学校で逢うってのに逢えるのは夏休み冬休み春休みの間だけってのは
なんか不思議なもんだな。なあ、遥。
んーこういうのってアレかな?
海外在住の日本人学校に通う生徒と
海外在住の現地校に通う生徒が補習校(土日だけやってんのな)
で出くわす感じの出逢いだよな。頻度はもっともっと少ないけどさ。
これで解らなきゃ、んーそだな。日本でインターナショナルスクールに通う
日本人と普通の高校に通う日本人が夜間学校で一緒に授業受けてるとかそんなの。
何を言いたいかと言えば就業時間が並外れて長いってこと。
そんでここの教師はプロフェッショナルばっかりってこと。
遥のオマケだと思ってた良い子ちゃんなクソガキ白雨は
なかなかに優秀なクソガキらしいってのが教師たちの会話から漏れ聞こえた。
あーまーこの環境でその上最強人間遥と始終一緒に過ごしてたらそれも有りだな。
「あんなんただの腰ぎんちゃくだ。」
一日の授業を終えて例のごとく遥が白雨にじゃれついているのを
遠目に見ていたらそれを同じように見やってからそうつぶやく輩がいた。
「気持ち悪いよ見てて。あいつら!」
本人たちに聞こえない距離で聞こえないトーンでそう呟いて背を向けて歩きだした。
見覚えがある。フットボールクラブの生徒だ。でかい形りだけど確か、そう白雨と同級だ。
つーことは白雨のこと言ってんのか。まあ、解る。周囲にはそう見えるんだろうって思う。
けど、あのクソガキは、白雨は、
わざとそう見えるようにしてる、と最近思う。
わざとってのは買いかぶり過ぎか?つまり、
白雨は遥に守られてる弱い人間を演じてんだ。
実力もある。成績も、意外なことに運動神経もかなり良い。
なのに弱いのに大物に守られていると見せかけることは他の、
力を持たないものたちから見ればただの妬みの元凶にしか成りえない。
何のために?
誰のために?
そんなの簡単だ。
一時期死の淵をさまよい続けた遥のためだ。
守られたのに今守っているつもりの遥のいわば、プライドのためだ。
あんだけ豪快の完璧超人は白雨を守る存在であることに誇りを持って生きている。
それを失わせないために、それを継続するために、いまだに遥と生活し続けているんだろう。
弱い人間を演じながら。
弱い人間を演じながら?
気持ち悪い関係、なのかもな。
お綺麗な関係にも見えるけどな。
遥は、あの豪快なくせに意外と繊細な男は認めねーだろうが
あいつは白雨が可愛くて愛しくて欲しく欲しくて仕方ないんだ。
それを保護者って立場で一線引いて兄貴分の位置を保ってる。
白雨の方はよく解らないけど遥が求めてきたら応じるだろうと思う。
そうじゃなきゃ家族とか血のつながり投げ捨てて遥を追わないだろう?
あ、でもな、義理の母親と義理の父親の家庭に生まれた義理の妹のいる環境も
たいして思い入れもないつーか、むしろ居心地悪かっただろーから必然、だったか。
「解らん。」
さっき点けた煙草をふかして深呼吸する。
遥のことは大抵解る。
けど白雨はなんか、影みたいで、幻影追うみたいで、解らない。
この世の誰に嫌われても、関心すらもたれなくても、遥だけ見てる。
そこに欲情とか欲するものがないように見えるから解らない、んだ。
おどろいた。
窓の外を見たらクソガキがついそこにいた。
「百面相、してた。」
俺に言った。
「遥がいつもさ、遠く見ながら話してくれた親友の話、
貴方の、臣さんの話、聞いてたよ。」
さらにそんなことまで言う。
「ろくでもねぇ話だったろ?」
そう返した。煙草の煙と共に。
「どんな人なんだろうって想像してた。」
それには答えずにそう返すクソガキ。
「こんなんで悪かったな。」
そう返したらちょっと笑って言った。
「クソガキっての、見抜くからまんざらでもないなーって思った。
さすが遥の親友だね。」
ああ、ほんと。生意気でお綺麗なクソガキだ。
「俺は遥のそばにいたいんだ。
俺の居場所はそこにしかないから。
だけど何にもできない守られるだけの存在じゃ
肝心な時に遥に近づくことができないって思う。」
クソガキが真剣な顔で語る。
「だから、怠れないんだよね。
ね、遥の親友の臣さん。見ててくれる?
遥が俺の歳くらいのときどんなだったか比較してよ?」
「は?」
「あそこに混じってバスケしてくるから。」
笑った。
子供っぽいのに大人になりたそうな眩しい独特の笑顔。
あの頃の誰もが憧れた遥を想わせるオーラをまとった笑顔。
んなん見る前に気づいてたよ。
おまえがただの遥の腰ぎんちゃくじゃねーってことくらい。
いっつも本ばっか読んでるおまえがよもやバスケでも爽快なプレー。
やるだろうとは思ったけど目の当たりにしたのはやっぱ衝撃で驚いたけど。
ん、で、離れたとこで俺以上に驚いて目を見張って口あけてるさっきの毒舌君はもっとだったろうね。
だってあのクソガキ。
混ざってバスケしてたのお遊びとは言え
大会に出るたび結果残してるバスケ部レギュラーが殆どじゃん。
あー言うやつらって負けず嫌いばっかだからお遊びだろうが手ぇ抜かねぇし。
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