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「失礼しました。」
彼の部屋に付属した風呂なので出口は当然彼の部屋がある。
彼は広い部屋の中央に置かれた真紅の大きなソファーに座っていた。
閉じられた何枚かの白い紙をぱらりとめくりながらゆっくりとこっちを見た。

着ている物も
その身のこなしも
髪や目の色もその存在も
すべてが優雅で美しかった。

どんな扱いを受けようとこの人ならいい。
どんな扱いを受けてでもこの人に仕えたい。
飽きたと言われたことに何度も恐怖を感じながらそう思った。

「こっち、来て。」
「はい。」
急に羞恥心が胸に広がった。
着る物がなかったので「脱げ。」と言われたときのまま
俺は全裸で痣だらけでみっともない裸のままなのだ。
「ふうん。」
彼はくんっと鼻を鳴らして俺の肩を嗅いだ。
「あの…」
「いいよ。ちゃんと洗ったみたいだね。いい匂い。」
「はい。」
自分が褒められたわけじゃない。
風呂に備わっていたシャンプーなどの香りを褒めただけだ。
「でも汚い。」
「え…」
「痣、汚い。」
「すみません。」
洗ったって落ちない汚い身体。
「服着て。もう見たくない。」
「あ…」
「そこに新しいの用意しといた。
 あんたの着てたの捨ててもいいよね。」
俺のことなんて好きにしていい人が
俺の着ていた服の処分に断りを入れるなんて。
「はい。ありがとうございます。」
嘗め回されるような視線を感じながら服を着た。
いい服だ。仕立ても、素材も、きっとセンスもいい。
「着たらここ、座って。」
ここ?彼の手はソファーの上、彼の座る横を叩いている。」
「え?そこは?」
「なに?俺の隣は不足?」
「とんでも…ないです。
 俺は…床でも…その…かまいませ」
「ふざけないでよ?
 俺の風呂で身体洗って、俺が用意した服着て、床に座る気?」
「あっすいません!」
「うざい。ここ座るの?座らないの?
 座らないならもういいよ出て行って。」
「すみません!失礼します!」
慌てて隣に腰掛ける。
「面倒掛けさせないでよね。
 ただでさえおまえの態度、いらいらすんのに。」
「す…すみません。ごめんなさい。」
「解ればいいよ。
 ね、あんた名前は?」
「   です。」
「へえ?苗字あるんだ?
 ねえ、その名前好き?」
対人恐怖症で外出恐怖症で家から出ない
家族には殴られ蹴られサンドバック呼ばわりだった。
誰も呼ばない。誰にも呼ばれることの無い名前だった。
「何も思い入れはないです。
 そういう名だと自覚したこともないです。」
「ふうん。じゃあ今日から俺が名前をあげる。
 そうだね体中いろんな色付いてるし
 色…とか?もうちょっとお洒落にだとそうだなぁ
 色彩の彩なんて響きがキレイな気がするけどどう?
 色彩の彩、サイ。うんいいかも。苗字はいらないよね。
 名乗る必要があるときは俺の苗字をつかえばいいよ。」
「さ…い…」
「そう。名乗るの遅くなったけど知ってるかな?
 俺は越乃広夢。あんたは今日から越乃彩。」
「越乃…さい?」
「これからはその名前が染み付くくらい
 呼ぶからちゃんと意識してなよ。」
なんて甘美な言葉。
彩。サイ。さい。そう呼んでくれるんだって。俺だけの名で。
俺はなんにもできてないしさっき飽きたって言われたばっかりなのに
この人はもう俺に清潔な暮らしと服と名前なんかくれるんだ。くれたんだ。
「ありがとうございます。」
「それ、本心?」
はははって彼…広夢様は笑った。
「俺がこきつかってやるほど呼ぶって言ったんだよ?」
ってもう一度笑った。理由を聞いても感謝を覆す気持ちはない。
「ありがとうございます。」
もう一度行ったら怪訝な顔をされた。
「あんた素直すぎてつまんないって思ったけど、
 そういうあんたを壊すのも悪くないって思っちゃった。
 彩、あんた外出恐怖症で、対人恐怖症なんだって?」
「はい。対人…は相手の情報が少しあればなんとか・・・なのですが。」
「はははははっ!超うける!たった今、彩って名前を与えられたおまえが
 自分の名前に何の思い入れもないようなおまえが 
 相手の名前知ったくらいでそれ克服できたわけ?
 そんでこうして俺の前にいるわけ?」
「名前だけじゃ…ないです。」
「他は?」
「あ、社会的評価と…か
 広夢様は社会的に優れた方である、と。」
「はははっ!こんな青臭いガキのとこが社会的に優れた方だって?って何の評価だよ?
 世間知らずもここまでなのか外出恐怖症!?」
「…すみません。俺には解りません。」
「だろーな。」
俺には世間的評価、世間的思考、そういったものが解らない、
だから人も嫌いで外出も嫌いで俺を取り巻く世界が怖かった。
怖かった?怖かった?今は違うのか?今は…今は・・・今は…今は…。
怖いというよりも俺の話をこうして聞いてくれる広夢様の存在を失うのが怖い。
「俺は、俺なんかが、あなたの役に立てることがあれば、
 生きていられるのだと思います。」
「・・・。」
「俺なんかがおこがましいことを言ってますね。」
「・・・。」
「すみません。」

くしゃり、とうつむいた頭をなでられた。
俺はうつむいていたから広夢様がどんな顔をしていたのか解らない。
バカなやつだと笑っていたのかもしれないし、
うざいやつだと怒っていたのかもしれないけれど、
その手が何故かとても暖かくて優しくて初めてのどきどきする嬉しい気持ちで
なんだか涙があふれて止まらなかった。
ああ、嬉しいってこんな感情だったんだな。ちょっと痛いんだ。
「なんで泣くかな?
 よく解んねーけど、とりあえず面接終わり!
 その汚い痣だらけの身体、なんとかするまで俺は彩に興味ない。
 そういうわけで、それまで俺の前にその肌も顔も見せないでよね。」
美しい顔でにっこり笑って彼は、広夢様は、
あっけなく俺をその部屋から追い出した。
「バイバイ。」
広夢様の部屋の前で待機していた執事の林さんが
「あの人は気紛れですが芯のある方なのですよ。
 さ、こちらへ。」
と俺の今後の住処?いや、外出恐怖症の今後の住処となる部屋へ案内してくれた。
驚くほど清潔で、息をのむほど贅沢な場所だった。間取りも広さも家具や消耗品までも。
愛されているのかと勘違いしそうなほど。必要な人間と思われているのかと勘違いしそうなほど。

あの人に必要とされたい。愛されたい。
そうなるにはどうすればいいのか全く解らないけれど。

***

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