忍者ブログ
キャラの日常日記ブログ
  • /02 «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • » /04
カレンダー

02 2025/03 04
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

リンク
カテゴリー
解析
最新コメント

[02/11 しゅうむ]
[01/28 しゅうむ]

最新記事

(11/10)
(08/28)
(08/14)
(05/04)
(12/14)

最新トラックバック

プロフィール

HN:
white note
性別:
非公開

バーコード
RSS
ブログ内検索

アーカイブ
最古記事
カウンター

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

若山先輩が俺を呼んだ。
心当たりは勿論あった。
桜の木の下に先日から設置されたベンチに座った。
桜は咲いていないけれど空は青くて気持ちがいい。

「此花のこと振ったんだってな。」
「すみません。」
「責めてねぇよ。」
「はい。」
「人の恋路に首突っ込むつもりはねえのにな。
 あいつを見てたらつい余計なことしちまうんだ。
 とことん面倒見ねえと気が済まねえ性質なのかね。」
「面倒見が良いってことなんじゃないですか。」
「そうかね。
 俺はなーあいつが振られるの、初めて見た。
 あ、さっきも言ったけど責めてるわけじゃねーぞ。」
「はい。」
「性格というより考え方に問題を持ってるやつだが
 見てくれがあれだろ。そんでそういうことに慣れてる。
 なのにおまえはほだされもせず流されもせず振っちまった。」
「はっきりした告白をされたわけじゃないので
 俺が此花を振ったというのは少しおかしいですよ。」
「そうなのかもな。
 でも別に好きなやつができたってことなんだろ?」
「はい。」
「2年になって月代とクラス別れただろ、
 そん時の此花の落ち込みようがすごくてな、
 学校に行きたくないってベットの中に引きこもったりしてた時期があって、」
「ああ、はい。」
「俺も朝練あるし参ってたんだが、」
「はい。」
「月代に学校来てって言われたって
 学校行き出したんだよな。」
「そう・・・ですか。」
「なにしたんだ?」
「あ・・・」
「じゃねーな。いい。いい。言わなくて。
 そんときはありがとな。」
「そんな、俺は、」
「そんでさ、振られたって言うから
 初失恋だしどーなることかと思ったら、」
「はい。」
「すげえ嬉しそうににこにこへらへらしてんだ。」
「そう・・・ですか。」
「どんな魔法が使えんのおまえ?」
「あははははっ。若山先輩の口からまさか魔法って・・・」
「なんだあ?俺がファンタジックなこと言ったらおかしいかよ。」
「いえいえ。若山先輩はファンタジスタじゃないですか。」
「地味に褒めるな。
 あ、何をしたのか聞きたいわけじゃないんだわ。」
「はい。」
「あいつを笑わせてくれてありがと、な。」
「俺は何も・・・」
「実らなかった初恋かもしんねーけど
 あいつは去年より一昨年より笑ってる。
 振られたのにすげえ幸せそうに笑ってる。
 それだけは俺の眼が見たほんとのことだ。」
「なんかてれますよ。 
 俺のおかげなんかじゃないですよ。
 若山先輩がいたからだと思います。」
「いーや。お前だ。
 俺は帰るところになってやれても
 行きつくところにはなれねえだろうから。」
「そんなの誰にもわからないことですよ。」
「そーかね。
 このまんまだと俺、何言いに来たかわかんねーな。」
「うへへっ。そうですね。」
「此花のやつ、
 振られたくせにその前より嬉しそうなんだ。
 嬉しい。気持ちいい。って幸せそうに笑うんだ。
 なんで?って聞いても月代との秘密って言うんだけど、」
「あ・・・」
「あいつが秘密って言うんだから言わないでいい。
 ん、と、ありがとな。」
「礼なんて・・・」
「言いたいって俺が思ったから言わせとけ。
 それから、」
「はい。」
「月代自身もも恋愛の主役っての、できるようになってよかったな。」
「ありがとうございます。」
去り際に頭をなでた若山先輩の手は大きくてちょっと遥を思い出した。
いつも誰かを見守って気にかけて心配している優しい手だ。

********

お題28をUPしながら此花の存在が
おろそかになっていることに気付いたので
ちゃんと此花もこんなかんじですよなSS。
秘密の部分は次に此花視点のアンサーSSで。

********

若山の深層心理。
(あいつが月代を好きだって言っているうちは
 俺は絶対手を出さない理性を働かせることができるんだ)
だって俺はあいつの親友だから。

PR

どうして上杉だったの?

と俺は疑問に思うんだ。

*****

古泉日記

*****

「上杉と付き合うんだ。」
「そう。」

月代が上杉に告白されたのは知ってた。
その前から上杉はそんなふうに月代を好きなんだと気づいてたし
その頃にはどうしたことか上杉が間違って水品に告白したこともあった。

ああ、遠い昔のことのようだけれど。

「うん。君が上杉からの告白、
 保留した時点でそうなるんだろうって思ってたよ。」
「・・・そっか。なんか、
 古泉にはいつも見抜かれてるね、俺。」
「そうでもないよ。」

だって保留するだなんて思わなかったもの。
水品の気持ちに先に感づいて水品を意識すると思ってたもの。

「どうして保留したのかは解らなかったよ。
 どうして?」
「・・・うーん・・・どうして、かな。」
「解らないの?」

おかしいよ、そんなの。

「一生懸命・・・だったから。」
「一生懸命?」
「なんか必死で好きだって言ってくれた・・から。」
「それだけ?」
「・・じゃない。じゃなくて・・変なこと言うかもだけど、」
「うん?」
「寒そうで、
 痛そうで、
 一生懸命に頑張り過ぎてて、
 放っておけないなぁとか思っちゃって、
 危なっかしくて目が離せなくなったんだよね。」

なにそれ。
上杉にあてはまらないんだけど。
むしろ水品にあてはまりそうなんですけど。

「それ、恋愛対象で人を好きになる理由なの?」
「解らないけど俺にとってはそうだったの、かな?」

「その時点で好きだったってことなのは解るけど
 保留が解けたのはなぜ?」
「うん。あのな、」
「日曜日に月代の住んでるところ周辺に上杉がいたこと関係してる?」
「う・・うん。逢ったんだってね。
 古泉に救われたって言ってた。上杉。」

救われた、ねえ。

「青い顔して寒そうにして座ってたから声、かけただけだよ。」

あ、寒そうで痛そうで放っておけないってこういうこと?
俺よりも月代はそういう上杉を見てて放っておけなくなりすぎたってこと?

「うん。ありがとう古泉。」
「礼を言われるようなことはなにもしてないよ。
 上杉、怪我してたね。手。」
「うん。」
「それも関係ある?」
「たぶん。」
「月曜、月代の呼び出し以降
 上杉が教室戻ってこなかったのも?」
「うん。」

さぼったりしない上杉が月代に呼び出されて
それから授業に出ていなかったら何かあったと思うでしょ?

「振られると思ってたっぽくて、
 でもそれは俺が悪いんだけど、」
「ふうん」
「・・・遥を失ったときに明良のことを任されて
 その明良が遥のこと忘れちゃったのに俺になにができるんだって
 そう思いながら見守ってて、俺は恋愛の主役にはなれないって思ってた。」
「そう。
 でも水品には誰かを愛したいって言ったでしょう?」
「それも本音。
 俺が恋愛の主役になれるときっていつかなって思ってた。
 遥に片思いしててもういないことに今更泣いてくれた女の子がいて
 そんなタイミングに明良が結婚するって知って一緒に遠くから式を見たんだ。」
「それがこないだの日曜日?」
「うん。」

ほんとは知ってた。
楠木が教えてくれた。
月代が心配だって言ってた。

「タイミングがよかったんだ。
 ・・・なんて言わないよ。
 上杉はいつも一生懸命つっきーのこと追ってたから
 だからその場にいあわせて、だから振られるって思っちゃって、
 そして結果としてつっきーに想われたんだと、報われたんだと、俺は思うよ。」

不本意ながらね。

「う・・ん。」

俺は思うよ。
君の心の氷を溶かしたのは水品だ。
その上で君を追ったのが上杉だったんだ。
いばしょを探したこの場所で危なっかしい人を
心が不安定で身体は強い君は見つけたかったんだ。

でも、上杉は成績優秀、容姿端麗、品行方正って一般見解でしょ。
なにをどう重ね合わせちゃったんだろうね。

「だれかを愛することで君は幸せになれると信じているなら、
 俺は君が誰かを好きだと想えてよかったなって思うよ。」
「うん。ありがとう古泉。」

俺に礼なんか言わないでよ。
俺は水品のバカと君が・・・バカやってんのが好きなんだ。

 


遥と出逢って別れるまでの夏休み。
正確に何日一緒にいたなんて幼すぎて覚えていない。
何日だったとしてもそれは確かにかけがえのない日々だった。

と、今、生き延びた俺は思う。

出逢いは俺が4歳、遥が9歳だった。
気が遠くなるほど幼いなと思うけれど
そんな幼いころでも忘れられない記憶はある。

「俺のそばにはいつも白雨のいばしょがある」

そんなことを言ってくれた。
俺、遥に、あの時、あのタイミングで逢ってなかったら
あのあとどう生きていけばいいのかきっと解らなかったよ。

実母に捨てられたり
義母に切り付けられたり
それなりに苦境はあったんだろう。
物心つく前にそれが日常にあったから
それが異常だと気付かないまま過ごした。
同情されてもなんのことだか解らないほど。

殺されかけた時も
死ななかったのは
たぶんその前に遥に逢っていたから。

なんでもいいから身の危険を感じたら
走って遥のとこに逃げるんだってことだけ
そんな遥との約束が俺を救ってくれたんだ。

切りつけられても血の吹き出る肩をかばって
妹を抱えるようにして必死で逃げることができた。
遥ならそうするだろうって思いながら逃げたから
俺自身が遥になったみたいで誇らしくて力強くて
この時の状況は怖いだけじゃなくて俺の支えになった。


遥。おれのいばしょ。


切り付けてきたのは3番目の母親だった。
だから初音、妹を産んだ優しかった母親ではない。
初音が生まれてからは母親が変るまで優しい日々だった。

距離や環境の違いもあって
幼い俺はそんなに遥に逢いには行けなかったけど
たまに逢えた遥は「いま、楽しい?」って聞いてくれて
俺が「うん、楽しい。」って答えると「そーか!」と笑った。

2番目の母を追い出して3番目の母が来たのは俺が9歳初音が5歳。
たまりにたまった鬱憤の矛先が目に見える形で俺たちに向かったのは
結果として俺にも初音にも良い環境の変化を引き寄せてくれたことになった。

なにも知らなかった父は(この人はいつもなにも知らない)
その状況に憤慨したという(自分にも責任があることも含め)
それがどう起点になったのか俺は知らないけど結果だけには満足だ。

初音は優しい実母の再婚に伴って引き取られることになった。
初音が嫌がって泣いたことは今でも鮮明に覚えている。
「はくーは?はくーもだよね?」
俺の引き取りは実父が応じなかったそうで
「はくーが行かないならハツネも行かない!」
俺の服の裾を握って泣き出す初音は可愛い妹だった。

初音の泣き方が異常で
「はくーがいなくなるとおなかが痛い!」
とか訳の解らない痛みを訴えだして
その泣き方や痛がり方があまりにもおかしくて
親族専属のホームドクターにかかるため日本に帰国した。
結果としてはただの盲腸であったようで簡単な手術で治った。

運命ってあると思うんだ。

母親に捨てられたのも
妹が生まれてきたのも
義母に切りつけられたのも
遙との約束があったことも

初音に付き添って帰国した病院で遙に再会するための布石だったと俺は信じてる。
じゃなきゃこんなロジックみたいな偶然に納得がいかない。

手術が終わっても初音はしばらく入院を余儀なくされて
容態に問題のない初音を俺が付き添うことで母は一度日本を離れた。
初音の退院前にまた戻ってくるらしく「私は白雨を引き取りたいの。」
と俺の頭をなでて優しく告げてくれた。それだけで俺は満足だった。

初音は歩けるようになると
病院内にあるピアノのある部屋で過ごした。
以前からピアノ教師に習っていた曲らしく、
たどたどしいながらもメロディーを追うことができた。

「あの特別室の患者さんの容態はどうなの?」
「大きな変化はないけれどゆっくりと悪化してるみたい。」
「若いのに気の毒はことね。」
「受け入れてるような表情が辛いわ。 
 身内の方もいらっしゃらないみたいだし。」

ピアノに夢中になるとしばらく没頭する初音を残して
外の空気でも吸おうかと部屋を出たところで会話が聞こえた。

会話をしていた看護婦が出てきた先はいちばん奥の
隔離された特別室に違いない。
どうして確かめようと思ったのか。

直見遙(すぐみはるか)

その入り口にはひらがなも記された遙の名前があった。

ドキドキしながら覗いた。
遙がそんな病人なわけがないけど
でもこんな名前でここにいるなら遙しかない。

「・・・はる・・か?」

ああ、見間違えるはずはない。
暗くて白い個室の窓際に坐っているのは遙だった。

「え?」
「俺だよ遙、白雨だよ。」
「は・・くう?」
「うん。」
「な・・なんでここに?」
「それはこっちのセリフだよ。
 盲腸の手術の付きそいで帰国したんだ。」
「ああ、あそこの連中が帰国する用事なんて
 この病院訪ねるくらいのもんだろうしなあ。
 仕事関連は別として。」
「そうだね。
 遙は病気?」
「そんなもん。」
「似合わないね病院。」
「そうだな。
 で、誰が盲腸?」
「妹。」
「初音ちゃんか、元気にしてる?」
「うん。いま、ピアノ弾いてる。
 遙こそ、どうなの体調?」
「うーん、今すぐには死なねー程度だ。」
「悪そう、だね。」
「よくはねーな。」
「入院、長いの?」
「白雨に前、逢ったとき以来、だな。」
「前に?去年じゃん。1年も?」
「んー、んで死ぬまでかもな。」
「え?」
「冗談、冗談。
 ここの看護婦さん可愛いんだよ。」
「遙、はぐらかさないで。」
「なかなか治んねぇんだよ。
 いますぐどーこーってわけじゃないから
 特に誰か付き添いがいるわけでもねーんだ。」
「沙羅は?両親は?」
「使用人も含めて帰ってもらったよ。
 俺のせいでこんなとこに引き止めておくわけにもいかねーだろ。
 みんなそれなりにやることも生活もあるわけだしな。
 つっても院内に世話係はちゃんといるけどな。」
「遙、ひとりなの?」
「ん。ちょっと暇だ。
 だからこんな状態だけど逢えて嬉しいぞー白雨。」
「遙ずっとひとりなの?」
「なんだよ、白雨は逢えて嬉しくないのか?
 んな、泣きそうなカオすんなよ。」
「そばに行ってもいい?」
「来い来い。
 伝染る病じゃないから安心しろ。」
「そんなこと言ってない。」

全然病気なんかに侵されてる人には見えなかった。
あいかわらず背は高いし手はでかいしあったかい。
「遙。」
抱きついた所でやせ細ってるわけじゃないから
看護婦達の会話も、遙の言ってたことも、嘘っぽい。
「相変わらずちっちぇえな白雨は。」
「遙が・・・でかいんだよ。
 身長また伸びただろ。」
「おー伸びた伸びた。
 中1で175あんのクラスで俺だけだぜ。」
「学校、通ってんの?」
「休み休みだけどな。
 特別制度で教師がここに教えに来ることで
 出席日数は足りてる計算なんだぜ。」
「ブルジョワだなあ。」
「おまえが言うなよ。
 お、定期健診の時間だ。
 白雨、またあとで来いよ。」
「うん。
 またね、遙。」

遙をあんなとこにひとり残して行くなんか
すごく嫌だったけど初音のところに向かった。

「はくー。」
「ピアノ終わった?」
「ウン。
 あのね、ママから電話あったよ。」
「え?」
「いまお医者さんと話してるよ。」
「どこ?」
「なーすすてーしょん!」
「行こう。」

「あ、白雨君。丁度良かった。」
「なんですか?」
「初音ちゃん、そろそろ退院だよ。」
「たいいん?」
「おうちに帰れるんだよ。」
「ほんと?はくーもだよね?
 ママと初音とはくーと帰るんだよね?」
「そうだよ。
 おめでとう。」
「いつですか?」
「明後日に迎えにいらっしゃるということだったよ。」

明後日。
ずっと考えた。

それはこどもの発想とインスピレーションだけだったんだろうけど
それが俺のしたいたったひとつのかけがえのない選択だったんだ。

夜、初音が眠ったのを確認して遙の病室に向かった。
「遙、」
ちいさく声をかけたら
「来ると思ってた。 
 待ってたぞー。」
遙が笑った。
「遙、遙、」
「なんだ?」
「初音が退院しちゃうよ。
 俺、遙と離れたくないよ。
 折角逢えたのにもういやだよ。」
「・・・」
「遙?」
「ちょっとびっくりした。
 白雨が何かしたいだとか
 何が嫌だとか言うの初めて聞いたな。」
「遙、困った?」
「いや、嬉しいよ。
 なんかおまえが歳相応に見えた。
 いままで時々俺より大人に思えたから。」
「俺は子供だよ。
 なんにもできない。」
「白雨にはなんでもできるよ。
 俺が教えたサッカーも俺よりうまくなったじゃんか。」
「そんなのどうでもいいよ。
 俺、遙のそばにいちゃだめ?
 俺、遙のそばにいるにはどうしたらいいの?」
「俺の?
 どうして白雨?」
「俺のいばしょは遙のそばなんでしょう?
 だったらどうして一緒にいられないの?」
「なんか珍しいな。
 白雨ってそういうこと言わないと思ってた。」
「いま言わないとだめだから。
 遙は迷惑?」
「迷惑じゃないし嬉しいよ。
 白雨がいてくれたら直ぐに治りそうなくらい。」
「ほんと?」
「うん。だけど、
 それは俺と白雨だけで決められる問題じゃないんだ。」
「うん。」
「でも諦めないといけないことでもない。
 やれることはやってみるよ。」
「遙、」
「白雨は初音ちゃんのお迎えが来たら
 俺の病室に立ち寄ってくれるように伝えて。」
「うん!」

遙はあのときもやっぱり遙だった。

「白雨、家族になろう。」
初音の母や、父や、遙の親族や、
そういう人に連絡を取ってなにかを成し遂げたように
遙は第一声で俺にそう言った。
「かぞく?」
「俺と一緒に暮らそう白雨。
 つっても俺は病院ほとんどだから
 ちょっと寂しいかもだけどいいか?」
「うん。」
「んじゃ決まりな。
 おまえはこれからいっつも俺のそばだ。」
「ほんとに?」
「俺はつまんねーうそはつかねー。」
「うん!嬉しいよ遙!」
「初音ちゃんにはごめんなって言っておいて。」
「うん。」

初音は泣いた。
そりゃーもう泣いた。
でもな、それでよかったと思うんだ。
俺は血のつながらない部外者だから
どうせ血がつながらない家族なんなら
ひとりで戦ってる遙のそばにいたかった。

最後に弾いてくれた上達したピアノのあの曲、
俺は死んでも忘れない。

*******

「温室のこどもたち」のアンサーSS。

人の気配がした。
広夢様の機嫌が良すぎるのも悪い兆候だ。
嬉しそうなのではなく悪そうな機嫌のよさだ。
大概のことは放っておくのだけれど胸騒ぎを覚えた。
広夢様のあとをこっそり追うと離れの棟へ行き着いた。
広夢様が外出の時を見計らって出直そうとその陽を離れた。

寝息のようなものが聞こえた。
閉め切られた真っ暗な部屋。
窓もいつつけたのか格子がはまっている。
分厚い絨毯の上を分厚いカーテンに向かって進む。
電球が切れているのか明かりがつかない。とにかく明るさが欲しい。

「すう」

ちいさな。ちいさな。寝息だ。
まるでちいさな子供が昼寝をしているような平和な寝息。

ようやくして開け放たれたカーテンは
容赦なく室内を明るさで満たす。

その部屋の中心にある大きなソファで眠る少年が絵のようにいた。
剥かれて繋がれてそれでも平和な顔で眠っていた。

ああ、と私は呻いた。
なんてことだ、と私は頭を抱えた。

彼は私も何度かあったことのある少年だった。
とても明るく可愛らしい印象のあった聡明な少年がこんなところに閉じ込められたいた。

古泉

5月23日

生田が月代が女子と自宅マンションで話しているのを見たと言っていた。
なんでもかんでも報告する義務なんかないけど
月代は月代にとって重要なことは俺らに話してくれる。
だから月代にとってそれはそんなに重要じゃないんだろう。

月代ごとについてはなんでもかんでも気になる水品は騒いでたけど
月代のことが好きで聞き耳を立てずにいられない上杉は青い顔してたけど
俺は、別にそんなに気にするほどのことじゃないって思うから聞き流してた。

気になるのは、上杉と水品の態度だ。
なにせその話題を提供してくれた生田が、
6月1日に再びその子と月代が逢うらしい、との
未来の話題までもたらしたものだから動揺もするだろう。

過去のことはどうにもできない。
自分の未来のことはどうにかできる。
他人の未来のことは条件次第でどうにかできる、かもしれない。
そういうことだ。

水品はバカだし
上杉は賢いけれど
どっちもどっちな気もする。
俺は見守るだけでいいのかと時々思う。
変な胸騒ぎを感じながら変わらない日々を願う。

*******

BACK * HOME * NEXT
BrownBetty 
忍者ブログ [PR]