人の気配がした。
広夢様の機嫌が良すぎるのも悪い兆候だ。
嬉しそうなのではなく悪そうな機嫌のよさだ。
大概のことは放っておくのだけれど胸騒ぎを覚えた。
広夢様のあとをこっそり追うと離れの棟へ行き着いた。
広夢様が外出の時を見計らって出直そうとその陽を離れた。
寝息のようなものが聞こえた。
閉め切られた真っ暗な部屋。
窓もいつつけたのか格子がはまっている。
分厚い絨毯の上を分厚いカーテンに向かって進む。
電球が切れているのか明かりがつかない。とにかく明るさが欲しい。
「すう」
ちいさな。ちいさな。寝息だ。
まるでちいさな子供が昼寝をしているような平和な寝息。
ようやくして開け放たれたカーテンは
容赦なく室内を明るさで満たす。
その部屋の中心にある大きなソファで眠る少年が絵のようにいた。
剥かれて繋がれてそれでも平和な顔で眠っていた。
ああ、と私は呻いた。
なんてことだ、と私は頭を抱えた。
彼は私も何度かあったことのある少年だった。
とても明るく可愛らしい印象のあった聡明な少年がこんなところに閉じ込められたいた。
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