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『虚像7』

今日も書斎に向かう後ろ姿が見えたから
その後を追って書斎に向かった。
ドアを後ろ手に閉めて名前を呼んだ。

「ハクウ!」
「またおまえかよ。」
んな言い方しなくてもいいじゃんか。
んな言われ方したら用意してた言葉が続かないじゃんか。

「・・・なに?」
「・・・本、好きなのか?」
「うん。」
「他に好きなことないのか?」
「ないこともないよ。」
「なんだ?」
「なにが聞きたいの?
 俺がオトコが好きだとか聞きたいの?
 男だって女だって好きな人は好きだし 
 嫌いなヤツは嫌いだ。これでいい?」
「そんなこと聞いてな・・・」
白雨は読みかけの本をぱたりと閉じて立ち上がった。
「忘れてるのか記憶してないのか知らねーけど
 おまえは俺を嫌いだと言ったし
 俺はおまえに構うなって言ったよ。
 利害一致してんだから放っておけよ。」
「・・・放っておけるならおいてる。」
「はあ?」

手が、身体が、勝手に動いた。
口では警戒してても動きには警戒してない無防備な背中。
俺よりもひとまわりもふたまわり華奢で細い身体。
首なんてちょいとひねればぽきりと折れそう。
白人なんてここにはいくらでもいるってのに
アジアンのくせに透き通るような肌してんの。
青い血管が透けそうな頼りない儚い存在。

「なにっすんだっ・・・」
「ハクウ」
「なんだよどけよ。」
地下にある薄暗い本に囲まれた書斎で
俺は白雨を押し倒している。
「どくかよ。」
「なんのつもりだよ。」
ああなんて甘い誘惑。
細い首に鼻を寄せて口付けたら
白雨の体温と匂いが俺を支配した。
欲しい欲しいこの人が欲しくてたまらない。

「どうせ遥ともヤってたんだろ?
 あんたを監視下において守ってたあの人
 あんたみたいなのをいつもそばに置いてた人
 いないとき狙ってこうしてやりたいって思ってたよ。」
「・・・どういう意・・・ふっ・・・」
手首を片手でくくって押さえつけて
めくれたシャツの内側に手をいれさらにめくる。
何食って生きてんだってくらい細くて薄い身体が露になる。
「ははっ、確かにこれならヤれそう。」
「なあ、おまえ、」
この場に置いてなお名前で呼ばれない。
当然だ。白雨は俺の名を知らないのだ。
そう思うと腹立たしくなって胸の突起に手を伸ばした。
その時だ。
「おまえ、遥のこと好きだったのか?」
ノーではないイエスかもしれない。
「さあな。」
「俺は遥とこんなことしてないよ。」
そうだろうな。そんなこと知ってたよ。
「ふうん。」
「遥を独り占めしていた俺が憎いっていうんなら
 ・・・好きにしろよ。」
なに言ってんのこいつ。
「は?」

「遥はもうこの世にいない。
 俺の目の前で死んだのに
 俺は助けることできなかった。」
「・・・・自殺?」
「事故。」
「んじゃ助けるとかムリじゃん。」
「解ってても何度もフラッシュバックするくらい
 その瞬間は明確に蘇るし後悔すんだよ。」
「・・・・・」
言ってやりたいことはたくさんあるんだ。
たくさんあるんだけど全部言えなくなった。

「白雨、おまえが可愛くて仕方ないんだ。
 愛しいし俺だけ見てろって言いたいけど
 もっとたくさんのすげえもんいっぱい見て見たうえで
 俺を選んで。俺を見て。俺だけのものでいてほしいんだ。」


「やる気、失せたわ。
 つーかあの人がそんなに大事にしてくれた身体
 おまえが大事にしなくてどーすんだよ。」
「大事にしてないわけじゃない。
 ただ、おまえが遥のこと好きだったんなら、
 俺はずっと遥を独り占めしていた自覚はあるから。」
「ふざけんな。お情けかよ。
 実は俺がおまえのこと好きで
 ヤれそうな口実言い当てただけかもしんねーだろ。」
「だったら途中でやめないだろ。」
白雨は起き上がってめくれたシャツを直した。
「それに涙してくれたりしない。」
そのシャツの裾で俺の瞼を拭った。
ああ、どうりで視界が悪かったわけだ。
ああ、どうりで組み敷いてた白雨が起き上がるわけだ。

おまえは遥とそういう関係じゃなかったって言うけど
遥かはそういうのを望む関係だったんじゃねーかって
言ってやりたかったし確信があったしそのことで傷つく白雨も見たかった。
けど、俺は、たぶん、手放しで遥のことは尊敬みたいな憧れみたいなそんな好きで見てた。
だから、遥のために言わない。
最後まで白雨を守るように愛したのなら
守るように愛したままで逝ってしまったのなら
それは、その遥の想いだけは俺が独り占めしていよう。

「ああ、俺は遥のことは好きだったよ。
 いい人だったし、太陽みたいな人だった。」
「うん。」
「おまえのことは嫌いだったよすげえ嫌い。」
けど嫌いと同じだけの気持ちで好きだったし
いま嫌いの倍くらいの気持ちで好きなんだよ。
「俺は、遥のこと好きだって言ってくれるぶん
 おまえのことは嫌いじゃないよ。」
白雨は立ち上がって言った。

それからサマースクールは一週間続いた。
俺はもう白雨を嫌いだとは言わなかったし
押し倒しすような気力がわいてこなかったし
無駄につっかかりもしなかった。

白雨は相変わらず普通に本を読んでいて
たまに俺と目が合うと挨拶を交わしてくれたし
もう無駄に警戒したような視線を投げかけもしなかった。
穏やかに、けれど何かを失ったような、心に穴が空いたようなままで、
止まることなく時間は流れた。
 
「ハクウ。」
「ああ。今日でお別れだな。
 荷造りしたか?」
「もう家に送った。
・・・なあ、あんた日本に家族とかいないんだって?」
「いないけど?」
「じゃ日本にいる意味なんかあんの?」
「あるよ。」
「なんだよ。」
「大事にしたい人がいるからね。」
「恋人?」
「うん。恋人。」
胸が壊れそうなほど痛んだ。
「大事なんだ?」
「うん大事。守りたい。早く逢いたい。」
白雨にこんなこと言わすやつがいんのかよ。
なあ、遥ほどのやつに恋人の関係を求められたら
白雨、おまえ、どっち選ぶんだ?その恋人?遥?
遥じゃねーの?
聞きたいけどやっぱり聞けない。
だって遥はもうこの世にいないのだ。
「んなここさっさと立ち去りたい言い方すんなよ。」
「そうだったか?」
「そうだ。」
「あ、迎えのバス来たわ。
 んじゃ元気で。」
「ハクウ!」
「ん?」
来年も来るか?
来年はもう少し仲良くできそうなんだ。
来年も逢えるか?
来年は逢いたいと想われる俺になるから。
来年も来てくれないか?
来年はおまえと書斎で本とか読んでみたいんだ。
「おまえのこと、そんなに嫌いじゃなかったよ。」
「・・・うへへっ」
「っ!」
「あのさ、おまえの名前、教えてよ。」
「      」
「      ね。覚えとく。」
「忘れんな。」
「忘れねえ。」
「また、ここで、な。」
「そうだな。」

忘れられないほどの太陽みたいな笑顔。
遥を彷彿とさせるような燦々のキラキラ笑顔。
最後の最後に見せ付けて焼き付けて去って行った白雨。

「日本、か。」

こっちから出向くのも悪くない。
第一声に「俺、あんたのこと大好き。」って言ったらどんな顔するかな?


FIN

*****
最後までお読みくださりありがとうございました。
PR
連載中の流れをぶった切ってここでバトンです。
何考えているのかここの管理人は。KYは俺じゃない。管理人だ。
なんで俺なんだ・・・
バトンを渡された古泉です。
『ご指名バトン』
送り主は管理人じゃなくて
水品&月代で答えろとのことです。
ほんと・・・俺ってたたの便利屋だなあ。
さっさと行きます。

■送リ主の名前は?
 月代と・・・水品ってことで。
 
■どこで知り合った?
 月代:高校が同じクラスだった。
 水品:なんとなく小学中学年からの腐れ縁。

■どっちから声かけた?
 月代:俺、と言うより月代に絡んでいく水品をなだめるために仲裁に入ったので。
 水品:俺かな?学級委員してたときの催し物について聞いたときだったかな。
 
■どういう関係?
 月代:俺が世話やいてるようで実は月代が気に掛けてくれてる。
 水品:バカとバカストッパー。バカは水品ね。

■イメージカラーは?
 月代:不思議な色。気候によって色の変わってみえる月色。
 水品:名前が水品だから水色でいいや。

■直メした事あるorしたい?
 どっちもあります。友達だもん。
 
■電話した事あるorしたい?
 上に同じ。
 
■送リ主に似合う言葉は?
 月代:快刀乱麻(理由は次のSSで)
 水品:バカ
 
■送リ主が制服姿で貴方のベッドに寝てたらどうする?
 月代:寝かせてあげる
     (月代の寝てるとこってあんまり見た事ないかも)
 水品:額に名前書いてやる。
 
■送リ主に抱き付かれたら?
 月代:普通によしよしって。
 水品:普通にわしわしって。
 
■送リ主の事好き?
 どっちも大好き。
 
■どんな所が好き?
 月代:なにも考えてないみたいなのに
     すごい考えてるとことかそれなのに
     自分の危険には無頓着なトコとか好きっていうか心配。
 水品:バカだけどバカなりに考えてるところ
 
■送リ主に愛を叫べ
 月代:「明日の部活は夏野菜のグラタン多目に作るから食べにおいでよ!」
 水品:「生きろ!」
 
■このバトンを回す8人を指名して
 (送り返しあり。誰でもいい、はなし)
 俺でアンカーで。
 
答えたけど需要ないだろうに。
なんだんだよ俺は暇人要因か。
いらいらした。
なにそれ。

お互いだけがいればいいみたいな関係。

俺が話し掛けても笑わないくせに
俺がいてもいないのと同じみたいに
あの人にばかりくっついてべたべたして
あの人にあんなに愛されて守られて当前の顔して
なんなのあいつ。なんなのあいつら。二人の世界に浸っちゃって気持ち悪いんだよ。

「白雨は愛想がなくてごめんな。」
なんであんたが謝るんだよ。
「遥ここにいたんだ?明日のレポート持ってきたよ。」
なんでその人しか見てないんだよ。俺もいるんだぞ。

『虚像6』

「なあ、あいつとなんの話したの?」
刀弥さんににカフェで尋ねた。
「あいつって?」
「白雨だよ!」
「ああ、彼が以前ここに一緒に来ていた人の話だよ。
 遥くんって言ってね。確か白雨くんの5つ上の子だったかな。」
「ふうん。」
どーやら白雨の言ってたことに嘘はないらしい。
「そいつ知ってる。
 背高くていっつも白雨と一緒にいた。」
「そうだね。仲が良かったからね。」
「ふん。」
「キミは白雨くんが嫌いなの?」
「白雨に聞いたのか?」
「ううん。今の君の態度がそう見えたから。」
「嫌いだよ!大っ嫌え!死ねばいいのに!」
「どうしてそんなに嫌いなの?」
「むかつくから。」
「なにがむかつくの?」
「全部だ!遥ってやつに守られて甘ちょろく生きてるのとか
 世界は遥ってやつだけがいればいいみたいな雰囲気がむかつくんだよ。」
「そういうところはあったかもね。
 けれど今は彼、ひとりだけれど?」
「だから文句言いにいけるし。
 嫌いだって言ってやった。」
「嫌い・・・ねえ。
 彼は最初からあんな環境にあったわけじゃないよ。」
「どんなんでも生ぬるい生き方してきたに違いねえよ。」
「決め付けはよくないよ。
 彼は彼なりに辛い目にあっているよ。」
「はっ。んなわけあるか。」
「不幸自慢なんかしたって意味はないから私はなにも言わない。
 同じ目にあったってつらいと思う度合いは人によって違うもんだからね。
 ただね、少し、彼に心を開いてみれば見えるものがあるんじゃないかな。」
「はっ!俺を無視して心閉ざしてんのはあいつらだ!」
「あいつらじゃなくなったから文句を言いに行けたんでしょう?」
「むっ。」
「キミが辛い時期にたまたま彼らが幸せに見えただけだと私は思いますよ。」
「っだよそれ。」
「羨ましかったですよね。」
「・・・・」
「今の彼は幸せそうに見えますか?
 今の彼でも死んでしまえばいいと思うほど羨ましいですか?」
「・・・・」
「今そこにある彼を今そこにいる君自身の目で見る勇気が必要なんじゃないですか?」
「ふん。」

昔、事故で利き腕の神経を切った。
ピアニストの母は俺をピアニストにすることを目標に俺を育てていた。
右手の神経を失って左手ですべてができるようになるまで誰も助けてくれなかった。
とりあえず音楽にたずさわる道を見つけてくるように言われてサマースクールへ放りこまれただけ。
根本、右手がだめな俺にそんなもの見つけらんなかったけど。
母親も俺をあきらめたけど俺は別のもの見つけたからいい。

不幸自慢ね。
どのレベルの不幸なんだか。
俺には誰もいなかったのに。
白雨にいちいち過保護な遥。
遥をいちいち慕いまくる白雨。
気持ち悪くて、そう、俺には何もなかったから、そう、羨ましかったんだな。

んなこと解ってる。
遥がいない白雨の遥に俺がなれねーかなってちょっとだけ思ったのも本当だ。

確かに白雨は悪くない。
俺を覚えてないのなんてあん時のあいつからは予想できたことだし。
嫌いだってわざわざ言いに行ったのだって俺のこと知って欲しかったんだ。
なのに、「んじゃ俺も。」嫌いと返されてむかついたし腹が立ったし嫌だった。
だってあいつ俺が嫌いって言ったからオウム返ししただけで理由なんかなしに言ったんだ。

俺のこと知りもしないで。
俺のこと知ろうともしないんだ。
だってあいつ何度むかつくこと言ってやっても
俺のこと相手にしないどころかいまだに俺の名前も知らないんだ。

構われたい、むかつく。
ちゃんと話したい、腹が立つ。

複雑な思いのまま居るだろうなと思って書斎に行ったらやっぱり居た。
こいつはここに今はひとりで居る。
なんであの人いなんだろうなあ。
いっつもいっしょにいたのにな。

一瞬俺に気付いて視線をくれてまた本を読んでる。
いっつもいっつも本ばっか。
あの人と本と自分の世界。
それがたぶん白雨の世界。

ふと白雨を見れば天井近いところにある本を
梯子を使ってとろうとしてるみたいであと少しで手が届かない。
遠いところにいたみたいな白雨が俺の手が軽く届きそうなとこも届かないなんて。

「代わる。どいて。」
白雨に代わって本を取ってやる。
「ありがと。」
その言葉に息がとまった。
なんだよ普通の言葉言えるんじゃん。
俺にだってそういうこと言えるんじゃん。
なんだよ本とってやるだけでよかったのかよ。

つぶやきは思わず声になってこぼれていたみたいで
白雨がなんども「なに?」と聞いた。
白雨がなんども「なに?」と聞くたびに
近づいてくる顔とか声とか香りとかが甘くて
気が付いたら唇が触れそうなほどの至近距離。

あ。唇が触れる。と思った。
触れたい。
触れられたい。
白雨が欲しい。

遠い記憶がよみがえる。

 「白雨、おまえが可愛くて仕方ないんだ。
  愛しいし俺だけ見てろって言いたいけど
  もっとたくさんのすげえもんいっぱい見て見たうえで
  俺を選んで。俺を見て。俺だけのものでいてほしいんだ。」
ss.png

「・・・あ」
あと少しの所で白雨の動きが止まった。
「逃げてくれないと唇触れるんだけど?」
まじかよ。寸止めかよ。つーか、
「嫌いならちゃんと逃げてくれ。」
とか言いやがんの。
嫌いじゃなかったから逃げなかったんだろうが!察しろよ!


「はあ。」
刀祢さん。解ったよ。
このいらいらのわけとかほんとの気持ちとかモロモロ。

俺もたぶん白雨が欲しい。
なんか雰囲気変わっちゃって
遥がいなかったらこんなに笑わないのかよとか思ったけど
弘夢とは普通に遥じゃないのに普通に笑ってんのとか見たら
俺にも笑ってくれんじゃないかとかも思っちゃったよ。先に嫌い宣言しといてなんだけど。

白雨が欲しい。


越乃はまさに台風のようだった。
ばーっと現れてどどーっと去っていった。
3日間。退屈しなかったしそれなりに楽しかった。

「なんかさ、うん。来てくれてありがとう。
 楽しかった。」
「そんなこと言うと接吻しますよ。
 女の子紹介してくれって言われた時は驚きました。」
「3番目の子って言っただけだよ。
 どれだよ!だろ」
「俺はね先輩。」
「ん?」
「やっぱ女の子のたおやかさというか
 小さくて可愛らしいのがいいなあって
 先輩がそう思ってくれて上杉を振ってくれるの期待していたんですが。」
「なにそれ。」
「それでね、女の子にふらふら~っと言った先輩を
 今度は俺が取り戻す心つもりだったんですよ。」
「小さくて可愛い女の子にふらふら~と行った俺を
 俺より頭ひとつぶんでかいおまえが取り戻すのか?」
「できそうじゃないですか。俺なら。」
「俺はおまえのその自信は尊敬するよ。」
「ありがとうございます。先輩、」
「なんだ?」
「帰国したら上杉に
 俺と先輩が愛をはぐくんだ話してもいいですか?」
「普通にだめだろ。はぐくんだ覚えもないし。
 そうだな逢いたいって伝えといて。」
「うわあ。残忍な人ですね俺にそれを頼むんですか。
 お断りします。」
「ははっ。んじゃ気を付けて帰るんだぞ。
 また、日本で、学園で、な。」
「たまに優しいのがむかつきます。大好きです。」
頬にキスされたけどまあ、許すよ。


『虚像5』


宿舎の書斎でソファに掛けて本を読んでいたらあいつが来た。
今日はどうしたことか何にも言わないし睨んでもいない。
まあ、どうでもいいけど。

気がついたら俺の隣に腰掛けてぼんやりと書斎の棚を見つけている。
俺は無視して読んでいた本へ集中する。
無駄にこいつに構っても時間の無駄だ。

読み終えてもまだこいつはそのままだった。
なんなんだいったい。
続きの本を探して見つけたのは天井ギリギリの棚。
貨車がついていて360度すべてに掛けられる梯子を合わせて
登ってはみたもののいまいち届きそうに無い。と、思えば、
「代わる。どいて。」
とこいつが登ってきた。
まあ、この身長だ。余裕だよな。
「はい。」
「ありがと。」
「っ!!!!」
「なに?」
「別に。」
変な奴。けどなんか今日は敵意を感じない。
「・・・だ」
「え?」
「おまえなんか嫌いなんだ。」
「ああそう。」
今日は棘が感じられない。
それでも言われてることは同じだけど。
「・・・で」
聞こえないっての。
なにが言いたいんだ。
顔を近づけると驚いたように目を見張って固まった。
「なに?」
「・・・・・・・・・・・・・」
口はぱくぱくしてんだけど声が出てない。
読唇術でもしてくれってか。
って近づいてああこの距離。
「逃げてくれないと唇触れるんだけど?」
唇と唇が触れそうな距離で言ってみる。
こいつの心理ってほんとつかめない。
「本、とってくれてありがと。
 嫌いならちゃんと逃げてくれ。」

嫌い嫌いと言われてばっかだからむかついた
わけじゃなくてたぶん俺は

上杉が恋しい。
逢いたい触れたい顔が見たい。
 

構うなよ。
脳裏にも浮かべんなよ。
心の片隅にも映すなよ。

とりあえずおまえは俺から離れてくれ。


『虚像4』


「月代先輩!」
驚いた。いや、いても不思議はないんだけど。
「なんです?そんなに驚きました?」
「あ、うん。まあ。なんで?」
「先輩がここにいるって俺のスネークが教えてくれたんで。」
「スネークって・・・」
「うふふ。結構あちこちにいるんですよ。俺の情報屋。」
「ああそう。怖いな。」
「情報は武器ですよ。先輩。」
「かもな。なに?通うのここ?」
「俺も忙しいんでギリギリ3日ほど。
 先輩一緒に寝ましょうね。」
「寝ないよ。」
越乃がなんか此花っぽい。
そういえば最近仲良かったし。
越乃ってほんと同級とは合わないな。

「なんです?俺の顔に穴でも空けたいんですか?」
「いや。いつ来たの?」
「さっき手続き済まして来ました。」
「どこのクラス?」
「俺は頭いいし語学も堪能なので芸術クラスでバイオリン習います。
 このとおり顔もいいですしね。」
「・・・ああそう。」
「そっけないですよ!つっこんでくださいよ!
 夜もひとつ枕の下弦の月のもとで!」
「・・・ごめんおまえには突っ込めない。」
「なんでですか!」
「俺の力量が足りない。」
「じゃあ挨拶のキスでもひとつ!」
「しねえよ!」
「突っ込んだ!突っ込まれましたよ俺!」
「・・・疲れたよパトラッシュ。
 くだらないこと言ってないで宿舎行くか。
 今日のやること終わったし解らないことあれば教えるけど。」
「はい。ありがとうございます。」

宿舎のエントランスで視線を感じて見上げたらあいつがいた。
すげえ睨んでる感じでしばらく見てから部屋に入っていった。
「誰?」
「ここにいるやつ。よく知らねえ。」
「ふうん。
 先輩、ここで騒いで良い部屋ないですかね?」
「騒いで?どうだろ刀弥さんに聞いてみるけど。」
「刀弥・・・ああここの宿舎の管理人兼料理人ですか。
 あの人今年もいるんですか?」
「うん。知ってる?」
「それくらいしか知らないですよ。」

刀弥さんに聞いたところ
元々エレピアン室として使っていた部屋が防音らしい。
「で、なに騒ぐ気?」
「もちろん、俺の歓迎会!」
「ああそう・・・」
「俺企画のサプライズパーティ!」
「言っちゃったらサプライズじゃないし。」
「女の子達も呼んじゃったvブロンド栗色どちらが好きですか?」
「黒髪。」
「俺・・・染めようかな。」
「女の子の話じゃなかったのかよ。」

越乃はほんといろいろ手が回るなあと思った。
本人が言うだけあってそれほどのサプライズパーティだった。
ただの誕生日パーティとかそんな感じじゃなくてちゃんと司会もいて
立食だけれどりっぱで贅沢なバイキングなんかも用意されていた。
しかし、いったい何人呼んだんだ?
あまり顔を合わすことの無かった他の宿舎生も呼ばれているらしく
見渡せば刀弥さんの顔もあってワインが入ったグラスを掲げてみせた。

女の子に囲まれてる越乃を横目に
少し静けさが欲しくてベランダに出た。

越乃は身長も後姿も昔間違えたことがあったけど遥を思わせる。
いま賑やかに和の中心になっているのもそんな感じだ。
久々にこんな場所であったかいものもらった気がした。

「今度はあいつ?」
「俺の知り合いを誰も彼もそんな目で見てんなよ。」
「あんたが否定、しないからじゃん!」
「おまえ面倒くさい。」
とうとう言ってしまった。
もうほんと面倒くさいんだ。
「なんでだよ!どこがだよ!」
「嫌いって言うくせに追っかけてくるとこと
 勝手な妄想膨らませて押し付けてくるとこと
 見なきゃいいのににらんでくるとこ、の3点。」
「・・・あんたが俺のこと嫌いって言うから。」
「なんだそれ?先に言ったのそっちじゃん。」
部屋に戻ろうとしたら丁度越乃が来た。

「あれ?やっぱ知り合い?」
「越乃、」
「はい?」
「右から3番目の子、紹介してよ。」
「ええっ!」

俺はおまえには興味ないんだ。
こんなとこに知り合いなんか作る気はない。



 











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BrownBetty 
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