忍者ブログ
キャラの日常日記ブログ
  • /05 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • » /07
カレンダー

05 2024/06 07
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

リンク
カテゴリー
解析
最新コメント

[02/11 しゅうむ]
[01/28 しゅうむ]

最新記事

(11/10)
(08/28)
(08/14)
(05/04)
(12/14)

最新トラックバック

プロフィール

HN:
white note
性別:
非公開

バーコード
RSS
ブログ内検索

アーカイブ
最古記事
カウンター

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「なあにその顔。」
美しい顔に爽やかな笑顔を浮かべて広夢様が笑った。

「はや・・しさんが・・・広夢様・・・が俺に
 俺が部屋出れたら広夢様の部屋に・・・」
「部屋から一人で出てたじゃないこないだも。」
「あれ・・・は・・・広夢様の姿を追って・・・だから」
「だから平気?
 ひとりでここに来るのとどう違うの?」
「行き先を自分で・・・決めて・・・歩くのが・・・は
 でもも・・・俺・・・今・・・広夢様の部屋に・・・俺」
「ああもう。そんなびくびくしてないで入っておいでよ。」
俺はドアにしがみついて顔だけ半分覗かせた状態だったけれど
広夢様の部屋まで来た。部屋の前まで来れた。時間がかかったけどノックもした。
「は・・・い・・あの・・しつれ・・・」
「はい。よく来たね。」
俺がぶるぶる震えながらしゃべり方も動きもおかしいものだから
見かねたのだろう、広夢様がこっちに来て俺の背中を抱えるように押した。

「座って。」
初めてここに来た日
初めてこの部屋で勧められたソファ。
隣には完璧に笑う広夢様が座るソファ。
「は・・い。」
「彩、」
「はい。」
「俺が怖い?」
「広夢様が?」
「そう、震えてるし汗もすごいよ。
 何が怖い?俺?この部屋?廊下?階段?」
「すみません・・・」
「すみませんじゃなくて。
 なにか怖いものでもあった?」
「怖いもの・・・なかったです。
 でも俺は・・・俺は・・・」
「彩は?」
「広夢様が・・は・・・怖いです。」
「俺?なんで?キスしたから?」
「ちがっっ!
 違います。あ、でも違わない・・・です。」
「どっち?何が言いたいの? 
 俺の何が怖いの?」
「優しいのが・・・怖いです。」
優しいのは怖い。
優しくされることに慣れてないから
優しくされると嬉しくてそれに慣れそうで怖い。
優しくされるだけされて突き放されるのが怖い。
広夢様に勝手な夢を見てしまう自分自身が怖い。

「優しくなんかした覚えないし。
 なんで優しいのが怖いの?
 殴られてるほうが怖くないの?」
「は・・・い。たぶ・・・ん。
 俺はその方が慣れて・・・る・・・から。」
「相変わらず自虐的で短絡的で自分勝手な理論だね。
 そんなんだからひきこもりに慣れて出て来れなかったんでしょ。」
「そうかも・・しれない、です。」
「そうなんだよ。
 俺は殴んないよ。手、痛いし。
 俺は俺のやりたいようにやらせてもらう。
 俺はおまえの所有者なんだからどうしようと勝手でしょ。」
「はい。」
「俺のやり方がいやなら逃げればいい。
 逃げれるまでになれたらおまえはどこへでも行けるし何にでも成れる。」
ほら。
突き放すようなことをいうくせに
意地悪そうに意地悪にいうくせに
意味するメッセージは涙が出そうに優しい。
所有者と主張しながら俺の傷が癒えたら好きにしていいって、そういうことを言うんだ。

「俺は、どこにも行きません。
 行きたく・・・ない。」
「ふうん。」
広夢様は口角を少し上げて笑ってから
緊張の汗で汚いだろう俺の頬にキスをした。
「広夢様っ・・・」
「なあに?」
「汚い、です。俺。」
「知ってる。しょっぱいし。」
恥ずかしくて申し訳なくて泣きたくなる。
広夢様の顔が近くてますますうつむく。
「すみません・・・」
「俺からしたのに彩が謝るんだ?」
「すみません・・・」
「もう俺と会話する気ないの?」
「そんな・・・そんなことないです。」
だって貴方に逢いに来たんだ。
バカみたいにびくつきながら震える足踏ん張って
長い廊下をきょろきょろしながら前かがみな姿勢で
一歩一歩踏みしめながら後ろを振り返らないように
そうやってそうやって貴方の姿が見たい声が聞きたいって
そう思って。

「彩。」
「はい。」
「こっち向いて。」
それは無理です。
だってきっと顔は真っ赤で涙も浮かんでる。
「すみません・・・」
「はあ、仕方がないなあ。」
「あっ、あのっ・・・わっ・・・」
俺の身体は空中に浮いていた。
広夢様に抱えられて浮いていた。
「広夢様なにをっ・・あのっ・・」
「汚くなければいいんでしょ。」
「だからあの・・・」
広夢様は俺を抱え上げるとずんずんと歩く、バスルームに向かって。
手際よく俺の衣服を脱がせるとジャグジーで泡が溢れる広いバスタブに入れた。
それから自身も颯爽と脱いで薔薇の花弁を散らしながら同じくバスタブに浸かる。
「ざぶんって頭まで一度浸かればはい、終わり。」
俺の頭をざぶんと浸けてやっぱり美しく笑った。
「広夢・・・さま・・・」
「これで汚くないんでしょ?」
言い終わるかどうかで首の後ろを抱えられて唇にキスをされた。
キスって言い方でいいのだろうか?だってこれは頬にするのとは全然違う。
口内に舌が入りからめられて息が苦しいほど甘くて熱くて深くて脳が解けそう。
「ん・・・っ・・・」
「あ・・・ふっ・・・ぅ」
バスタブの水音に混じって吐息と舌の絡まるぴちゃぴちゃという音がやけにリアルだ。
「俺、おまえとキスすんのは好きかも。」
またすぐ唇同士が触れ合う距離で広夢様が囁く。
「・・・ぇ・・・です・・」
「何?聞こえない?」
俺は広夢様を見れなくてまたうつむくから声もくぐもる。
そのせいで広夢様のほうが俺の顔を覗き込んできた。
「光栄で・・す・・嬉し・・・です。」
「そういうことは俺の顔見て言ってよ。」
俺の顔の真下で広夢様はやっぱり美しく笑った。
「すいませ・・・」
「いーこと考えた。
 彩、すいません禁止ね。
 で、それ言う代わりに彩から俺にキスするの。
 うん、その方が俺も絶対楽しいし面倒くさくないや。」
「俺が・・・」
「彩が。」
「俺・・・」

どうしよう、どんどん溺れていく。
どうしよう、どんどん魅かれていく。
こんなに幸せで、幸せに浸ってばかりで、
いつかこの幸せなときがシャットダウンするのが怖い。
いつか広夢様に突き放されてそっぽを向かれるのが怖くてたまらない。
「なあに、そんな顔するくらいに嫌?
 ちょっと傷つくなあ。」 
「嫌じゃない・・です。
 だって俺は・・俺にはそんな資格なんて・・・ないです。」
「資格ってなに?俺がしろって言ってるんだけど?
 嫌なら嫌でいいよ。そういう回りくどい断り方は嫌い。」
嫌い?
嫌い?
嫌われた?
嫌われたの?
「俺、」
「もういいや。
 それよりも俺、おまえが俺の部屋来たら話そうと思ってたことがあってね
 でもまだ俺の部屋来れるようになったくらいじゃ早い話かもしれないなあ。」
「え?」
もういいや?
もういいの?
少し呆れた声に驚いて顔を上げたらやっぱり綺麗な顔があった。
いつもきっちり洗練した着こなしをしているその服の下の身体も。
俺とは全然違う程よく筋肉のついたバランスの美しい魅力的な身体。
こんなに完璧な人とこんな風に広いバスタブにこんな俺がいるなんて。
バスタブに浮いた泡になって消えて無くなりたい位貧相な自分が恥ずかしい。

「いつでも出て行って構わないから。」
「え?」
ぼんやりしていて最後の言葉だけを聞き取った俺は
不穏な言葉の響きに思わず聞き返してしまう。
「なに?聞いてなかったの?」
「すみま・・・・」
せんと言いかけて「もういいや」と言われた問答を思い出す。
こないだもそんな風で、だったけど、ちゃんとやり直したら笑ってくれた。
だから、だから、だから、俺は首を突き出して広夢様の頬に、頬だったけどキスをした。
「仕方ないね。」
広夢様は俺の聞き逃しも、キスも、なかったかのように
もしくは、キスで許すという行為がすでに自然な行為であるかのように続けた。
「彩、おまえ学校どうしてた?」
「あ、小学校と中学少し・・・」
「高校は?」
「ない・・・です。」
「中学分は俺が教えてもいいし家庭教師つけてやる。
 で、高校は通え。」
「で、も、俺、ひとりで・・・」
「ひとりで通えないんだろ。
 俺と同じ高校に俺と来年から通えばいい。
 でも3年間ずっとは面倒見ないからそのつもりで。」
「え・・・広夢様・・・」
「俺のそばにいるならそれくらいの教養はつけてもらう。
 特に語学。ってことで中学教養と外出恐怖症と対人恐怖症、
 それから高校の受験勉強とやること多いけど来年春までに仕上げてね。」
「受験勉強・・・高校の・・・」
「俺と同じ高校だけど簡単に入れるトコ選ぶよ。
 ただ、入ってからのほうが大変なトコだから
 留年も容赦ないし俺と学年変らないよう勉強しなよ。」
「俺が・・・学校」
「そう。無事卒業したら俺からも卒業証書あげるよ。
 おまえは俺の所有物じゃなくなって晴れて自由の身ってわけ。
 半年頑張って3年過ぎたらいつでも好きに出て行って構わないよ。」
最後のひとことはいらない。
一緒にいられるならもっと過ごせるなら
勉強だろうと恐怖症だろうと克服できる。
3年間だって喜んで頑張りたいと思う。
けれどそれが最終的に貴方の元を離れることにつながるなら
今のままバカなひきこもりのまま窓から貴方を見てるだけでいい。

「広夢様、俺、」
「できる?」
「広夢様、」
「なあに?」
「好きに出て行く自由があるなら、
 あなたのそばにいつづける自由もありますか?」
「彩の好きなようにすればいいよ。」
「俺は、広夢様のそばにいられるならなんでもやります。」
「おまえ逢った時から言うこと変ってないね。
 よっぽどくだらない生活を送らされて来たのかしらないけど
 比較して今の暮らしが穏やかで、優しくて、夢みたいに思えるのかしらないけど
 世界は、外の世界は、もっと広い。もっと果てしないし、もっとたくさんの人が居る。
 そういうのを見て、知った上で、それでも俺のサポートをしたいなら俺は歓迎するよ、彩。」
広夢様の言葉は飾りがない。
酷い言われようをしているのかもしれないけど事実で、
今のおまえなんかいらないと言ってるようで未来の俺に期待してるとも聞こえる。
「広夢様に乞われる人間になりたい、です。」
「それでこそ俺の所有物。ふふっ。いいこだね。」
俺のほうが年上なのに俺は見た目も何もかも劣っていて冴えなくて
それでも貴方は見捨てずにこんな俺にいいこだなんて撫でてくれる。

貴方が好きです
好きです
好きです
好きです

「何泣いてるの?」
「っ・・ぇっ・・・ぇっ・・・」
どうしよう涙が止まらない。

「おまえよく泣くねー。
 ここ来るまで感情のない子だって聞いてたのにさー。」
「えっ・・えっ・・・」
ああほんとうに。
俺こんなに頻繁に泣くなんて。
こんなに泣けるほどの感情をもちあわせてたなんて俺自身知らなかったよ。
貴方のくれる優しさが胸にぎゅって苦くて痛いから嬉し涙ばかりが溢れるよ。 

ねえ広夢様。
貴方はこんな優しい痛みをもらったことがありますか?
ねえ広夢様。
貴方はこんな嬉しい涙を与えられたことがありますか?
誰から?誰に?貴方はこんなに誰かに恋焦がれて好きになったことがありますか?



PR
<< 誕生日に人間をもらった9 * HOME * 誕生日に人間をもらった7 >>

管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL

BACK * HOME * NEXT
BrownBetty 
忍者ブログ [PR]