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サマースクールもあと数日。
サマーバケーションを終えてここはまた
多くの生徒でにぎわう学び舎となるんだろう。
どんなににぎやかでもどんなに活気があっても
俺にとってはつまらない日々が戻ってくるだけだ。

遥も白雨もいなくなる日。

遥が治療のために日本に渡った日を思う。
あのときは実感がわかなかったけど今は解る。
一度経験した別れは実感を伴って経験となった。
いつ終わるとしれないもしかしたらこれきりの別れ。

遥は親友で眩しいほどの生を放つ太陽のような男だ。
とびきりの公平さと寛大さと横柄さが笑えるほど恰好良い。
その男が死ぬかもしれないと日本に行ってしまったそののち
俺は遥以外の親友なんかいらないし遥ほどの親友はできないことを知っていた。
遥を待ちながら沙羅に焦がれながら自暴自棄になったり自堕落になったり無気力になったり
過食気味にも拒食気味にもなって不安定だったりそのくせ絵に没頭して結構な賞も取ったり
いいこともわるいこともあったんだけどどれもが思いだすほどに薄れていく色のない景色ばかり。

絵を描く俺が色のない世界で過ごし
あまつその絵で賞なんか取るなんて滑稽だろ?
と、その絵を手に取り自嘲気味に笑う。時間は、深夜1時。
この絵は売り手がついたけれど売らなかった。売れずにいた。
「差し入れ持って来たぞ。」
いきなりこんな時間に俺だけのアトリエに声が響いて驚いた。
そのついでに手にしていた絵をゴトリと落としてしまった。
それでもそんなことは気にならずに声へと向く。
「遥…」
空いていたアトリエの窓から入ったのだろう。
人一人寝ころべる出窓のスペースに腰掛ける遥。
「驚かせたか?悪かったな。 
 絵、大丈夫か?」
「絵?ああ。」
拾い上げるが別になんともない。
「その絵をさかなにちょっとやんねぇ?」
ギネスビールが何本か透けた袋を掲げて見せる。
「ああ、いいな。」
間接照明だけを頼りに絵を壁に立てかけてフロアマットに座る。
「乾杯?」
「乾杯に疑問調ってどうなんだよ。」
「何に乾杯?」
「再会に。」
「そうだな再会と飛躍に。」
「あと遥の生還に。」
「ははっ。
 うん。また逢えてよかったな。乾杯。」
「乾杯。」
「臣の側は落ち着くよ。」
「んだよ。日本で友達できなかったのか?」
「俺がそんな人間に見えるか?」
「いや。さぞかし人気者なんだろうさ。」
「まあねえ。
 俺って人を引き付ける魅力があふれ出してるから
 隠しきれないんだよね。いやーどうよこのいけめん?」
「顔かよ。
 まあ、遥は俺が今まで出逢った男の中でいちばん魅力的だよ。 
 見た目だけじゃなくて。」
「おい。まじめに返すなよ。俺がただのナルシストみたいじゃねーか。
 で、なに?女でいちばん魅力的なのは相変わらず沙羅か?」
「女でじゃないよ。人間で、この世で、いちばん魅力的なのは沙羅だ。」
「それを聞くたび不憫でやりきれねぇよ俺は。」
「悪かったな。とんだドMの親友で。」
「まったくだ。」
「で、どうだった日本は?」
「退院してめきめき健康になって白雨とちゃんと生活してる。
 友達もすげえいる。女にもけっこう告白された。
 でも恋人はいねえ。なんとなく作れねえ。」
「白雨がいるからか?」
「白雨のせいにはしたくない俺がいる。
 それから日本には親友が、臣が、いねえ。」
「もう酔ってんのか?」
「どうかな。
 懐かしすぎて心がこぼれてんのかも。」
俺は、驚かない。
遥はときどきその豪快さの裏でこういう繊細さを見せることに。
ただの豪快で豪傑でそれだけならただの粗忽者でしかないだろう。
遥は違うから。遥が味わうことのないような俺の痛みも知ろうとしてくれるから。
「サマーホリディが終わっても
 サマースクールが終わっても
 ここに残るって選択はねーのかよ?
 ここは全寮制だし学年幅広く通ってんだから
 日本じゃ学校別々の白雨ともっと一緒にいられんぞ。」
「こっちに居んなら家に帰れって言われちまう。
 休日なりなんなり呼びだされて離される。
 その間白雨はひとりなんだ。違うな。
 白雨が誰と何をしてるのか解らないんだ。」
「遥、おまえ。」
「うん。
 これじゃ見張ってるみたいだよな。
 俺から離れないように。俺だけ見てるように。
 でもそれが最大限の譲歩で俺の限界なんだ。」
手に入れたんなら
その心も体も手に入れてしまえばいいのに。と、安易な俺は思う。
でもこの想いは、遥が白雨を想うこの想いは俺が沙羅に想う感情と同じだ。
向こうから誘いて好きだと抱いてくれと潤う瞳で懇願されれば超えられる一線。
自分からその壁を壊そうなんてもっと大事なものが崩壊しそうでとても越えられない一線。
「遥は俺と似たバカだ。」
「そうか?」
俺は沙羅に嫌われているからふんぎりも諦めもつく。
遥は白雨に愛されてるから手放すことも逃げることもできないのか。
「少し違うな。」
「違う、か?」
「だっておまえ白雨に恋人できたら泣くだろ?
 おまえが白雨のいちばんじゃなくなったら泣くだろ?」
「…泣く。」
「俺は平気だ。
 沙羅が結婚しても、幸せだったらいいよ。」
「すげえな、臣。
 高尚な恋してるように聞こえるぞ。」
「ばーか。ただのドMの恋だ。」
のどを鳴らして最後の一口を飲んでから
もう一缶を手にと取ってその口を開ける。
「インターンってあんじゃん。」
「医者とか美容師とかのか?」
「そう。医者つーか看護婦。
 俺ずっと病院だったろ?」
「ああ、うん。」
「そんときに看護婦の卵いてさ。
 実習終わる日までずっと告白された。」
「告白?」
「好きだって。びっくりするくらいにしつけえの。
 俺はちゃんと優等生的にきちんと断ったのにさ。
 もう毎日毎日。つっても就業時間以外だったけど。
 そこらへんはきちんとしてんだなって笑ったりしたよ。」
「ほだされたか?」
「さあな。不思議と嫌いにはなれなかった。
 インターン終えた後にさせいせいするかなって思ったけど、」
「思った、けど?」
「病院近くで白雨が俺に見舞い用にいつも花買ってくる花屋あんだけど
 そこでバイトしてんの。卒業までここでバイトするんだとか言ってさ。
 白雨とも顔なじみになってるし、俺と白雨の関係が好きだとか言うし。
 なんにも知らねぇくせにたぶん一生一緒にいられないあなたたちの
 懸け橋になりたいなれると思う。自分を最大限利用してくれ。って言うんだ。」
「なんも知らないくせになかなかに的を射たつーか…
 遥の揺らぐポイントをグラグラつついて来るわけだ?」
「ああ。
 なんなんだあの女は。
 嘘がないのが解るから不気味だけど不快じゃないんだ。
 ときどきゆだねたくなるような、すがりたくなるような、気分に陥る。」
「遥にそういうこと言わせる人間がいるとは驚きだな。」
ぐい、とあおるもアルコール度数が少ないせいか全然酔えない。
「俺はこの世で白雨より大事なもんなんてないんだ。
 一度拾われたこの命すら。」
「だろうな。」
「白雨のためなら、違うな、
 白雨を守って傷つけないためならなんでもしたい。」
「そう思い込み過ぎだ。
 あのクソガキはそんなに弱くない。
 遥ひとりで全部抱え込むことじゃない。
 そう思えるだけあのクソガキも遥のこと慕ってんだろ。」
「臣は正しいよ。
 99%そうだと思うことでも
 白雨がからむとその1%が怖い。
 笑えるほど臆病になれるんだ、俺は。」
「そのようだな。
 だったらクソガキが傷つかない最大の方向性を探せばいい。
 結局その1%がどんなにくだらない懸念であっても消えないなら、な。」
「臣は俺がぐるぐるしてるときに限って突き放すよな。」
「ぐるぐるしてる人間はずっと同じことでぐるぐるしてんだ。
 そんなやつと一緒にぐるぐるしてたって答えなんか出ないからね。
 だって答えなんかもう出てる。そこに行きつきたくないからぐるぐるしてんだ。」
「真理だ。臣。
 なあ、一緒に日本に…」
「行かねえ。俺は飛行機だめなんだ。
 それから沙羅と離れたところに行く気もねえ。
 例えこの世の何より毛嫌いされていても好きなもんな好きなんだ。
 遥とクソガキの仲介だかキューピットになる気もさらさらねーからな。」
「ははっ。臣らしいな。」
「まあ、遥の大事なものに知り合った縁で、
 遥が大失態であのクソガキ泣かせたら慰め役くらいはやってやるよ。
 大丈夫、遥の一番はキミだから、遥のところに安心してお帰りなさいってね。」
「臣!」
遥が飛びついて来た。
当たる頬が熱いので酔ってるなとか思う。
「はいはい。」
「俺はおまえの恋になんの協力もできなくてごめん。
 不甲斐ない親友でごめん。沙羅の弟なのによお。」
「それは俺の不徳の致すとこだからなあ。
 それに俺はドMな恋しかできない体質だしな。」
「臣。おまえはもっと幸せでいいのにな。
 よく見ると美人だし。あ、美男か。
 髪も綺麗だし健気だし。」
「はいはい。飲み過ぎ。
 もう3時だ。ここで寝る?」
「おう。なあ臣。」
「なんだ?」
ブランケットを出しながら返事をする。
「この絵、臣の描いた絵なのか?」
ぼんやりと間接照明に浮かぶ壁に掛けられた絵を見ている。
さっき取り落とした賞を取った絵。
「ああ。」
「臣らしくない消極的な絵、だな。
 なのに一部分だけが攻撃的で、寒い。」
「だろ?」
俺も賞を取って改めてこれ見てそう思ったよ。
なんて殺伐として悲しくて光を求めて止まない絵だろうって。
「うん。こないだの…白雨モデルにした、らくがきみたいな抽象画、
 あれがこの絵の完結編なら…この絵はすごい意味がある…ように見える。」
ああもう寝てしまった。
ねえ、遥。おまえも俺もインターンの女もみんなドMな恋してるよな。
そして、もしかしたら、ううん、きっと、たぶん、白雨のクソガキもそうなんじゃないか?
  







 

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