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最悪だ。
とすら思わなかった。
むしろ気が楽なくらい。
こんなとこに自分の居場所は求めない。


『虚像』

「俺、あんたのこと大嫌い。」
と、知らないやつに言われた。

毎年、ではないけれど
長い休みのたびに遥と俺は欧州に帰省して
親類の学校経営者の手伝いをしにスクールへ通った。
遥はほぼ完全に助手だったりたまに教鞭を振るったりしてたけど
俺は付き添いみたいなもんだったから授業を受ける生徒でもあった。
なんでそんなことしてんのかって言うとそれが俺と遥が日本で暮らせる条件だったから。
ほかにもいろいろな条件クリアしながらの日々だったけど遥といれるならなんでもよかった。

そこで、だ。
初めての遥を伴わないサマースクール。
日本じゃないことに、遥と一緒じゃないことに、別にひるんだりしない。
しばらく上杉にも水品にも古泉にもあえないことにはちょっとへこんでたけど。
そこで、言われた。

誰だよこいつ。
と思ったけどいきなりわざわざ
嫌いだなんて言いに来るやつの名前なんか知りたくねーし
だいたいここあんま人来ないからいつも遥とくつろぐときに使ってた離れの窓際ソファーにさ
なんで好き好んで来てまでそれ言いに来ちゃってるのかほんと意味不明で反応に困るんだけど。

「あー、んじゃ俺も。」
って言っとけばいいかな。
お互いが嫌いなら構わないだろう。

「なっ!俺のこと知ってんのかよ!」
知らねえよ。なんなんだよ。
もう面倒くさいので読んでた本閉じて立ち上がった。
「なっ!なんだよ!やんのか?」
なにをだよ。
せっかくのくつろぎタイムを邪魔されたくないんだけど。
図書館にでも場所を移そうと思ってすれ違ったら身構えられた。
なんもしないよ。
「どこ行くんだよ!」
いちいち構うな、俺に。
「ばいばい。」
答えずに去る。
背が高い。越乃くらいあるかな。
けど越乃よりもがっちりしてる。
越乃は背高いけど細いもんな。
なんてどうでもいいことを考えながら歩いた。

サマースクールの間、普段は大学の学びやで
キンダーガーデン組からハイスクール組までが別々の校舎を使う。
年齢層はそこそこ幅広いけどそもそも人数が少ないうえに広大な敷地。

「逢わないようにしようと思えばいくらでもできんのに
 なんでわざわざ・・・」

午後の手伝いは教務室のプリントを教室に運んで並べるのと
それをできた順に持ってくるのを採点するだけ。
エレメンタリースクールはほとんどこの授業方針だから楽だ。
採点が無い間は本も読めるし静かだ。
そもそも生徒が少ないから忙しくもない。

つつがなくこなして片づけを終えて
寮ではない用意された宿舎に戻ろうとしたら
「ハクウじゃん。」
と声を掛けられた。
振り向くと知った顔。
「久しぶりです。」
「久しぶりだな。なに?今年も手伝い?」
「はい。」
「なんだよおまえ昔っからよそよそしいな。
 俺と同期の遥にはタメ口なくせに。」
「遥は家族みたいなものですから。」
「まーそうなんだろーけどさー。
 今年はハクウひとりなんだってな。」
「はい。」
多くの知り合いは遥がもういないことを知らない。
遥の交流関係は広かったけれど
遥はいろんな人に慕われてはいたけれど
年に1、2度会う位の浅い関係も多かったから
わざわざ知らせたりしないのが暗黙の了解になっている。
 「大丈夫か?困ったことあったら相談しろよ。
 俺は寮の2号館にいるからいつでも来いよ。」
「大丈夫です。ありがとうございます。
 それじゃ。」
「おうよ。」
手を振って宿舎に向かう。
宿舎は3階建てのレンガ造りの建物で
内装や家具はロココ様式で統一されている。
部屋はひとうひとつがどこも広くて窓が大きい。
共有スペースはバルコニーとカフェテリアと
エントランスと噴水ののある庭園と俺のお気に入りの
ひときわ広い部屋の高い天井に至るまでぎっしりと本の詰まった書斎。

生徒のほとんどは自宅通いだ。
別にギムナジウムじみた感じはない。
寮生は本来ここで学んでいる学生がそのまま残って
サマースクールでバイトしていたり研究していたりの生徒だ。
俺は生徒でもないし通ってまで帰りたい場所もないし一応学校関係者なので
こうした場所を与えられて言語や音楽を学びながら手伝いをして夏を過ごす。
越乃もここへ来たことがあると言っていた。彼もたぶんここで寝泊まりしたんだろう。

今までは遥がいたから別に他人なんか気にしていなかったけれど
今年はこの宿舎を使うのは俺以外にどのくらいいるんだろうと漠然と思う。

部屋で着替えを終えて書斎に向かおうとドアを開けたら
吹き抜けのエントランスの空間部分を挟んだ向かいのドアにいた人物が
「ハクウ!」
と声をあげた。
知り合いかと思って目を凝らしてからうんざりした。

まさに昼間わざわざ嫌いだと告げに来たあいつだった。





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