春休みに入った。
ホワイトデーなんて去年まで気にしてなかったけど
今年のバレンタインデーには
優しい気持ちをたくさんもらったから
返せるものなんて俺にはないんだけど
それでも少しでも返せたらって思って
そういうありがとうな想いが伝わればいいなって
うん。そう思ったから、みんなのところを回った。
土曜だったから暇な時間聞いて訪ねて行って。
ありがとう。
ありがとう。
って。
水品は
「わざわざごくろーだな。」って口をとがらせた。
古泉は
「律儀なんだから。ありがとう。」ってさらにお返しに肉じゃがをくれた。
此花は
「一緒にお昼寝しようよ。」とベットにもぐりこんだ。
上杉は
「ありがとう。気を遣わせて悪かった。」と小さく笑った。
そんでその足で
いちばんありがとうを返さなきゃいけない人に
ありがとうを告げるために空港へ向かった。
もつべきは勇気なのか決心なのか。
さきにあるのは吸収なのか決別なのか。
進まなければきっと解らないことなんだろう。
あの日の止まない雨はまた降っているのだろうか?
俺の中で。
あの日の止まない雨はもうやんでもいいのだろうか?
彼を置いて。
行先にはその土地柄特有のどんよりとしたうすい雲が
あいまいな感情をもてあましている俺を迎えてくれるんだろう。
遅くなってごめん。薄情でごめん。今まで逢いに行かなくてごめん。
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