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気がついたらいつも殴られていた。
なんでこんなに殴られるんだろう。
人はどういうときに人を殴るんだろう。
こんなにも一方的にガンガン殴られると
ああもう好きにしてくれいっそ殺してくれ
せめて一発で意識がふっとぶのを頼むよ
そんなバカなことしか考えらない自分がいた。

小学校は楽しかった。
友達もいたし好きな子だっていたんだ。
なんて名前だったっけ?殴られすぎて思い出せないや。

中学校は少しだけ通った。
友人は不登校になりがちな俺から少しずつ離れてった。
そんな頃からだったかな?変なことが身の回りで起き始めた。
それがいじめだって気付いたのと完全に不登校になったのどっちが先だったかな。

高校はそもそも受験すらしなかった。
世界は暗闇だと思っていたし殴られすぎて身体が起こせなかった。
朝焼けと夕焼けの明るさの違いで今が朝なのか夕方なのか寝転んだままで知るんだ。
排泄した時に便器が真っ赤に染まるほど血尿が出たのには驚いて俺はもう死ぬなって思った。

光が現れたのはいつだっけ?
それは俺にとって救いだとは思えなかった。

殴られるよりも怖かった。
見たことのない人。
見たことのない場所。
知らない人たちの声。
知らない場所の空気。

構わないで俺に。
放っておいて俺を。
こんなわけの解らない世界に連れ出されるなら
あのまま殴り続けられて死んだ方がよっぽどましだ。
こんなわけの解らない世界で生きていけだなんて
あそこでうずくまって夕焼けを見ながら死なせてくれ。

そう思いながらただ震えていた。
わけのわからない怖さよりも
痛みの実感が伴う怖さの方が
状況が解るだけずっとましだ。

それから何年もの記憶が無い。
あるのかもしれないけれど酷く断片的で
あるんだろうけれど思うようには思い出せない。
だからあるようでないのと変らない曖昧な記憶、まるで俺の存在みたいだ。

誰かが話しかけたけれどただ怖いだけだった。

震える俺に与えられたのは四方八方白い壁の部屋。
そこにひとりでいるときが至福の時。
殴られないし怒鳴られもしない。

そんなときにもう一度闇が帰ってきた。
突然の暴力と共に俺はまた闇に引きずられた。
このとき俺はたぶん、俺の感情はたぶん、死んでしまった。

再び光が俺を闇から連れ出して
それからハコに閉じ込められて
俺は死んだように眠った。

目が覚めたら待っているのは闇なのか光なのか。
どちらだってたいして変わらない世界なんだよ。
助けてなんて言う相手もいないのに言わない。

揺れる乗り物に乗せられて再び闇から光の下に戻ったら
「光も闇ももうキミを支配しない。
 キミを支配する者に逢わせてあげる。」
誰かがそう言った。
「そこには怖いものは無いよ。
 支配するものにゆだねれば幸せになれるよ。」
誰かがそう言った。

幸せ?
なにそれ。
そんなものいらない。
白い壁の部屋に俺を戻してよ。

「だめだよ。
 いいからただ、従ってごらん。」

ああ俺はずっとひとりでいたい。
ちいさな匣の中に閉じこもりたい。
誰とも会いたくないし話したくない。

そう思いながらも
「ただ、従えばいいんだよ。」
追い討ちを掛けるように告げられた言葉を反芻していた。

薄曇りの空。
湾曲の美しいフォルムの門をくぐって
緑色の広い中庭を弧を描きながら進んだ先で
大きな両開きの扉の開かれたその奥に入った。

俺はそれを匣の中から見ていた。
薄暗い部屋で俺の匣は開かれた。

誰にも見られたくない俺は
その薄暗さのおかげで少しましだった。
ゆっくり匣から這い出ると空気の様な人がいた。
存在を暴力的にも威圧的にも擁護的にも主張しない。
人形のようにただそこにいて「落ち着いたら声をかけてください」と言った。
初めて受ける受動的な対応に俺はいつになく落ち着いた気分で「はい」と言った。

「ここはどこですか?」

初めて会う人。
初めての場所。
それなのになんだか大丈夫で
足は震えているけれど声は震えなかった。

「屋敷の一室です。
 私の名前は林と言います。」

ゆっくりと丁寧な声が返って来た。

「俺は・・・」
言いかけて「キミを支配するものに逢わせてあげる」
と言われた言葉を思い出す。もしかしてこの人が?
「俺の支配者は貴方ですか?」

林、と名乗った人は瞼を伏せてゆっくり首を振った。
俺は少し残念な気がした。
だってこの人ならいいと
この人なら怖くないような
そんな気がしていたから。

そんな俺に小さく微笑んで
「窓の外が見えますか?」
と林・・・さんは言った。
「窓の・・・外?」
「はい。中庭が見えますか?」
「はい。」
俺は窓の向こうから自分の姿が見えないように立ちながら
そろりと窓の外の緑の中庭へ目をやった。人がいた。
「あそこにおられるのが貴方を引き受けた方ですよ。」
林さんはゆっくりと言った。
俺を、引き受けた、人?
「俺の支配者ですか?」
「所有者、と申した方が正しいかと思います。」
「所有者・・・」
あの人が。
後姿の長身の人がこちらに振り向くのが解った。

息を飲んだ。
だってその人は若く美しい絵画から抜け出たような神々しい人だったから。

『支配するものにゆだねれば幸せになれるよ。』
そんな言葉が呪文のように蘇った。

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