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ああ、うっとおしい雨だ。
もうすぐ卒業だというのに月代先輩も見当たらない。
そもそも3年なんてここんとこ自主登校らしいから余計に。
ああ来年のことを考えるとほんと思いやられるなあとつくづく凹む。

ああ、それにしてもうっとおしい雨。
まだ季節的に微妙に寒いから冷えるんだけど。
足早に屋敷の門をくぐろうとしたときそれが目に入った。

あれなに?
雨の中にたたずむ黒い物体。
そこにあるのに存在してないみたいにひっそり。
近寄って被っているらしい布切れをめくったら、

月代先輩がいた。

いや、たぶん、月代先輩なんだけど、
全然違う。何がって雰囲気とか感じが。
実態がない。月代先輩の形をした容器みたいな。
いつもの鮮やかさを失った俺の愛してやまない人。

『パンドラのハコ』

「ねえ、先輩どうしたの?」
ぐっしょりと雨に濡れたその身体を連れて門をくぐる。
生気のない表情。冷え切った身体。魂のないようなその姿。
俺の支えがなければ倒れこんでしまいそうな細い薄い先輩は
酷く弱っているようでまるで俺がいないと生きていけない錯覚に陥る。

俺を頼って来たんでしょう?
俺にすがって来たんでしょう?
こんな状態の月代先輩を俺のものにすることに
俺は少しの抵抗も罪悪感でさえも持ち合わせる気はない。
だってこんな状態でもないとあなたは絶対手に入らないから。
あなたから俺のところにこんな状態で来たんだからあなたは俺がもらうよ。

何も返事をしない月代先輩を
屋敷の本邸ではなく使っていない離れに隠した。
執事の林や他のものに見られたら閉じ込めておけないもの。

部屋に付属しているバスルームで冷えた身体を温める。
びしょびしょだった服らしきものを脱がして驚くのはその身体。
「どれだけ食べなかったの?」
薄いからだがさらに薄くなりあばら骨がくっきり見える。
バスルームでどんな悪戯しようかななんて思ってたのに
あんなにいつも眩しく俺に笑う人がこんな姿だと泣きたくなるよ。
「ねえ、先輩、月代先輩?」
話し掛けても人形のように動かないしずっと虚ろな瞳。
ダウン系のドラックでも摂取したのかと思わんばかりの反応。
「ねえ、先輩。」
こんなに話し掛けているのに
こんなに近くで話し掛けているのに
俺を求めて来てくれたんだって思うのに
「白雨、月代先輩・・・」
その瞳には俺を映してくれないの?
月代先輩の髪を洗いながら
月代先輩の身体を洗いながら
何度も何度も名前を呼んだけど返事はなくて
それでも洗い終えてバスルームを出る頃には
冷えていた身体が温かくなったことが嬉しかった。
「先輩、こんな状態で俺のとこ来ちゃっていいの?」
俺よりも背の低く華奢な先輩は
抱え上げると信じられないくらい軽くて
可哀想で愛しくて膝の上に乗せて身体を拭いた。
身体のどこも全部愛しくて愛しくてどれだけ見ても満足できなくて
しばらく裸でいてもらいたかったけど、鑑賞し続けたかったけれど、
風邪を引いたり熱を出されたりしたらそれはそれで困るから服を着せた。
「どうしちゃったの?」
以前、先輩には大事な人が居ることを聞いた。
恋人ではないしその人が幸せなら幸せだと笑った。
その表情が切なくてなんだか胸がちくっとしたから
俺は月代先輩が俺じゃない誰かを想うことを受け入れた。
その大事な人がいなくなったら俺のところへ来て、と呪文を掛けた。
「あのときの呪文が効いたの?」
月代先輩は何も言わない。
「あんまり無防備だと好きにしちゃうよ?」
横長のソファーにもたれて座って
その膝の上に向き合うように先輩を乗せる。
ああ、逢いたかった人の逢いたかった顔がある。
「俺、あなたの綺麗な顔も好きだけどさ、
 あなたの首筋もあなたの魂も好きなんだよ。」
月代先輩は目を開いているのにうつろで何も映していない。
「こんなあなたでもあわよくばって思うんだけど
 ちゃんと反応を見せて俺を感じるあなたの方がいいよ。」
膝からおろしてキッチンでココアを入れてきてからテーブルに乗せる。
「どうしてだろうね。
 俺は基本Sなんだけどあなたには少しMっ気みたいなんだよね。」
月代先輩の手を取ってその手を包み込むようにしながら
テーブルの上のココアを持たせて月代先輩の口元に付ける。
「のんで。
 大丈夫そんなに熱くないから。」
香りが伝わったのか
ココアの蒸気を感じたのか
月代先輩ののどがこくっと鳴った。
それからとてもゆっくりゆっくりみずから飲んだ。
「やっと反応あった。」
その瞳はうつろなままだったけれどそれでも生きてる反応。
暖まったせいか少し血色を取り戻したように見える肌の色。
そのせいで気付いたのは驚くほどくっきりと浮き上がる瞳の下のくま。
「食事も、だけど、どれだけ眠ってないの?」
髪をなでていると、うと、と瞼が閉じてくる。
そのしぐさがとても本能的で子供っぽい。
可愛くて愛しくて守りたくて掻き抱きたくて仕方なくなるけど
今は、
「眠って、先輩。
 だれもあなたを傷つけないから眠って。
 俺がそばで見守っててあげるから眠って。」
そして、充分に眠ったら、その瞳に俺を映して。
「おやすみ先輩。」
俺の言葉が催眠の合図のようにこと切れたようにソファーに沈んだ。
もう寝息が聞こえる。

ねえ、俺、優しいでしょ?
だから早くいつものあなたに戻ってよ。
そしてお日様みたいな笑顔で俺を救って笑ってよ。

なんだか涙が止まらないんだ。


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