忍者ブログ
キャラの日常日記ブログ
  • /01 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • » /03
カレンダー

01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28

リンク
カテゴリー
解析
最新コメント

[02/11 しゅうむ]
[01/28 しゅうむ]

最新記事

(11/10)
(08/28)
(08/14)
(05/04)
(12/14)

最新トラックバック

プロフィール

HN:
white note
性別:
非公開

バーコード
RSS
ブログ内検索

アーカイブ
最古記事
カウンター

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

1年ぶりに見た彼は少し大人びて見えた。
たった1年。深く重い1年であっただろうと思うのに
驚くほど自然に彼は笑った。
心の中にあった水溜りが塞き壊したように溢れた。
胸の内にあった累積した痛みがじんじんと疼いた。
「は、くう・・・」
言葉にならずに彼の名を紡いだ私を見て
「サラ久しぶり」
手を差し出す彼はやっぱり彼でしかなくて
「ごめんなさい。」
とずっと言わなければと思っていたひとことを告げた私を
「サラがあやまることなんかひとつもない。」
そう言って抱きしめた。
暖かい。生きている人間の体温だ。

私は1年前のあの日。
あの子を失ったあの日、
同時にこの子も失う覚悟をした。
あの子とこの子のつながりは並ならないものであったから。

「あなたが後を追うんじゃないかと
 あなたを残したことを後悔しない日はなかった。」
「そうなんだろうね。心配掛けてごめん。
 好き勝手やらしてもらってありがとう。」
聡いこの子は知っているのだ。
彼の必死さに胸を打たれた私が、私だけが、
彼があの子のいないひとりきりの世界に留まることを、
それでもこの子が望むならと説得してそうなったことを。
「あのとき、残らなかったら俺は俺を失ってた。
 残ったから遥や遥の残したものや失った痛みと向き合えた。
 いまこうして穏やかにいられるのもそのおかげ。ありがとうサラ。」
男の子なんだなぁ。
初めて出会ったときは小さくて女の子みたいで
やんちゃなでっかい弟しかいなかった私は妹みたいに接した白雨。
いつの間にかこんなに男の子の表情を身につけちゃって少し寂しい。

「そう思えるなら、向き合えて進めるなら、
 もう日本にいないでこっちに戻って来ない?」
だって日本にあの子はもういないのだもの。
この子の居場所だったあの子は死んでしまったんだもの。
あの子のそばがこの子の居場所だったというならもうそれはどこにもない。
それなのに彼は、この子は、白雨は、ふるふると首を振ってやんわりと笑った。

「遥が生きた場所にこれからもいたいんだ。」
「そう。
 あなたはあの子が大好きだったものね。」
「うん。」
「あの子はあなたをとても愛してたものね。」
「ふふっ。過保護だったよ。」
「あの子は死んでしまったけれど、
 あなたと最後まで一緒にいれて。
 最後まで幸せだったんだろうなあ。
 希望じゃなくて、そう確信してるわ。」
「そうだといいなあ。」
ふわっと彼は笑う。
「してもらうばかりで俺は何も返せなかったから。」
ふんわりとこの子は笑う。
「そんなことはないわ。」
「そうだといいなあ。」
大人びたこの子もあの子のことでは
子供のような幼さの残る無垢な表情になる。

「サラ、」
「なあに?」
「遥のお墓、どこにあるか教えて。」
ああ、そうね。
あの日以来こちらに来なかったこの子は
遥の墓すら来ないままで知らないままだったのね。
「ええ。
 この住所よ。」
メモした紙を受け取ると
「ありがとう。」
と風のように笑った。
彼は、この子は、白雨はこれから
あの子の、遥の墓前でこれから
何を報告し、話すのだろう。

ほんとうにほんとうに、
互いが互いを必要としているような
ほんとうにほんとうに、
切り離したら生きていけない水と魚のような
そんな二人だったから、
一緒にいない二人を想うだけで泣いてしまいそうになる。

あんなにあの子を必要としてくれたこの子が
もうあんな辛い思いをしませんように。
もうあんな悲しい目にあいませんように。
少しでも穏やかな気持ちで笑っていられますように。
どうか、どうか。
 


 

PR
<< 虚像1 * HOME * 混乱 >>

管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL

BACK * HOME * NEXT
BrownBetty 
忍者ブログ [PR]