起
とうとう告げてしまった
承
この想いの名前を自覚したのはいつだっただろう
好きな人がいる。
佐原に感づかれていたようなので
思い切ってそう答えてみたら、
佐原は「月代だろう」と言った。
「確かに魅力的な人間だが
同性を好きになるというのは
それだけ以上のものがあるのだろうな」
と窓から彼らがサッカーをしている姿を見て
「それともひとめぼれというやつか?と聞いた。
ひとめぼれ。
そうかもしれない。
ひとめ見たときから気になったのは確かだ。
だけど。
ひとめぼれだとひとことで言うのは簡単だけど、
ふためも、みつめも、見るたびに、知るたびに、
触れるたびに、
魅かれてやまないこの感情は一言では言えない。
なんどか否定しつつ
なんどか打ち消しながら
そのでも募り、膨らんで、出した答えは
この感情を恋と呼ばずしてなんと呼ぼうと
ああもう認めるしかないんだなと言う結論。
「特別な何かをされたから特別な存在になったんじゃないんだ
むしろ誰にでもあった接触でしかない日常の中で
彼だけが特別に映ったそれはやはり、ひとめぼれなのだろう。
きっと、彼は俺の自分が知り得なかった好きにならずにいられない存在だったんだろう」
転
告白に対する彼の返事はおもいもかけないものだった。
「おためしでつきあってみる?」
結
うん。と言葉に出さずにうなづいて返したら
「それじゃ、これからよろしくね」
と彼は返した。
この日この瞬間に彼との何かが始まった。
何がどう始まったのかわからないけれど、
翌日から確かに何かが始まったのを、
彼の思わせぶりな優しさを確かに感じた。
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