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上杉日記

エントランスから2階の休憩席に並んで座った。
辺りに人影はなくて大きな高い窓から舞い散る桜が見える。
「どうして俺を待って?」
「あーうん。ごめんな突然。」
「それは構わない。驚いたけれど嬉しかったから。」
「んー。なんで上杉は想いを打ち明けてくれたのかなって。
 んで俺はやっぱりちゃんと返事するべきなんじゃないかなって。
 そう思って。」
途端に不安が募る。
嫌な予感がじわじわ湧いてくる。
「返事はいらない。とか、今までどおりで。って言葉に甘えちゃったけど
 俺は、」
「待って。」
「上杉?」
「済まない。少し待ってくれないか。」
「・・・。」
目を閉じて浅く息を吸い込む。
覚悟を決めなければいけないのだろうか。
きちんと振られて距離が出来てしまう覚悟が。
「どうしてわざわざそんなことを言うのか考えると、怖いんだ。」
「・・・俺は上杉の気持ちを知った。それを知らないふりはできないよ。」
絶望的だ。でもこういう月代だから好きになったのだとも思う。
勝手に告白しておいて忘れたふりしていままでどおりなんて都合が良すぎる。
俺は自分の気持ちを月代に押しつけただけでその責任を取る覚悟がなかった。
「解った。」
本当は解ってなどいない。
明日からどうなるのだろう。
月代はどう接してくるのだろう。
今からどんな返事をくれるのだろう。

本当は怖くてたまらない。
耳をふさいで逃げ出したい。

「んなカオ、しないでよ。」
月代が俺の顔を覗き込んで言った。
「俺、上杉の気持ち嬉しかったよ。
 でも俺、自分が恋愛とかまだ考えらんないんだ。
 相手が誰であっても恋愛って他人ごとにしか思えなくて、」
少し予想とは違う月代の言葉。
「でもいつまでもそんなんじゃダメだなって。
 失ったもんから逃げてたら手に入るわけないよなって。
 だから逢いに来た。」
月代が真っ直ぐに俺を見た。
ごめんな、気持に答えられない。そんな視線ではない。
もちろん俺の気持ちに応えられるとは思わない視線。
「月代?」
「なあ、上杉、」
顔をあげて月代の顔を見る。
春休みを挟んで久々に見る顔。見たかった顔。逢いたかった顔。
今、告白したことを後悔しているとしても時があの瞬間に戻ったなら
やはり俺は同じように同じ言葉を告げて同じ後悔を繰り返すのだろう。

「俺の中でも気持ちは動いたんだと思う。
 上杉のこといつもより気になるし
 寒そうにしてるとなんかしてやりたいって思うし
 いままでどおりなんて意識してる時点で今までどおりじゃねーだろ?」
泣きそうだ。
改めてはっきり振られるのは怖い。
俺は月代と友人にはなれたつもりだけれど
かといって水品や古泉ほど親しい友人でもない。
それなのにその立場さえ失ってしまうのは辛い。
恋人になれることなんて望んでいないからせめて、
「友人でもいられないのか?」
「え?」
「恋人になりたいわけじゃないんだ。」
「え?」
「頼むから突き放すような」
ことは言わないで欲しい。と言い掛けたら、
俺の肩に月代の額がコツンとぶつかった。
「言うかよ。なんで突き放すんだよ、逆だろ。」
「逆?」
「上杉の気持ちを知って受け止めた上で、ちゃんと上杉のこと
 見て、知ろう、って思ったの。俺は。
 上杉が勇気出してくれたことを、
 なかったことにはしたくないの。」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
月代が何を言っているのか解らなかった。
「こと・・わられるのか、と思った。
 はっきり拒絶されるのかと、思った。」
「断る理由がないから、答え延長させてもらおうかと思ったんだけど
 気持ち知った上でいまのままを上杉が望むんなら俺はそれでいいよ。」
月代が額を離して言った。
少し怒っている?
「それだけ言いたかったんだ。」
月代がじっと俺を見る。
「え?」
「上杉はなんか俺に言うことある?」
あ、待っててくれた、のか?
「あ、」
「うん。」
「嘘を、ついた。」
自分にも、月代にも、嘘をついていた。
「本当はもっと近づきたいんだ。誰よりも。
 友人以上の恋人になりたい。」
「うん。騙された方が悪いよな今日は。」
「え?」
「エープリルフールだもんな。」
「だまさ・・」
「俺は嘘付いてないから勘ぐるなよ。」
「ああ。」
「桜綺麗だねー。」
月代は立ちあがって窓際に立った。
月代の背後で桜色の花びらが風に舞いあがった。
「ああ、綺麗だ。」
月代の存在も、散りゆく花びらも、月代の考えも言葉も、
全てが眩しい程に美しい。
それを欲しいと望む俺の想いは浅ましいと思うのに
そんなことはないと月代の存在が否定する。
 
解っている。
彼に俺は似合わない。
解っている。
彼に俺は必要ない。

突き放されれば落ち込むくせに
引き寄せられれば泣きたくなる。
 
今日の月代が明日になって
「俺、昨日、上杉になんか逢ってないけど?」
なんて言ったなら、
エイプリルフールが見せた春の幻だったとしたら、
残酷な嘘だ。と、俺は落胆するのだろうか?それとも、安心するのだろうか?


******
まさかこんな展開になるとは。
次は誰かなあ。

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試験明けだと言うのに、
否、試験明けだから、か。
生徒会の仕事がたまっていて片付けていたら遅くなってしまった。
外はすでに暗闇に包まれていて一雨来そうな雨雲が広がっている。
駅に向かう人ごみの中で見間違えたのかと思う姿が目に止まった。
月代。
時計を見ると9時を回っている。
こんな時間にこんな場所で月代に出会うなんて。
声を掛けようかと迷っているとその横に誰かが見えた。
制服から見るに他校の男子生徒。見覚えは当然、無い。
結局声を掛けそびれたのはその二人の親しげな光景に、
校内外で見た遠くに感じる月代の姿に胸が軋んだから。

『鍋、after』

「はよー、上杉。」
週末を終えて登校したら隣の席の月代が挨拶をくれた。
「おはよう。」
よかった。いつもの月代だ。
駅で見た月代が頭を離れないままに過ごした休日は
少しばかり憂鬱で少しばかり気が塞いでしまった。
駅で見かけた話をしようか、と迷っているとタイミングを失ってしまった。
俺はどうしていつもこうなんだろう。とため息がこぼれる。
「月代うんこ~。」
「朝から随分低レベルな発言だなっバカ水品。」
「うっせぇ、うんこ。」
「なんでうんこなんだよ!」
「便秘なんじゃない?おはよ、つっきー。」
「はよっ、古泉。」
「便秘じゃねーよっ!つーかおまえら親しげだなっ!」
「意味解んないよこの子。」
「いつものことじゃない。」
「解れよ!なんで俺だけ隔離されてたんだ!」
「自分だけベットで寝てたんだからいいじゃないよ。」
「えー?ああ、金曜の夜?」
金曜の夜?と言えばあの日だ。
でもあの日俺が見たのは、月代と居たのは水品でも古泉でもなかった。
聴き耳はよくない、とは思うのだがどうしても耳に入るし気になってしまう。
「だから!楠木は?」
「楠木は帰ったじゃんか、覚えてねぇの?」
「まあ、信じられない!」
「うう、そういえば、それは覚えてるかも、だけど。」
楠木?名前だろうか?
「だーっ、もう、なんで寄り添って寝てんだよっ!」
「話し込んでたらいつの間にか寝てただけだって。」
「やっぱ水品はくだらないことしか言わないなぁ。」
「なんだとっ!月代~!」
水品がオーバーリアクションを取ったせいで俺の机にぶち当たった。
「うわ~水品っ!人に迷惑かけんなよ。
 ごめんな上杉!どっかぶつけなかった?」
水品の行動を月代が謝った。
「いや、大丈夫。」
「ったく、水品は仕方ないな。
 隣で煩くしてごめんね。」
古泉にも謝られた。
「ごめん。」
最後に水品がぺこりと頭を下げた。
やはり俺はこの三人を見ているのが楽しい。
妙に同調していて息が合っていて他の誰かじゃこうはいかないだろう。もちろん俺も。
それでいいと思うけれど水品がくれたきっかけを機に今は話に加わらせてもらおうと思った。
「いや、それよりその、金曜に、」
「え?金曜?」
「駅で見かけたんだ、月代と、他校の、」
「ああ。マジ?声掛けてくれたらよかったのに。」
声をかけて良かったのだと月代が笑った。
俺はいつも考え過ぎて遠回りしているようだ。
「何?楠木、駅に送った時?」
「でもそれ結構遅い時間じゃなかった?」
「生徒会の仕事が長引いてしまって。」
「んな時間までやってんの~。すげ~。」
水品が返すその横で、月代が済まなそうに笑った。
俺が月代の代わりに答辞を読んだ流れで生徒会の仕事も引き受ける流れになった過程がある。
だからなのか責任を感じているように気遣った言葉をくれたり、する。
責任を感じて、なのだけど、それを凄く嬉しいと思うのは確かだ。
「いや。翌日が休みだからつい、やりすぎてしまっただけで。」
「そんでもお疲れさんだよな。」
今度は月代がにっかりと笑った。
「駅に送ったとこだったんだよ、俺の中学んときの友人。
 古泉んちで鍋してさ、そん帰り。俺と水品は泊まったんだけどな。」
実に簡潔に解り易い説明もくれた。
解り易くはあったけれど、遠いな、と改めて思った。
「声掛けてくれれば、上杉も誘えたのにな。」
「鍋は人数多い方が楽しいしね。」
「古泉の鍋すっげ、美味いんだぜ。」
俺でも誘ったと月代が言う。
俺でも人数に入れてくれたと古泉が言う。
俺でも全然構わなかったように水品が言う。
「声、掛ければよかったな。」
少し笑ったら、
「だな!」
と月代が笑った。
月代の友人。
月代と水品と古泉。
俺がいたら邪魔になりそうなのに
こんなに簡単に誘ってくれると言う。
俺は本当に遠慮すべきだと思うのに
月代がいるから、
月代が誰ともいない図書室で俺だけに二人の時間をくれたりするから、
甘い誘惑に甘えたくなってしまう。
チャイムが鳴って古泉や水品が自分の席に戻り始めた
どたどたと慌ただしい教室の中で月代が俺の肩を叩いた。
「上杉は何鍋が好き?」
至極当たり前のような言葉。
「鳥鍋、か、な。」
鍋にはどれだけ種類があるのかよく解らないなりに答えると
「こいずみー!次は鳥鍋なー!」
自分の席に着いた古泉に月代が叫んだ。
こういう月代にいつも何か暖かいものを感じる。
気持が高揚して頬が熱くなる。
「な。」
と、にっかり笑う月代。
俺の顔は嬉しさにきっとほころんでいることだろう。

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