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410.png
例の用事で理事室を訪ねてから
できるだけ人に見つかんねーように裏を通って戻る途中、
告白されているらしい上杉と告白してるらしい1女生徒を見た。

「上杉モテんだろ?
 ヤキモチとか妬かねーの?」
とか水品が言ってたのを思い出した。

妬いてどうなるもんでもないしな。
上杉がモテんのもわかるしな。

そんなこと言ってられるのも、
上杉は断ってくれるんだろうと思えるからだ。

断らなかったら、承諾したら、妬くに決まってる。

「俺には想う人がいる。すまない。」

聞き耳立てる気はなかったけど上杉の声が聞こえた。
話は早く終わりそうだしここ通らなきゃ戻れないから待つ。

「どんな人?」

意外にもまだ話は続きそうだ。
自分の好きな人の好きな人って気になるもんなんだな。
そういや遥に彼女できたとき俺もちょっと妬いたし気になったもんな。
なんてことを考えながら腕を頭の後ろで組んで後ろの壁にもたれた。

「ずっと片思いだった。
 今も、俺の方が想っていると思うし、
 それが俺の誇りで生きがいでもある。
 そう思わせてくれる人、だ。」

うわあ。
ちょっと、上杉。

「随分な思い入れね。」
「ああ。」
「それだけの価値がある相手ってこと?」
「ああ。もちろんだ。」
「・・・ぷっ。」
「?」
「真面目な顔してそこまで断言されると
 あきらめるしかないなあ。
 私、上杉くんのクールそうなトコ好きだったんだけど
 そういうとこもなんか好き。こっちは恋愛対象じゃなくて。」
「?」
「振られてくれるまでおとなしく待ちます。
 告白、聞いてくれてありがとう。
 委員会仲間としてこれからもよろしく。」
「ああ、よろしく頼む。」
「じゃ。」
「ああ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・誰が振るかよ!

つーか、ますます好きになったっつーの!
上杉、なんなのこの人。ほんとなんなの。
毎日、意識する度、魅かれて、好きんなってんのは俺だ。

だからあんま、好かれてる自信ないとか言うなよ。
俺がへこむから。

 

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春休みに入った。

ホワイトデーなんて去年まで気にしてなかったけど
今年のバレンタインデーには
優しい気持ちをたくさんもらったから
返せるものなんて俺にはないんだけど
それでも少しでも返せたらって思って
そういうありがとうな想いが伝わればいいなって
うん。そう思ったから、みんなのところを回った。
土曜だったから暇な時間聞いて訪ねて行って。
ありがとう。
ありがとう。
って。

水品は
「わざわざごくろーだな。」って口をとがらせた。
古泉は
「律儀なんだから。ありがとう。」ってさらにお返しに肉じゃがをくれた。
此花は
「一緒にお昼寝しようよ。」とベットにもぐりこんだ。
上杉は
「ありがとう。気を遣わせて悪かった。」と小さく笑った。

そんでその足で
いちばんありがとうを返さなきゃいけない人に
ありがとうを告げるために空港へ向かった。

もつべきは勇気なのか決心なのか。
さきにあるのは吸収なのか決別なのか。
進まなければきっと解らないことなんだろう。

あの日の止まない雨はまた降っているのだろうか?
俺の中で。
あの日の止まない雨はもうやんでもいいのだろうか?
彼を置いて。

行先にはその土地柄特有のどんよりとしたうすい雲が
あいまいな感情をもてあましている俺を迎えてくれるんだろう。

遅くなってごめん。薄情でごめん。今まで逢いに行かなくてごめん。


遥と出逢って別れるまでの夏休み。
正確に何日一緒にいたなんて幼すぎて覚えていない。
何日だったとしてもそれは確かにかけがえのない日々だった。

と、今、生き延びた俺は思う。

出逢いは俺が4歳、遥が9歳だった。
気が遠くなるほど幼いなと思うけれど
そんな幼いころでも忘れられない記憶はある。

「俺のそばにはいつも白雨のいばしょがある」

そんなことを言ってくれた。
俺、遥に、あの時、あのタイミングで逢ってなかったら
あのあとどう生きていけばいいのかきっと解らなかったよ。

実母に捨てられたり
義母に切り付けられたり
それなりに苦境はあったんだろう。
物心つく前にそれが日常にあったから
それが異常だと気付かないまま過ごした。
同情されてもなんのことだか解らないほど。

殺されかけた時も
死ななかったのは
たぶんその前に遥に逢っていたから。

なんでもいいから身の危険を感じたら
走って遥のとこに逃げるんだってことだけ
そんな遥との約束が俺を救ってくれたんだ。

切りつけられても血の吹き出る肩をかばって
妹を抱えるようにして必死で逃げることができた。
遥ならそうするだろうって思いながら逃げたから
俺自身が遥になったみたいで誇らしくて力強くて
この時の状況は怖いだけじゃなくて俺の支えになった。


遥。おれのいばしょ。


切り付けてきたのは3番目の母親だった。
だから初音、妹を産んだ優しかった母親ではない。
初音が生まれてからは母親が変るまで優しい日々だった。

距離や環境の違いもあって
幼い俺はそんなに遥に逢いには行けなかったけど
たまに逢えた遥は「いま、楽しい?」って聞いてくれて
俺が「うん、楽しい。」って答えると「そーか!」と笑った。

2番目の母を追い出して3番目の母が来たのは俺が9歳初音が5歳。
たまりにたまった鬱憤の矛先が目に見える形で俺たちに向かったのは
結果として俺にも初音にも良い環境の変化を引き寄せてくれたことになった。

なにも知らなかった父は(この人はいつもなにも知らない)
その状況に憤慨したという(自分にも責任があることも含め)
それがどう起点になったのか俺は知らないけど結果だけには満足だ。

初音は優しい実母の再婚に伴って引き取られることになった。
初音が嫌がって泣いたことは今でも鮮明に覚えている。
「はくーは?はくーもだよね?」
俺の引き取りは実父が応じなかったそうで
「はくーが行かないならハツネも行かない!」
俺の服の裾を握って泣き出す初音は可愛い妹だった。

初音の泣き方が異常で
「はくーがいなくなるとおなかが痛い!」
とか訳の解らない痛みを訴えだして
その泣き方や痛がり方があまりにもおかしくて
親族専属のホームドクターにかかるため日本に帰国した。
結果としてはただの盲腸であったようで簡単な手術で治った。

運命ってあると思うんだ。

母親に捨てられたのも
妹が生まれてきたのも
義母に切りつけられたのも
遙との約束があったことも

初音に付き添って帰国した病院で遙に再会するための布石だったと俺は信じてる。
じゃなきゃこんなロジックみたいな偶然に納得がいかない。

手術が終わっても初音はしばらく入院を余儀なくされて
容態に問題のない初音を俺が付き添うことで母は一度日本を離れた。
初音の退院前にまた戻ってくるらしく「私は白雨を引き取りたいの。」
と俺の頭をなでて優しく告げてくれた。それだけで俺は満足だった。

初音は歩けるようになると
病院内にあるピアノのある部屋で過ごした。
以前からピアノ教師に習っていた曲らしく、
たどたどしいながらもメロディーを追うことができた。

「あの特別室の患者さんの容態はどうなの?」
「大きな変化はないけれどゆっくりと悪化してるみたい。」
「若いのに気の毒はことね。」
「受け入れてるような表情が辛いわ。 
 身内の方もいらっしゃらないみたいだし。」

ピアノに夢中になるとしばらく没頭する初音を残して
外の空気でも吸おうかと部屋を出たところで会話が聞こえた。

会話をしていた看護婦が出てきた先はいちばん奥の
隔離された特別室に違いない。
どうして確かめようと思ったのか。

直見遙(すぐみはるか)

その入り口にはひらがなも記された遙の名前があった。

ドキドキしながら覗いた。
遙がそんな病人なわけがないけど
でもこんな名前でここにいるなら遙しかない。

「・・・はる・・か?」

ああ、見間違えるはずはない。
暗くて白い個室の窓際に坐っているのは遙だった。

「え?」
「俺だよ遙、白雨だよ。」
「は・・くう?」
「うん。」
「な・・なんでここに?」
「それはこっちのセリフだよ。
 盲腸の手術の付きそいで帰国したんだ。」
「ああ、あそこの連中が帰国する用事なんて
 この病院訪ねるくらいのもんだろうしなあ。
 仕事関連は別として。」
「そうだね。
 遙は病気?」
「そんなもん。」
「似合わないね病院。」
「そうだな。
 で、誰が盲腸?」
「妹。」
「初音ちゃんか、元気にしてる?」
「うん。いま、ピアノ弾いてる。
 遙こそ、どうなの体調?」
「うーん、今すぐには死なねー程度だ。」
「悪そう、だね。」
「よくはねーな。」
「入院、長いの?」
「白雨に前、逢ったとき以来、だな。」
「前に?去年じゃん。1年も?」
「んー、んで死ぬまでかもな。」
「え?」
「冗談、冗談。
 ここの看護婦さん可愛いんだよ。」
「遙、はぐらかさないで。」
「なかなか治んねぇんだよ。
 いますぐどーこーってわけじゃないから
 特に誰か付き添いがいるわけでもねーんだ。」
「沙羅は?両親は?」
「使用人も含めて帰ってもらったよ。
 俺のせいでこんなとこに引き止めておくわけにもいかねーだろ。
 みんなそれなりにやることも生活もあるわけだしな。
 つっても院内に世話係はちゃんといるけどな。」
「遙、ひとりなの?」
「ん。ちょっと暇だ。
 だからこんな状態だけど逢えて嬉しいぞー白雨。」
「遙ずっとひとりなの?」
「なんだよ、白雨は逢えて嬉しくないのか?
 んな、泣きそうなカオすんなよ。」
「そばに行ってもいい?」
「来い来い。
 伝染る病じゃないから安心しろ。」
「そんなこと言ってない。」

全然病気なんかに侵されてる人には見えなかった。
あいかわらず背は高いし手はでかいしあったかい。
「遙。」
抱きついた所でやせ細ってるわけじゃないから
看護婦達の会話も、遙の言ってたことも、嘘っぽい。
「相変わらずちっちぇえな白雨は。」
「遙が・・・でかいんだよ。
 身長また伸びただろ。」
「おー伸びた伸びた。
 中1で175あんのクラスで俺だけだぜ。」
「学校、通ってんの?」
「休み休みだけどな。
 特別制度で教師がここに教えに来ることで
 出席日数は足りてる計算なんだぜ。」
「ブルジョワだなあ。」
「おまえが言うなよ。
 お、定期健診の時間だ。
 白雨、またあとで来いよ。」
「うん。
 またね、遙。」

遙をあんなとこにひとり残して行くなんか
すごく嫌だったけど初音のところに向かった。

「はくー。」
「ピアノ終わった?」
「ウン。
 あのね、ママから電話あったよ。」
「え?」
「いまお医者さんと話してるよ。」
「どこ?」
「なーすすてーしょん!」
「行こう。」

「あ、白雨君。丁度良かった。」
「なんですか?」
「初音ちゃん、そろそろ退院だよ。」
「たいいん?」
「おうちに帰れるんだよ。」
「ほんと?はくーもだよね?
 ママと初音とはくーと帰るんだよね?」
「そうだよ。
 おめでとう。」
「いつですか?」
「明後日に迎えにいらっしゃるということだったよ。」

明後日。
ずっと考えた。

それはこどもの発想とインスピレーションだけだったんだろうけど
それが俺のしたいたったひとつのかけがえのない選択だったんだ。

夜、初音が眠ったのを確認して遙の病室に向かった。
「遙、」
ちいさく声をかけたら
「来ると思ってた。 
 待ってたぞー。」
遙が笑った。
「遙、遙、」
「なんだ?」
「初音が退院しちゃうよ。
 俺、遙と離れたくないよ。
 折角逢えたのにもういやだよ。」
「・・・」
「遙?」
「ちょっとびっくりした。
 白雨が何かしたいだとか
 何が嫌だとか言うの初めて聞いたな。」
「遙、困った?」
「いや、嬉しいよ。
 なんかおまえが歳相応に見えた。
 いままで時々俺より大人に思えたから。」
「俺は子供だよ。
 なんにもできない。」
「白雨にはなんでもできるよ。
 俺が教えたサッカーも俺よりうまくなったじゃんか。」
「そんなのどうでもいいよ。
 俺、遙のそばにいちゃだめ?
 俺、遙のそばにいるにはどうしたらいいの?」
「俺の?
 どうして白雨?」
「俺のいばしょは遙のそばなんでしょう?
 だったらどうして一緒にいられないの?」
「なんか珍しいな。
 白雨ってそういうこと言わないと思ってた。」
「いま言わないとだめだから。
 遙は迷惑?」
「迷惑じゃないし嬉しいよ。
 白雨がいてくれたら直ぐに治りそうなくらい。」
「ほんと?」
「うん。だけど、
 それは俺と白雨だけで決められる問題じゃないんだ。」
「うん。」
「でも諦めないといけないことでもない。
 やれることはやってみるよ。」
「遙、」
「白雨は初音ちゃんのお迎えが来たら
 俺の病室に立ち寄ってくれるように伝えて。」
「うん!」

遙はあのときもやっぱり遙だった。

「白雨、家族になろう。」
初音の母や、父や、遙の親族や、
そういう人に連絡を取ってなにかを成し遂げたように
遙は第一声で俺にそう言った。
「かぞく?」
「俺と一緒に暮らそう白雨。
 つっても俺は病院ほとんどだから
 ちょっと寂しいかもだけどいいか?」
「うん。」
「んじゃ決まりな。
 おまえはこれからいっつも俺のそばだ。」
「ほんとに?」
「俺はつまんねーうそはつかねー。」
「うん!嬉しいよ遙!」
「初音ちゃんにはごめんなって言っておいて。」
「うん。」

初音は泣いた。
そりゃーもう泣いた。
でもな、それでよかったと思うんだ。
俺は血のつながらない部外者だから
どうせ血がつながらない家族なんなら
ひとりで戦ってる遙のそばにいたかった。

最後に弾いてくれた上達したピアノのあの曲、
俺は死んでも忘れない。

*******

「温室のこどもたち」のアンサーSS。

月代日記

俺はサイテーだ。
上杉がこんな俺のどこを見て
好きだとか言ってくれたのかは解んねえ。
そんな価値なんかないと思うしそんな俺が
上杉を傷つけたとしたら傲慢もいいとこだ。

生田に恋の相談を受けた。
それから告白の予行練習に付き合った。
叶わなかった恋を持ち帰った生田と並んで
ラーメンを湯気にまみれてひたすら食った。

生田はすげえ。
生田側で生田の恋を感じたから
告白をする勇気ってすげえって思った。
告白してくれた上杉もすげえって思った。

生田が言った。
「言うからには何かが動くと思うんだよ。
 振られるにしても俺の気持は伝わるだろ?
 伝えることで残る思いってあるって思うんだ。」
って。目からうろこなんてもんじゃなかった。

上杉の告白の意味、ほんと解ってなかった、俺。
上杉は言うから。
「すまない。」って。
「返事はいいんだ。」って。
「いままでどおりでいてくれると嬉しい。」って。
俺はその言葉どおりにいままでどおりに接してた。

いままでどおりを望むならなんで告白するんだよ。
俺はサイテーだ。
そこ違うだろ。何かあるからだろ。
そんだけ勇気出したことに結果はいらないって。んなわけねーだろ。
俺は逃げてた。つか、いっつも逃げてばっかだ。真剣に何かに向かうことから。

それを遥を失ったことや
遥の恋を失ったことで
失うことに恐れが生まれたことにして
失うくらいなら始めからいらないって
そう言うのは簡単で卑怯だ。でも、俺はどっかでそう思ってた。

失うのはもういい。
永遠の恋なんかなかったんだ。
俺の居場所なんかいつかは消えるんだ。
って。とんだ被害妄想だよ。どんだけ弱いんだよ俺。

生きてんのに。
生きてんなら前向いて生きなきゃじゃんか。
失うもん取り戻すくらいの覚悟もなくて逃げてんじゃねえよ俺。

上杉はあんな苦しそうに想いを告げてくれた。
んで、たぶん、俺を気遣って、いままでどおりでいいって言う逃げ道を
俺にくれた。
俺が駄目だから。
俺が困ったから。
こういうのは男同士だからとかそういうの関係ない。
むしろ、だからこそ、上杉の勇気と覚悟を味わうべきだった。
恋愛に対する感覚がごっそり欠けてた俺はただ戸惑って「ごめん」って言った。
いつかの未来なんて夢空言だから俺の夢は大恋愛なんてふざけて言ったりしたけど嘘じゃない。

上杉に逢いに行こう。
そんでちゃんと俺の言葉を告げよう。

ん、で。春休みの今。上杉が通ってる塾の前にいる。
以前図書室で塾に通ってる話は聞いてた。春期講習も出るって。
そろそろ昼だし昼休憩には飲み物くらい買いに出てくるといいな。
だって今日から4月だってのにかなり寒い。昨日は暖かかったのに三寒四温?
しかも風が強いのなんの。春一番?折角咲いた桜ぼわって散って目の前が桜霞。
ぴんくの視界の先に現れた上杉はきょとんとしたカオして「月代?」って言った。

「うん。月代です。逢えてよかった。」
「俺に?」
「うん。待ってた。」
つったらなんか上杉が泣きそうなカオした。
ゴメンナサイ。ナカナイデ。ゴメンナサイ。
「ちょっといい?」
「ちょっとじゃなくても、いい。」
オレガナキソウ。

「久し振り。」
「ああ。」
「んーと・・」
「こないだ、」
「え?」
いきなり待ってた俺に上杉が話し始めた。
「ほいわいと、」
「え?」
「ほいわい・・ほわいとでーに、」
「うん?」
上杉のほうが積極的に話してくれて戸惑う。
「これをもらって、」
ああ、そうだった。
ホワイトデーだったっけ?日差しは暖かいのに風は冷たい日。
なのにマフラーもしてない上杉の後姿を見つけた。しかも薄着。
なんか見てる方が寒くて思わず俺の巻いてたマフラー上杉の首に巻いた。
絶対遠慮しそうだったから有無を言わさず「風邪引くなよ!」ってそのまま帰宅したっけ。
「その前にも同じように巻いてくれた。」
って上杉が言って。バレンタインデーに冷え切ってマンション前にいた上杉に巻いたこと思い出した。
上杉ってなんかいっつも寒そうってか冷えてるんだもん。平気だっつっても見てる方が平気じゃない。

「上杉寒そうだったからなー。」
とだけ告げた。
「うん。解ってる。」
「え?」
「翌日が終業式だったから返しそびれてしまった。
 暖かかった。ありがとう。」
上杉が鞄からそのマフラーを取り出した。
え?解ってる?てか、
「なんで持ってんの?俺来ること知らなかったのに。」
「なんとなくいつも持ち歩いていた。」
「あげるつもりで巻いたから、返さなくていいよ。」
「え?」
「そう言えば今、昼休憩だよな?
 食べる時間なくなるよ。俺終わるの待ってるから
 塾が終わった後少し時間くんない?」
「そのためにわざわざ?」
「んー。
 携帯で連絡しようと思ったけど授業中じゃん?
 何時頃に終わるのかも聞いておきたかったし。」
「昼は・・いい。」
「上杉?」
「今日は昼まででいい。」
「まででいいって・・。」
「どうせこのあとは模試の答え合わせとその復習だけだから。
 春期講習も今日までだから提出物もないから。」
それって俺のせいで上杉がさぼるってことじゃねーの?
そんなことさせるために来たんじゃないんだけどな。
「上杉、それはちょっと・・・」
「全科目満点だった俺が、同じ内容の模試の復習に、
 時間をかけて付き合う必要あると思うか?」
ちょ・・・上杉がかっこいい。
かっこいいこと言ってるのに顔が真っ赤だ。
かっこいいこと言ったのに言って照れてんの。
「ぷっ・・・はははっはっ。
 上杉すげーかっこいい。」
「・・・だから昼まででいいんだ。このまま帰る。」
「うん。」
いっか。
上杉なりの気遣いなんだろうな。
普段あんなこと言わないくせにな。
上杉が持ったままの俺のマフラーを取って上杉に巻いた。
「んじゃ、行こっか。」
「これ、」
「いらなかったら、家に帰ってから捨てて。
 今は寒そうだから巻いてて?」
「・・・捨てたりなんか」
「うん。もらってやって?」
「・・・ありがとう。」
「うへへ。」

昼だったし、近場にあった喫茶店に入った。
上杉はグラタン、俺はナポリタン。
上杉はダージリン、俺はカフェラテ。
外でこうして上杉と食べることないから
上杉がグラタン食べるとこ初めて見た。
好きなのかな。クリーム系。
水品はぜったいハンバーグ注文するよなぁ。
しかもデミグラスよりケチャップ系の甘いの。
で、バターソテーの添えられたニンジンをさ、
嫌いだからってこっそり古泉の皿に乗せて怒られんの。
んで古泉を諦めた水品のニンジンが結局俺の皿に乗んの。
「上杉は、好き嫌いとかある?」
「俺、は、特に、ない。と思う。」
「いいことだね。」
「月代は、あるか?」
「油漬けのブラックオリーブは苦手かな。
 ピザに乗ってるのとかは平気だけど丸々1個とかはね。」
「丸々1個・・食べたことがないな。」
「そうやって食べるものじゃないよね。たぶん。」
店を出たらやっぱり吹き付ける風は冷たくて、
「おおっ。」って言ったら上杉が
「美術館のロビー風よけになる、から。」って美術館を指差した。
このあとどこで話すか考えててくれたのかなぁって思うとなんか、
嬉しかったしありがたかった。上杉はいつもいろんなこと考えてる。


*****
日付が間に合わなかった。
のちほど修正に参ります@管理人。 
後半は本日上杉視点で。

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BrownBetty 
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