5つ下だと言ったか。
俺と遥は今年で18だ。
つうことは白雨(だっけ)は13。
俺がとことん沙羅に嫌われ始めた歳だ。
(ち、嫌なことに気付いて思い出しちゃったぜ)
俺もこんなだったかな13の頃の雰囲気って?
と、遥を真っ直ぐ追う線の細い横顔をなどる。
たぶん全然違うだろう俺こんなに華奢じゃなかった。
そもそもこのガキは沙羅のお気に入りでもあるらしい。
沙羅に嫌われ続けた俺とこのガキは天地ほど違っただろう。
そもそもこいつが白雨だと決まったわけでもない俺の勘だ。
観覧席にもなるしただの階段でもある段差に腰掛けるガキ。
近づきながらそのガキの見つめる先の遥もついでに見る。
遥はと言えば今度はバスケでダンクなんか決めてやがる。
「相変わらず派手だな。」
一心に遥に注がれていただろう視線がこっちに向く。
あどけない顔立ちとは裏腹に表情の読めないビー玉みたいな瞳。
「張り切り度いつもより2割り増しってカンジなのは
ギャラリーにキミがいるからかね?」
「・・・」
ビー玉の瞳は警戒しているのか俺を凝視している。
睫毛が真っ黒で長くてその奥にささやかに光るビー玉の眼。
夜の暗闇の中にぬらぬらと揺れる水面に浮かぶ満月の月を思う。
油断しているとその言い知れない何かに飲み込まれるぞと警告が鳴る。
「キミ、白雨でしょ?違う?」
ビー玉の眼は一度閉じられた。それから立ち上がって俺を見る。
「あんた何?誰?」
おーおー勝気なガキだ。
声もまだ幼いのに気迫はあんのな。
黙って笑ってりゃお人形さんみたいに可愛いだろうに。
「俺は臣。遥に聞いてない?
あいつが日本に渡るまではここで悪友やってたよ。」
「・・・知ってる。
存じてます。今もずっと親友だって言ってました。
そう、あなたが・・・初めまして月代白雨と言います。」
おやおや急にイイコになったぞ。
まだにっこり笑ったりはしない感じだけど。
んーでもちょっと堅いか?戸惑ってるか?
「うん。初めましてキミ・・・」
沙羅のこと知ってる?沙羅キミには優しいの?
沙羅に好かれるにはどうしたらいいかキミは知ってる?
なんて沙羅沙羅づくしなことを聞こうと思ったら豪快突風にかき消された。
「うーわーもう出逢っちゃってんじゃん!
そんなことなら躊躇せずに紹介しとくんだったぜぇ!」
遥が後ろに砂埃を巻き起こしながらすごい勢いで走ってきた。
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