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広夢様とキスしてから
何度もその感触を反芻した。
反芻しながら唇を指でなぞっていると
窓の外を颯爽と歩く広夢様が目に入った。

「あの人と、俺が、」
キスをしたのだ。
なんて不釣り合いでなんて夢みたいなことだろう。
男とか、性別なんか霞むほど、美しく魅力的な人。
驚くことに俺はこの人に次にもキスを望まれているらしい。
キスって、性別はともかく、好きな人とするものだと思っていた。
少なくとも広夢様にとって俺は決してそんな存在じゃない。ありえない。
でも、俺は、広夢様に必要とされたい。好かれたい。魅かれるし好きなのだ。

あの人は俺をからかって笑うだけじゃない。
じわじわと最後には優しさをくれる。
ほら、今も、こんなに胸が暖かい。

あの人の姿が中庭を過ぎてあまり入り込まない方に向かって行った。
「あっち・・・何があったっけ?」
目をやるけれど白く高い壁があってその先が見えない。
自由に出歩いて良いと言われてはいるけれど殆どこの部屋で過ごしているので
この屋敷のすべてどころか数か所くらいしか知らない。そもそも屋敷が広すぎる。
「行ってみよう・・・かな。」
大丈夫。広夢様がいる。
大丈夫。広夢様がいるんだ。
きっと俺を見たら「彩」って呼んでくれる。
そんな甘美な想像に胸が震えるまま部屋を出た。

ここの敷地は広くてメインの屋敷の他に
いくつかの建物がぽつぽつと建っている。
林さんは「物置のようなもの」と言っていた。

ちらちらと前方に見え隠れする広夢様は
どうもそちらの方へ向かっているようで
見失わないように必死に追った。
振り向いて名前を呼んで。
そう願いながら追った。

しかし角を曲がったところで広い場所に出てしまい
どの方向に向かったのか広夢様の影もなく見失ってしまった。

「広夢様。」
見渡しても姿が見えない。
元来たとおりに部屋に戻るという選択より
俺は広夢様を探す選択を取った。逢いたかった。
広夢様の目に俺をほんの少しでも映して欲しかった。

たとえ、邪険にされようとも。

いくつかの入り口らしきドアがあった。
そのひとつに手を掛けて中に入った。
ひんやりとしたそこはひとつの広い部屋だった。
人が使っている気配が感じられないけれど家具はりっぱで
カーテンもかけられていてシャンデリアが掛かっていて絨毯とソファがあった。
何とはなしにドアの横にある金属のスイッチをオンにしたけれど灯りは点かなかった。
「電球、切れてる、のか。」
窓があるから揺れるカーテンにあわせて陽の光は入ってくる。
光へ進むと窓の手前に大きくずっしりした重厚なソファーがある。
隣の部屋へ続くドアを開けたら浴槽があった。
この屋敷はどの部屋もひとつの部屋にバスルームが付いているようだ。
金持ちとは聞いていたけれどこういうのを見るとやはりそうなのだろうと思う。
もうひとつのドアを開ければ廊下があって手洗いと玄関とキッチンへのドアがあった。
やはり誰も居ない。

もう一度メインの部屋に戻ろうとしたら人の気配を感じた。
いつの間にか誰かが入ってきたのか?こっそり窺がった。

ああ、確かめなくても解る。
あの長身。すらっとした身体。襟足が少し長い髪。
俺が探していた俺の所有者俺の焦がれるその人だ。
彼はすうっと窓の方に歩いていきソファーの前で足を止めた。
そう、さっき俺が取った行動を、俺とは似つかない優雅な動きで。

「ひろ・・・」夢様と呼びかけようとして気付いた。
後ろを向いていた彼は少しソファーの方を向いて横顔になり俯いた。
その、その横顔には憂いと言うのだろうかなんだろうとても悲しいような
見ていて胸が苦しくなるような切なく辛い見たことのない表情が浮かんでいて
俺はただばかみたいに泣きそうになりながら見惚れていたら彼の美しい瞳から

涙がこぼれるのを見た。

広夢様が泣いている?
あの完璧で美しい人が泣いている?
驚いて思わず壁に手をついてしまったら
音を立てたわけでもないのに気配を悟ったのか

「誰だ?」

と広夢様が言った。
俺が隠れたまま出れないでいると

「誰なの?」

と広夢様がもう一度言った。
俺はそれでも隠れたまま足がすくんでしまって

「戻ってきてくれたの?」

と広夢様が言うのを聞いた。
俺は動けないで居るのに広夢様はそう言うと
焦ったように駆け出して廊下へ飛び出てきた。
たったこれだけの距離なのに息が荒かった。

「広夢・・・さま。」
「・・・・・・・・・・おまえ、だけ?」
「あ、はい。」
「そう。」
なんだか酷くがっかりしたような顔をされたので
「ごめんなさい。」
とあやまると
「どうしてここへ?」
といつもの表情で言われた。
「広夢様の姿が見えたので。」
「追ってきたの?」
「すみません。」
「おまえ部屋から出ないんじゃなかったの?
 林が自由に出歩いていいっていったけど
 ずっと部屋にいるって報告うけてたけれど?」
「あ、はい。そうです。
 広夢様が見えたので・・・」
「俺を見て追ってきたの?
 俺になんか用?」
「いえ、あの、なにも、すみません。俺・・・」
「用もないのに追ってきたの?」
どうしよう。怒ってる?
名前を読んでくれるどころじゃない。
勝手に追ってきた俺にたぶん怒ってる。
「すみません。俺・・・戻ります。帰ります。」
「帰るってどこへ?」
いきなり手首を強くつかまれた。
「あ、え、部屋に、部屋に帰ります。」
そう答えたらその手首をぐいぐい引っ張られて
そのままソファーに投げ出されて倒されて気が付けば広夢様の顔が上にあった。
ソファーの上に仰向けになった俺に馬乗りになった広夢様が見たことのない顔で言った。
「どこへ帰るって?」
「あ、へ・・・部屋に。」
「俺を残して帰るの?」
なぜこんなことを問われるのか解らない。
怒ってるようにも泣いてるようにも嘲笑っているようにも見える表情。
「ここ・・・にいて・・・一緒にいさせてもらえるの・・・なら
 俺は・・・貴方の、広夢様のそばにいたい・・・です。」
本心だった。
そうしたら、そう言ったら、
「ばぁか、彩。」
名を呼ばれて
髪を撫でられて
二度目の優しいキスをされた。

甘くて、蕩けるように優しいのだけれど、
どこか切羽詰ったような息苦しい切ない味がした。

ああ、広夢様、彼は心で俺じゃない誰かを想って泣いているのだ。

この人は傲慢に奔放に気高く美しくあるべきなのに。
誰にもに好かれ誰にもに羨望され切望される人であるのに。
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