大会で古泉君のクラスの
 サッカー途中交代して出た人なんていう人だっけ?」

家庭科部の部活として調理室で餃子の皮を作りながら
女子部の佐伯さんが聞いてきた。
「月代のことだと思うけど、何?」
俺は豆腐を茹でながら返す。
「あの人って一度ここで見かけた人だよね?」
ニラとニンニクと白菜を細かく刻みながら
もうひとりの家庭科調理部員である佐々木さんも会話に加わる。

そういえば以前ここで月代にパスタの試食をしてもらったときに
忘れ物を取りに来た佐々木さんと逢ったことがあった。
その日は部活のない日で俺が自主的に使ってたから
全くの偶然ではあるけれど実は月代はここに割りと
頻繁に現れては試食したりだべったりしていたりする。
不思議なことに佐伯さんや佐々木さん他の女子が
いるときはセンサーでもついているかのように現れない。

「ああ、そうね。うん。それそれ。」
「なに?佐々木さん、逢ったの?」
「うん。なんか不思議な人だった。」
「不思議?月代が?」
「う~んなんていうかふわっとしてたっていうか。
 かっこよかった気がするんだけどなんか印象が曖昧なのよね。」
水品が一目惚れした月代の第一印象が、曖昧・・・ねぇ。
「見てた友達はすっごいかっこよかったって言ってたよ。
 活躍も見た目も。
 次の試合も観に行ったのにいなかったってがっかりしてた。
 そんなに活躍してたらしいのにどうして出てなかったの?」
「代役で出てたらしいよ。
 手当てしてた人が戻ったからひっこんだみたい。」
「ああ、そうなの。」
「へえ、改めて見て見たい気はするね。」
この部の女子2人は男子にキャーキャー言うタイプじゃない。
だから関心をもたれる月代の話題はちょっと不思議な気がした。
とはいえ基本他人情報から入るので本人達はいい意味で冷めている。 
だから「友達なんでしょ今度連れてきて」なんてくだらないことは言わない。

「うちのクラスはバスケで優勝したよ。
 私の出たテニスは1試合目で負けちゃったけど。」
「私は決勝まで行ったよ。ソフトボール。 
 優勝はなかったけどね。古泉君は?」
「野球が優勝したよ。俺はバスケで負けたけど。
 身長だけでバスケに決めるのいいかげん辞めて欲しいよ。」
「あはは。あるよねそういうの。」
「体格いいとキャッチャーに決められたりね。」
ほらもう話題は別のことに移っている。と思えば、

「野球で優勝したチーム、古泉君のクラスだったんだ。
 かっこいい子がいたって騒いでる子達いたよ。」
「あ、うちのクラスでもいた!ピッチャーやってたって。
 あとすごいの打ったって言ってた。」
「ピッチャー・・・ねえ。3人が交代でやってたからなぁ。」
「サッカー部の子って聞いたよ。
 あれ?サッカーも出てたって言ったんだっけ?」
「私は図書委員してるの見たことがあるって聞いたよ。
 確かめるために今日こっそり男子棟の図書室行くって。」
「・・・それ月代だわ。」
また月代に話題が戻ってる。
つーかわざわざ見に行くもんかね。
運が良いのか悪いのか今日は月代の図書委員担当の日だ。

「まあそういうのイベント後の熱病みたいなものだから。」
「うんうん。一過性の流行みたいなものだから今だけだよ。」
「だといいけどねぇ。」
俺はひき肉を唐辛子とごま油で炒めながら返す。
水品と上杉の熱病はひとまず終わりが見えないからね。

サッカー部で野球でピッチャーやってた人、だったなら水品なのにね。
水品がたとえば可愛い女の子に告白とかされちゃったら
水品どうするんだろうな。熱病冷めちゃうかな。

冷めないだろうな。

e090625_2.png「都市伝説ってあるじゃない?」
水品が部活に向かった放課後。
校内の裏地(日当たり良好)の俺が営む野菜菜園へ
月代を連れ出しここ数日気になっていたウワサを切り出す。









『伝説の風紀委員』

「都市伝説?
 口裂け女とかろくろ首とか?」
「かたっぽ妖怪だし都市じゃなさそうだけど
 そういう類のもの。」
「うん。」
「うちの学校にもあるみたいよ。」
「それって都市伝説じゃなくて学校の七不思議じゃないの?」

「七つもないけどね。
 う~ん、それに俺はやっぱり都市伝説って言ったほうが
 しっくりくる気がするよ。なんとなく真相もあてがあるし。」
「すごいな。さすが古泉。
 で、どんな伝説なの?」
「伝説の風紀委員。」
「なんかすごそうだな。」
「たぶんつっきーのことだよ。」
「え?俺?」
「そういうことしてるでしょ?」
「ああ、こないだの話?」
「そう。学園運営者にお世話になってる方がいて
 ときどき学校の見回りとか任されてるってあれ。」
「うん。使わない校舎とか教室とか結構あるから
 問題が起こんねーようにときどき見回ってるくらいだよ。
 全然伝説なんかじゃないって。普通に生徒会とかの方がすごいよ。」
「でもねえ、こないだ1年生助けたでしょう?」
「ん?一年生?」
「詳しいことは解らないんだけど
 俺らの学年のネクタイ大事そうに抱えて人探ししてるらしい
 一年生がいるらしいよのね。それもつっきーがネクタイ失くした翌日から。」
「ああ。」
「心当たり、あるんだ?」
「うん、まあ。つーかなんで捜してんだろう?
 ネクタイ返そうとしてくれてんのかな?」
「一目惚れした、とか?」
「それはナイな。
 そもそも俺の顔見てないし。
 つーか覚えておきたいことでもないだろうし。泣いてたし。」
顔を見てないなら手掛かりはネクタイだけってことだ。
誰だかわからなければ、学年しかわからないなら、捜索も行き詰まる。
「で、何から助けたの?どんな状況だったの?」
「うーん。あんま言うことじゃねーんだよな。 」
「ふうん。うん。想像ついたよ。
 共学って言ってもまだまだ男子校の余韻ありありだからねえ。」
「あれだね、たいしたことしてなくても、
 隠密にやってたら伝説とか言われちゃうんだな。」
「そうねえ。そうかもね。
 そういえばつっきーはその1年生の顔、覚えてるの?」
「覚えてちゃ悪いかなと思ったから忘れたつもりだけど
 もう一度逢えば解るか・・・いや、解んねえかも。」
「曖昧?」
「それでいいかなあと。」
「そうねえ。
 ねえ、その子がもしつっきーのこと探し当てたらどうする?」
「・・・探してる理由が解んねえし
 隠密行動できなくなっちゃうし
 シラを切る。かな?」
「それでいいかもね。」

月代はときどきとても淡白だと思う。
誰にでも優しいようでいてそうじゃない。
突き放さなきゃなときはきちんと突き放す。
そのはっきりとした優しくない態度も優しさなんだけど。そんなとき、
そんな月代にやたらめったら優しくされる上杉とか水品の存在が奇跡に思える。

「いろんなこと気を回してくれて
 いつもありがと。ほんと古泉には感謝してる。」
「こちらこそ。」
ああそっか、俺の存在も奇跡だわ。
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BrownBetty 
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