ものごころついたころからただ漠然と
「かえりたい」と思っていた
「帰りたい」どこへ?
「返りたい」なにに?
「還りたい」いつへ?
答えはいつも出ない
ただ漠然と感じるのは
「ここには自分の居場所はない」
というふわふわした頼りない居心地
感情がとぼしかった
悲しいのか寂しいのか
どうしたいのかわからないまま
気がつけば放置された家の窓辺で
餓死寸前で毛布くるまっているところを保護された
このときに初めて
ああ、死ぬところだったのだと気付いた
案外「死」はいつも身近にあった
俺を生んでくれた母親は
ノイローゼで自殺したという
二番目の母親は俺を放置して
どこかへ行ってしまったらしい
三番目の母親はとてもいい人で
俺に大切な妹をくれた
けれど戻って来た二番目の母親が
俺たちに傷害事件を起こしかけて
俺の居場所はまた曖昧なものになった
「自分は邪魔な人間なんだな」
と思うほど謙虚でも卑屈でもなかったのが
俺がここまでずうずうしく生きて来られた理由かもしれない
言われたとおりに
言われるがままに
ただなにも感じずに漠然と生きていた
そんなときに目が覚めるような光に出逢った
神様、やっと出逢えた光なんだ
神様、やっと許された居場所なんだ
俺なんかいつ消えてなくなっても構わない
だから
だから
やっと見つけた光を
やっともらった感情の素を
どうか、どうか、
俺から奪わないで
それなら俺の肉体ごと魂ごと命を奪って
どうか、神様、どうか
「そんなん祈ってないで
俺に好きだと唱えてろバカ」
この世は嘘ばかりだ
この世は嘘ばかりだ
俺のたったひとつの光は美しくも儚く消えた
俺の生きる理由も生きてこれた足もとも崩れた
なんてもろい
なんてもろい
俺は光は失った
けれど光は俺に居場所を
優しい思い出の残り香が残る居場所を残した
なあ、逢いたいよ
夢でも逢いたいよ
なんとか生きてるよ
なんとか立ち上がってるよ
もう、後を追いたいとか
投げやりなこともしないから
だからさ、今日くらい、4月1日くらい、
せめて夢の中で笑って出てきてくれよ
ずっと言えなかった言葉を言うから
「バカだなぁ」って頭叩いて笑ってくれよ
嘘だと思うから、夢だと思うから、だから言うから
なあ、逢いたいよ
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