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ひな日記

知りたくなかった、知りたかったこと、知っちゃった。
うん、予感はしてた。
でも、覚悟してなかった。
もっと幸せな片想いをしていたかったから。

遙さんがマンションのエントランスロビーにある
奥の方のソファに腰掛けて携帯で電話してた。
あんまりにも穏やかで優しい表情だったから
すごく気になってちょっとだけ近づいてみた。

「うん。大丈夫。
 俺が明良を迎えに行くから待ってろな。」
遙さんの声がとても優しく「明良」って呼んだ。
なんだかドキドキした。胸がギュって軋んだ。

携帯を切って立ち上がった遙さんは私を見ていつもの声で
「こんにちは。」
と言った。
「こんにちは。電話ですか?」
「うん。日課でね。」
「日課?」
「そう。オトコもこういうマメさは大事なのさ。」
マメな遙さんってイメージつかないけど、
それだけ大事にしてる相手ってことよね。
「恋人、なんですね。」
恋人、いるんですか?
「そうだよ。」
「大事にされてるんですね。」
大事な人、なんですか?
「大事、だなあ。大事な人がいるっていいことだよ。」

あっさり認める遙さん。
あっさり言い切る遙さん。
遙さんらしくて素敵だなって思うけど
羨ましくて胸が張り裂けそうになるよ。
いいなあ。遙さんに想われる人。いいなあ。

「どんな人なんですか?」
「ん?恋人?」
「はい。」
「どんな人、かあ。必要な人だよ俺にとって。俺の人生にとって。とってもね。」
遙さんの人生に必要な人なんだって。
そこまで絶対的に言われたらたまんないよ。
「いいですね。そういうの。」
「ありがとう。ひなさんは恋してる?」
してます。貴方に。
「うん。でも片想いなんですよ。」
「そうかー。それでもしてないよりはいいよ。
 想ってればいつかは叶うかもしんないしな。」
想ってれば叶いますか?貴方を想っていてもいいですか?
「そうですね。それじゃ、また。」
「うん。またね。」

エレベーターの中で涙が滲んだ。
失恋決定。遙さんには大事な恋人いるんだって。
そんなの知っちゃったってこの片想いが消えるわけない。

笑顔がすき。声がすき。優しさがすき。
これからも逢うたびに絶対すきになるって解ってる。
片想いでも、人のものでも、すきなんだから仕方ないよ。

寂しい。切ない。苦しい。
でもスキ、すき、好き。

白雨を想った。
あんなに大事にされてるみたいな白雨。
遙さんに恋人ができたとき寂しくなかったかな?
切なくなかったかな?苦しくなかったかな?ねえ、白雨。


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楠木日記

今朝、目が覚めたら目元から水がこぼれた。涙だった。
懐かしい夢を見た。ありし日の遙さんの夢だった。
月代が買出しかなんかに行ってて
俺と遙さんで留守番してた時の
俺と遙さんとで交わした会話。
今頃思い出すなんて不思議だな。
ここに書きとめて置いて次に月代に逢った時に話そうと思う。

「楠木君。」
「はい。」
「君は白雨に怒られたことはある?」
「ある、と、思います。」
怒鳴られて、他の誰かだったら殴ってた。と言われた。
「そうか、あるか。
 君は白雨にとって大事な存在なんだね。」
そう言って遥さんは笑った。
「大事な?」
「そう。白雨ってさ、小学校にあがるまでただの一度も
 怒ったことがないんだ。怒るって感情が解らなかったと言うべきか。」
怒ったこと、が、ない?
感情が、解ら、ない?
俺は、言い返したりはしなかったけど、
園の理不尽な先輩には正直腹が立っていた。
自分の不甲斐無さには今でも苛立っている。
怒ったことがない、とは、どういう意味だ?

「そ、れは感、情、の」
ことであって他人には解らないことなんじゃないだろうか?と
続けようとした言葉を察したように遥さんは小さく首を振った。
「あいつは怒るより先に委縮することを覚えてしまったんだよな。
 それが身を守る方法だったんだからしかたなかったのかもしれない。
 怒られることはあっても怒ることは知らない。ただ怒られないように、
 萎縮して、人と接することから上手く逃げる術をあみだした子供だったよ。
 小学校にあがるまで。俺と再会するまで。ずっと、ね。」
身を守る術。と聞いてなるほど俺も同じだったな、と思った。
誰かに、怒られることはなかったけれど、構われることもなかった。

「遥さんと、再会、するま、で?」
「うん。初めて逢った時からちっせえくせに怯えて生きてんなって思った。
 再会してその理由が解った。こいつ怒ったことねーんだなって。」
「怒った、こと」
「何しても何されても怒んねーの。あんまりに怒んねーから
 怒れ!って怒鳴ったら、ごめんなさい。だって。重症だろ?」
いきなり怒れと言われても怒れるものじゃないと思うけど
なんかそう言うこと言っちゃう遥さんは遥さんらしいと思う。

「どーしよーもねーからひとつひとつ教え込んだね。俺は。
 こういう時は怒れ。こういう時は怒鳴れ。ひとつひとつだぞ。」
「ふふ。」
想像したらなんて滑稽で暖かい光景なんだろう。
「んで、仕上げはマジで白雨が嫌がることしたわけ、
 怒ったら卒業って濃厚キッスをさあ、」
「の・・」
「したらさ、遥!って怖い顔して怒鳴った後、
 ありがとうってちょっと泣いてやんの。ったくよー。」
「ふふ。」
やっぱり暖かくて優しい光景しか浮かばない。

「遥の教え通り怒ってたら相当短気な人間になっちゃうよ。
 ってな。いーんだよ。今まで怒らなかった分怒ればさー。
 白雨も、楠木君も、だ。」
え?俺?そこに突然俺の名前が挙がったからびっくりした。
「君も怒るべき時に怒ってないって感じがするよ。
 何にでもかんでも怒る必要はないけど、理不尽な時は怒るんだぞ。
 じゃないと誰にも何にも伝わらない。嬉しいことも悲しいことも伝えなきゃだ。」
遥さんはやっぱりすごい。
大きくて尊敬できる人生の先輩だ。
「はい。」
「だからさ、俺が怒れない時、白雨がバカやったら、
 怒ってやってくれよな、楠木君。」
「はい。」

今思うと未来を案じたような言葉だった。

ひな日記

3年生になってもう5月。
今年の短かったゴールデンウイークも終わっちゃった。

ケーキ屋さん散策仲間の祥子が降りたことない駅前に
美味しいケーキ屋さんできたから行こうって言うから寄り道した。
がっつり生クリームって気分じゃなかったからイチゴのムースにした。
美味しかったけどちょっと高めだったかなぁって思い返しながら電車に乗った。

そしたら見覚えのある背中。
そっか白雨ってコッチ方面の中学だっけ。
私立の頭が良くてちょっとお金持ちな子が通う中学。
白雨って遙さんと二人暮らしって言ってたのにすごいよね。

折角だから声、掛けたいんだけど、なんか白雨ってタダでさえ話しかけにくいのに
いつものマンションエントランスじゃないから余計話しかけにくい感じがして躊躇する。
躊躇して見守ってたら、ん?んんん?私以外にも白雨を追ってる人物に気が付いた。

赤い髪の背の高い男。
白雨と同じ制服着てる。
けど、首もとの学年を示す数字がⅡってなってる。
背が高いけど1こ下の学年なんだろうことは解った。
けどなんで声掛けないんだろう?こっそり見てるだけなんだろう?
あれ?白雨が2つも手前の駅で降りちゃった。後輩君も追って降りた。
あたしも・・・なんだろう、気になってつられて降りちゃった。もう追うしかない。

白雨を追う白雨の後輩。白雨の後輩をさらに追うあたし。
白雨はどんどんひとけのない方へ歩いていく。そんで誰もいないところで振り向いた。
「声かけてくれたらいくらでも構うから、こういうことすんな。」

後輩君の尾行に気付いていたみたいで白雨が後輩君に言った。
あたしはちょうど角に隠れられたからその声だけ聞いた。
「あんた秘密多いんだもん。」
後輩の癖にあんたとか言っちゃってるよ後輩君。
「なにが知りたいの?」
「全部。」
「んなの無理だよ。
 自分自身自分のことだって全部解っちゃいないんだから。
 おまえだってそうだろ?」
「・・・そうだね。」
「んじゃ自分ちのでっかい家に帰れ。」
「白雨がキスしてくれたら帰る。」
「こんなとこでできっかばーか。」
こんなとこじゃなきゃできんの?って心で突っ込みつつ
それよりもなによりもキスって何?白雨ってそっち系の人?
いや、うん、違和感全然ないけど、納得もできなくもないんだけど。

「これかしてやるから今日は帰れ。」
「まじで?うん。帰るよ。また明日ね白雨。」
「ああ。」
後輩君はそのまま真っ直ぐ進んで帰ってみたいで白雨だけが折り返して歩いてきた。

「で、あんたはなんでついて来たの?」
ばれてたのね。ごもっとも。
「ごめん。ほんとなんとなく。」
「ぷっ。」
「え?」
「だってなんだよ、ほんとなんとなくって。」
「う~ん。白雨見かけて声掛けそびれてたらさっきの人に気付いちゃって、
 んでほんとなんかなんとなく。感じ悪いよねごめん。」
「いいよ。帰りなんだったら一緒に帰る?」
「いいの?」
「だって帰り道同じじゃん。
 わざわざ時間ずらして帰る必要ないじゃん。」
「うん。」
不思議。白雨を一緒に道歩いて電車乗ってる。
「あのね、」
つり革につかまって本を読んでいた白雨が私を見る。
「さっきの後輩君に何、かしてあげたの?」
「ヒミツ。」
「ヒミツかあ。あのね、じゃあ」
「あんたってほんと怖いもの知らずというか
 すがすがしいほど躊躇なくずばずば聞いてくるよな。」
自覚はありすぎるほどある。今だって、
「そういう関係じゃないからそこは否定しとく。
 信じるか信じないかはあんたの自由。」
「信じる。」
恋人ってカンジじゃなかったし。

正しい2つ先の自宅周辺駅についたから降りた。
白雨が私の歩幅に合わせて歩いてくれてること、
私を歩道沿いに、自分は車道沿いに歩いてくれてること、
気付いてちょっと感動した。白雨って何気にフェミニストなのかもしれない。

「それじゃ、」
「あの、」
「なに?」
「さっきの人のこと遙さん、」
知ってるの?って聞こうとしてまたずかずかしかけてることに気付く。
「ごめんなんでもない。」
「・・・知んない。あのさ、できれば言わないで。」
「言わない!」
「ぷっ。あんたほんと、」
「えっ!?」
「いや、うん。あのさ、さっきのあいつ、
 もしこの周辺で見かけることがあっても無視して。」
「うん。」
たぶん、白雨は後輩君に自宅を知らせたくないんだろうってことは
さっきのアレでなんとなく解った。
「白雨は2つ前の駅に住んでるんだよね。」
「さっしがいいのな。ま、そんなところ。嘘ついてとは言わないから無視してて。」
「任せて!」
「恩に着るよひなさん。」
白雨が笑った。むかつくくらい可愛いの。
「それじゃ。」
「さようなら。遙さんによろしく。
 もう帰ってる?」
「・・・ううん。まだみたい。じゃ。」
一瞬白雨が戸惑った顔。その意味は3時間後に解った。

宿題の合間に聞いてたラジオが今日は綺麗な星空ですって言ったから
ベランダに出て夜空を仰ごうとしたら目下にまたあの時の女の人と遙さん。

胸が痛い。

上杉日記

エントランスから2階の休憩席に並んで座った。
辺りに人影はなくて大きな高い窓から舞い散る桜が見える。
「どうして俺を待って?」
「あーうん。ごめんな突然。」
「それは構わない。驚いたけれど嬉しかったから。」
「んー。なんで上杉は想いを打ち明けてくれたのかなって。
 んで俺はやっぱりちゃんと返事するべきなんじゃないかなって。
 そう思って。」
途端に不安が募る。
嫌な予感がじわじわ湧いてくる。
「返事はいらない。とか、今までどおりで。って言葉に甘えちゃったけど
 俺は、」
「待って。」
「上杉?」
「済まない。少し待ってくれないか。」
「・・・。」
目を閉じて浅く息を吸い込む。
覚悟を決めなければいけないのだろうか。
きちんと振られて距離が出来てしまう覚悟が。
「どうしてわざわざそんなことを言うのか考えると、怖いんだ。」
「・・・俺は上杉の気持ちを知った。それを知らないふりはできないよ。」
絶望的だ。でもこういう月代だから好きになったのだとも思う。
勝手に告白しておいて忘れたふりしていままでどおりなんて都合が良すぎる。
俺は自分の気持ちを月代に押しつけただけでその責任を取る覚悟がなかった。
「解った。」
本当は解ってなどいない。
明日からどうなるのだろう。
月代はどう接してくるのだろう。
今からどんな返事をくれるのだろう。

本当は怖くてたまらない。
耳をふさいで逃げ出したい。

「んなカオ、しないでよ。」
月代が俺の顔を覗き込んで言った。
「俺、上杉の気持ち嬉しかったよ。
 でも俺、自分が恋愛とかまだ考えらんないんだ。
 相手が誰であっても恋愛って他人ごとにしか思えなくて、」
少し予想とは違う月代の言葉。
「でもいつまでもそんなんじゃダメだなって。
 失ったもんから逃げてたら手に入るわけないよなって。
 だから逢いに来た。」
月代が真っ直ぐに俺を見た。
ごめんな、気持に答えられない。そんな視線ではない。
もちろん俺の気持ちに応えられるとは思わない視線。
「月代?」
「なあ、上杉、」
顔をあげて月代の顔を見る。
春休みを挟んで久々に見る顔。見たかった顔。逢いたかった顔。
今、告白したことを後悔しているとしても時があの瞬間に戻ったなら
やはり俺は同じように同じ言葉を告げて同じ後悔を繰り返すのだろう。

「俺の中でも気持ちは動いたんだと思う。
 上杉のこといつもより気になるし
 寒そうにしてるとなんかしてやりたいって思うし
 いままでどおりなんて意識してる時点で今までどおりじゃねーだろ?」
泣きそうだ。
改めてはっきり振られるのは怖い。
俺は月代と友人にはなれたつもりだけれど
かといって水品や古泉ほど親しい友人でもない。
それなのにその立場さえ失ってしまうのは辛い。
恋人になれることなんて望んでいないからせめて、
「友人でもいられないのか?」
「え?」
「恋人になりたいわけじゃないんだ。」
「え?」
「頼むから突き放すような」
ことは言わないで欲しい。と言い掛けたら、
俺の肩に月代の額がコツンとぶつかった。
「言うかよ。なんで突き放すんだよ、逆だろ。」
「逆?」
「上杉の気持ちを知って受け止めた上で、ちゃんと上杉のこと
 見て、知ろう、って思ったの。俺は。
 上杉が勇気出してくれたことを、
 なかったことにはしたくないの。」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
月代が何を言っているのか解らなかった。
「こと・・わられるのか、と思った。
 はっきり拒絶されるのかと、思った。」
「断る理由がないから、答え延長させてもらおうかと思ったんだけど
 気持ち知った上でいまのままを上杉が望むんなら俺はそれでいいよ。」
月代が額を離して言った。
少し怒っている?
「それだけ言いたかったんだ。」
月代がじっと俺を見る。
「え?」
「上杉はなんか俺に言うことある?」
あ、待っててくれた、のか?
「あ、」
「うん。」
「嘘を、ついた。」
自分にも、月代にも、嘘をついていた。
「本当はもっと近づきたいんだ。誰よりも。
 友人以上の恋人になりたい。」
「うん。騙された方が悪いよな今日は。」
「え?」
「エープリルフールだもんな。」
「だまさ・・」
「俺は嘘付いてないから勘ぐるなよ。」
「ああ。」
「桜綺麗だねー。」
月代は立ちあがって窓際に立った。
月代の背後で桜色の花びらが風に舞いあがった。
「ああ、綺麗だ。」
月代の存在も、散りゆく花びらも、月代の考えも言葉も、
全てが眩しい程に美しい。
それを欲しいと望む俺の想いは浅ましいと思うのに
そんなことはないと月代の存在が否定する。
 
解っている。
彼に俺は似合わない。
解っている。
彼に俺は必要ない。

突き放されれば落ち込むくせに
引き寄せられれば泣きたくなる。
 
今日の月代が明日になって
「俺、昨日、上杉になんか逢ってないけど?」
なんて言ったなら、
エイプリルフールが見せた春の幻だったとしたら、
残酷な嘘だ。と、俺は落胆するのだろうか?それとも、安心するのだろうか?


******
まさかこんな展開になるとは。
次は誰かなあ。

月代日記

俺はサイテーだ。
上杉がこんな俺のどこを見て
好きだとか言ってくれたのかは解んねえ。
そんな価値なんかないと思うしそんな俺が
上杉を傷つけたとしたら傲慢もいいとこだ。

生田に恋の相談を受けた。
それから告白の予行練習に付き合った。
叶わなかった恋を持ち帰った生田と並んで
ラーメンを湯気にまみれてひたすら食った。

生田はすげえ。
生田側で生田の恋を感じたから
告白をする勇気ってすげえって思った。
告白してくれた上杉もすげえって思った。

生田が言った。
「言うからには何かが動くと思うんだよ。
 振られるにしても俺の気持は伝わるだろ?
 伝えることで残る思いってあるって思うんだ。」
って。目からうろこなんてもんじゃなかった。

上杉の告白の意味、ほんと解ってなかった、俺。
上杉は言うから。
「すまない。」って。
「返事はいいんだ。」って。
「いままでどおりでいてくれると嬉しい。」って。
俺はその言葉どおりにいままでどおりに接してた。

いままでどおりを望むならなんで告白するんだよ。
俺はサイテーだ。
そこ違うだろ。何かあるからだろ。
そんだけ勇気出したことに結果はいらないって。んなわけねーだろ。
俺は逃げてた。つか、いっつも逃げてばっかだ。真剣に何かに向かうことから。

それを遥を失ったことや
遥の恋を失ったことで
失うことに恐れが生まれたことにして
失うくらいなら始めからいらないって
そう言うのは簡単で卑怯だ。でも、俺はどっかでそう思ってた。

失うのはもういい。
永遠の恋なんかなかったんだ。
俺の居場所なんかいつかは消えるんだ。
って。とんだ被害妄想だよ。どんだけ弱いんだよ俺。

生きてんのに。
生きてんなら前向いて生きなきゃじゃんか。
失うもん取り戻すくらいの覚悟もなくて逃げてんじゃねえよ俺。

上杉はあんな苦しそうに想いを告げてくれた。
んで、たぶん、俺を気遣って、いままでどおりでいいって言う逃げ道を
俺にくれた。
俺が駄目だから。
俺が困ったから。
こういうのは男同士だからとかそういうの関係ない。
むしろ、だからこそ、上杉の勇気と覚悟を味わうべきだった。
恋愛に対する感覚がごっそり欠けてた俺はただ戸惑って「ごめん」って言った。
いつかの未来なんて夢空言だから俺の夢は大恋愛なんてふざけて言ったりしたけど嘘じゃない。

上杉に逢いに行こう。
そんでちゃんと俺の言葉を告げよう。

ん、で。春休みの今。上杉が通ってる塾の前にいる。
以前図書室で塾に通ってる話は聞いてた。春期講習も出るって。
そろそろ昼だし昼休憩には飲み物くらい買いに出てくるといいな。
だって今日から4月だってのにかなり寒い。昨日は暖かかったのに三寒四温?
しかも風が強いのなんの。春一番?折角咲いた桜ぼわって散って目の前が桜霞。
ぴんくの視界の先に現れた上杉はきょとんとしたカオして「月代?」って言った。

「うん。月代です。逢えてよかった。」
「俺に?」
「うん。待ってた。」
つったらなんか上杉が泣きそうなカオした。
ゴメンナサイ。ナカナイデ。ゴメンナサイ。
「ちょっといい?」
「ちょっとじゃなくても、いい。」
オレガナキソウ。

「久し振り。」
「ああ。」
「んーと・・」
「こないだ、」
「え?」
いきなり待ってた俺に上杉が話し始めた。
「ほいわいと、」
「え?」
「ほいわい・・ほわいとでーに、」
「うん?」
上杉のほうが積極的に話してくれて戸惑う。
「これをもらって、」
ああ、そうだった。
ホワイトデーだったっけ?日差しは暖かいのに風は冷たい日。
なのにマフラーもしてない上杉の後姿を見つけた。しかも薄着。
なんか見てる方が寒くて思わず俺の巻いてたマフラー上杉の首に巻いた。
絶対遠慮しそうだったから有無を言わさず「風邪引くなよ!」ってそのまま帰宅したっけ。
「その前にも同じように巻いてくれた。」
って上杉が言って。バレンタインデーに冷え切ってマンション前にいた上杉に巻いたこと思い出した。
上杉ってなんかいっつも寒そうってか冷えてるんだもん。平気だっつっても見てる方が平気じゃない。

「上杉寒そうだったからなー。」
とだけ告げた。
「うん。解ってる。」
「え?」
「翌日が終業式だったから返しそびれてしまった。
 暖かかった。ありがとう。」
上杉が鞄からそのマフラーを取り出した。
え?解ってる?てか、
「なんで持ってんの?俺来ること知らなかったのに。」
「なんとなくいつも持ち歩いていた。」
「あげるつもりで巻いたから、返さなくていいよ。」
「え?」
「そう言えば今、昼休憩だよな?
 食べる時間なくなるよ。俺終わるの待ってるから
 塾が終わった後少し時間くんない?」
「そのためにわざわざ?」
「んー。
 携帯で連絡しようと思ったけど授業中じゃん?
 何時頃に終わるのかも聞いておきたかったし。」
「昼は・・いい。」
「上杉?」
「今日は昼まででいい。」
「まででいいって・・。」
「どうせこのあとは模試の答え合わせとその復習だけだから。
 春期講習も今日までだから提出物もないから。」
それって俺のせいで上杉がさぼるってことじゃねーの?
そんなことさせるために来たんじゃないんだけどな。
「上杉、それはちょっと・・・」
「全科目満点だった俺が、同じ内容の模試の復習に、
 時間をかけて付き合う必要あると思うか?」
ちょ・・・上杉がかっこいい。
かっこいいこと言ってるのに顔が真っ赤だ。
かっこいいこと言ったのに言って照れてんの。
「ぷっ・・・はははっはっ。
 上杉すげーかっこいい。」
「・・・だから昼まででいいんだ。このまま帰る。」
「うん。」
いっか。
上杉なりの気遣いなんだろうな。
普段あんなこと言わないくせにな。
上杉が持ったままの俺のマフラーを取って上杉に巻いた。
「んじゃ、行こっか。」
「これ、」
「いらなかったら、家に帰ってから捨てて。
 今は寒そうだから巻いてて?」
「・・・捨てたりなんか」
「うん。もらってやって?」
「・・・ありがとう。」
「うへへ。」

昼だったし、近場にあった喫茶店に入った。
上杉はグラタン、俺はナポリタン。
上杉はダージリン、俺はカフェラテ。
外でこうして上杉と食べることないから
上杉がグラタン食べるとこ初めて見た。
好きなのかな。クリーム系。
水品はぜったいハンバーグ注文するよなぁ。
しかもデミグラスよりケチャップ系の甘いの。
で、バターソテーの添えられたニンジンをさ、
嫌いだからってこっそり古泉の皿に乗せて怒られんの。
んで古泉を諦めた水品のニンジンが結局俺の皿に乗んの。
「上杉は、好き嫌いとかある?」
「俺、は、特に、ない。と思う。」
「いいことだね。」
「月代は、あるか?」
「油漬けのブラックオリーブは苦手かな。
 ピザに乗ってるのとかは平気だけど丸々1個とかはね。」
「丸々1個・・食べたことがないな。」
「そうやって食べるものじゃないよね。たぶん。」
店を出たらやっぱり吹き付ける風は冷たくて、
「おおっ。」って言ったら上杉が
「美術館のロビー風よけになる、から。」って美術館を指差した。
このあとどこで話すか考えててくれたのかなぁって思うとなんか、
嬉しかったしありがたかった。上杉はいつもいろんなこと考えてる。


*****
日付が間に合わなかった。
のちほど修正に参ります@管理人。 
後半は本日上杉視点で。

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