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放課後になって屋上に向かうのか階段を昇る月代の後姿が目に入ったから
まだ昼の礼すら言ってなかったことを思い出して慌てて追いかけた。

まだ、何も言っていない。
同じクラスの隣の席だと言うのに。
目が合うと笑うだけで声を掛けようすればタイミングよくチャイムが鳴る。
休憩に入れば入ったで仲の良い古泉や水品と始終楽しそうに笑い転げている。
ひとりでいる月代を早く追って捕まえてお礼もだがいろんな話をしてみたかった。

あの後不思議に思ったのだ。
庇われたのは俺なのに月代が彼らと一緒に行ってしまったことが。
まるで俺を庇うようでいて彼らが悪者にならないように彼らを救ったのだ、月代は。

「つきしろっ」
誰も居ない屋上で影に腰掛けて音楽プレーヤーをいじっていた。
その手を止めて耳に入れていたイヤホンを外して俺を見上げる。
あのときの凄んだ表情が想像もつかないほど穏やかに柔らかく笑う。

「上杉だ。」
俺の名前を呼んで笑う。
「隣、いいか?」
「いいよ。ここ影で涼しいんだ。」
「本当だ。秋なのに今日は暑かったからちょうどいい。
「だね。」
当たり前のように返してくれる。
まるでいつもこうして待ち合わせているかの如く。
教室では隣の席だがそんなに話などしないのに。
「あの、さっき、昼はありがとう。」
「ああ、ごめんね。気にしないでやって。」
彼ら側で謝られるのは寂しい。
それは月代も彼ら側の目線で俺を見ているから?
「月代も?」
「え?」
「月代も彼らのように思う?俺を?」
「彼ら?もてていいなって?」
「違う。お高いとか見下しているとか。」
言っていて情けなくなる。
そんなふうにしか見られていないのか。
愛想なんていまさら振りまき方を忘れた俺を。
お高いどころか欠陥を取り繕おうとしているだけだ。

「見下してんの?」
明日も晴れる?みたいな軽い口調で月代が聞く。
「して・・・ない。けれどそう見えるなら俺にも問題がある、と、」
「ないない。」
「え?」
「言ったじゃん。妬んでるだけ。羨ましいんだよ上杉が。」
「けれど俺は、」
俺が笑って傷つけた人がいたのは事実で。
俺の存在が彼らは疎ましく思われているのも事実だ。
「かけっこで一等取ったのに二等の子に
 うらぁ!次は負けねーかんな!って言われないのは悲しいよな。」
「え?」
「そう言ってくれたら
 だが今回は俺の勝ちだぁ!って笑えるのに。」
月代が知りもしない俺の過去の傷跡を語っている。
「・・・そうだな。」
「ビリだった5等の子まで
 おらぁ!俺も眼中に入れやがれ!
 慢心してっと寝首かいてやっからな!
 なんて言い出すとめちゃめちゃ楽しいんだけどね。」
「ああ。」
「諦めて羨む方が簡単だから
 なかなかそうはならないんだけど、」
「うん。」
「だから羨むくらいは許してあげて。」
「・・・月代は彼らの立場でそう言うんだな。」
「え?俺?」
月代は羨まれる立場であるように思う。
きっとずっと俺なんかよりも気高くて強い。
俺は彼の勉学だけじゃない賢さが羨ましい。

「俺は羨まれるような人間じゃないから
 そう思われることが酷く不安定で受け止め方が解らない。」
「不思議で、じゃなくて、不安定で、なんだ?
 だからいつも一生懸命なんだ?
 答えようって。答えなきゃって?」
月代がふんわりと話す。
「そう・・なのかも・・しれない。
 そう、見えるか?」
「そうなんだろうって。
 それはとても重い感情の押し付けだよね。
 勝手に期待して憧れてるかと思えば別のやつには妬まれる。」
月代が手を差し出して俺の頭をなでた。
その行動には少し驚いたけれど
なでている月代の方があやすされたいような
迷子になった子供のような頼りない顔をしていて
好きにさせてあげたいなぐさめてあげたいと思ってしまった。

「月代・・・」
「うん。なに?」
「泣きそうな顔をしている。」
「あはは。うん。そうかも。」
「俺のせいで嫌な気にさせたなら謝る。ごめん。」
だから俺なんかのためにそんな悲しい顔しなくていい。
「上杉のせいじゃないよ。俺がつまんないこと思い出しただけ。」
「聞かせてくれないか?」
共有させてくれないか?
「ほんとつまんないことだよ。」
「構わない。」
聞きたいんだ。
知りたいんだ。
月代のことを。
「俺が憧れてた人のこと。」
「月代が?」
「うん。すっげぇ人で俺の憧れで目標だった人。
 それを毎日毎日感じさせられてしんどくなかったかなぁって。
 きっとしんどかったと思うんだけどそれでもずっと尊敬させ続けてくれた。」
「すごい、な。」
「うん。挫折してるとことかへこたれてるとことこ見たことなくって。
 ずっと俺の道しるべでずっと俺の前を歩いてた。
 俺はそれが当たり前だった思ってたんだけど。」
月代が俺を見てふふって困ったように笑った。
「上杉見てたら羨まれるそんざいってしんどいんだなって思って。
 俺はあの人にそういうしんどさ追わせたひとりだったのかもなって。」
「そんなことはないと、俺は思う。」
「上杉?」
「誰にも認められないなんてその方が寂しい。
 月代の存在がその人を奮い立たせていたのかもしれない。
 逆境にあったとしても月代の前だから挫けてはいられない、と。」
さっ月代自身が言ったのだ。
待ってろ追い抜いてやると言いながら追ってくれば笑えると。
妬んで嫉んでどうせおまえは俺とは違うからと言われたら笑えない。
「上杉・・・うん。そうだね。そうだといいなぁ。」
「すまない。よく知りもしないのに。」
「ううん。ありがと。
 誰でもなくあの人に近い立場の上杉がそう言ってくれると心強いよ。ありがと。」
俺は何もしていないのに礼を言われた。
「礼を言うのは俺の方だ。
 許すとか許さないとかじゃなくて
 何言われても嫌われても俺は構わないんだが
 ああいう時どう対処すればいいのか解らないから。
 月代にあの場で助けられたのは事実なのだから。」
「うん。」
「助かった。ありがとう。」
「うん。」
月代の憧れる人。
逢ったこともない人に思いを馳せる。
月代はああ言ってくれたけどきっと俺とは全然違う遠い人だ。
 
「月代、」
「なに?」 
「月代のあの人とは・・・」
「ああ、もうね、いないんだ。
 だから俺目標見失っちゃってさ、迷いながら転げまくりなの。」
そう言って笑う曇りのないちいさな顔をなぜか俺は抱きしめたくなった。

俺は月代に嫌われない人間でありたい。








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