たぶんこいつだ。
いや、まちがいなく。

『見つけた。』

なんとバカなことに
入学式から5日遅れで
登校してきたクラスメイトがいた。

5日遅れってなんだよアホか。
ある意味転校生みたいな扱いで
黒板に名前書いて挨拶とかしてんの。

見たらさ、
なんかぼさぼさの頭でさ、
遅れて入学してくんなら、
髪ぐらいばしっとまとめて来いよって思ったね。
まあ、全体的なルックスは悪くなかったかもな。
けど、へらへらしてっし、にやにやしてっし、
まあ、女にはもてるタイプかもしれねーけど、
俺はなんか気に入らないっつーか気になった。

で、改めて顔見たら、
なんか見たことある顔だ、と。
その瞬間奴がちょっと真顔になったんだよ。
ほんの一瞬だったけど席聞いた時だったか。

あ、こいつだ。
こいつだったかも。
ここでやっと気づいた。

あの春嵐の日だ。
登校日でもないのに、
制服着て学校に来てて、
春嵐の桜の木の前にいた。

あんまりにも雰囲気違ってっけど
たぶん、確かに、間違いなく、こいつだ。

あの時の儚げな様子なんて微塵もないけど。

「見つけた」
と即座に思った。

だから、
「おまえあん時の！」
って立ち上がって叫んだら
ぽかんとした顔で俺を見て
「なんだか解んないけどよろしく」
と言われた。他のやつには笑われた。

恥かかせやがって。
見つけたからには覚悟しろよ。
と特に意味もないことを思った。

中学からの腐れ縁で今もまた
同じクラスの後ろの席になった古泉が
「俺は古泉、さっき叫んだこのおバカさんが水品。
　よろしくね」
と、そいつに挨拶してた。
余計なお世話だ。

「小泉と水品ね、月代です。よろしく」

ほんとに同一人物だったのか？
自分の記憶を否定してしまうような
人懐こい笑顔で月代は言った。

なんかむず痒いような変な気持になったけど、
それは嫌な感情では決してなくて顔が熱かった。

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