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もうすぐ春休みだなーサッカー部の俺には休みなんてないけど。と
白い息を吐きながら自主練習にストレッチしてたら 
「月代、上杉と付き合うって」
古泉が唐突に告げた。

「はぁ?なんだよそれ、意味解んねーし」
「恋人同士になるってこと。
 理解できた?」
「できるか。んな話、聞いてねーし」
「今、聞いてるじゃない」
「月代から聞いてない」
「俺が止めたから」
「はあ?」
「つっきーが水品にも報告するって言ってたけど
 俺から言うって止めたの」
「なんでだよ」
「泣くからだよ」
「誰がだよ」
「もしくは暴走するからだよ」
「だから誰が、」

古泉は黙って俺を見た。
俺かよ。

「男同士で恋愛もくそもねーだろ。
 月代はバカだと思ってたが上杉もかよ」
「その上杉の方がずっとつっきーのこと好きだったの、
 水品がいちばん知ってたことじゃない?」
「うっせぇ」
知ってたけど
知ってたけど
まさか月代がOKするなんて思わねーじゃん。

「いままでそんなそぶり全然なかったくせに
 なんでいきなりそういうことになってんだよ。
 意味わかんねぇ」
「つっきーの中で動いたのかもね」
「何がだよ」
「上杉への感情」
「なんで今更・・・・・・」
「保留期間を生かせなかった水品に言われたくないよ」
「なんだよそれ」
「もういいよ。解らなくて。
 その方がキミのためだろうし」

ひらひらと手を振って中庭から校舎に向かって行く古泉を見ながら
信じられない気持で青い空を仰ぐ。
上杉と月代が付き合うだってさ。

「信じられっかよ」
信じたくねえよ。


『like or love』


上杉と月代が付き合うことになったらしいが特に変化はない。

2年に進級して月代は俺と同じ教室でバカなこと言って笑ってるし、
上杉は月代と違うクラスになったから月代と一緒にいる機会少ない。

二人が一緒にいるとこを見る機会がそもそも少ない。

ただ時折、
廊下で並んで話している二人を見る。
合同体育の授業で笑い合ってる二人を見る。

「月代とあの上杉って仲ええの?」
その光景を見ていたら2年になってから時折つるむ細山田が聞いてきた。
2年になって同じクラスになって月代となんか仲いいから俺も仲良くなった奴。
「あの、って何だよ?」
「優等生って言葉がぴったしな上杉と、って意味。
 なんか月代とおるようなイメージないし。
 や、月代が不真面目ゆう意味やないで」
うん。細山田の言いたいことは解る。
「同じクラスだったんだよ、去年」
付き合ってるんだってよ、今。とは言えねぇじゃん。
「あ、そうなん。けど、それだけやろ?」
「俺も月代とはそれだけなんだけど?」
「それ言うたら俺も今同じクラスってだけやけど、
 なんかなー、上杉って近寄りがたい感じあるからかな」
「話せば気さくでいいやつだよ、上杉は」
月代に恋心さえ抱かなければ、さ。
「あ、そーなん。
 んじゃ、今度、月代とおるときうかがって話しかけてみよ」
「おう」

あー、マジで付き合ってんだなーって思うときが、ある。
付き合い始める直前くらいに怪我した上杉をすげぇ心配してる月代の顔とか、
放課後の廊下で月代を待ってたりするときの上杉のすげぇ嬉しそうな顔とか、
「上杉」って呼ぶときの月代の優しい声とか、
「月代」って微笑むときの上杉の甘い声とか、
付き合ってるって知んなきゃきっと気が付かない些細なことでも気付かされる。

その度に少し、おもしろくねぇって思ってる俺がいることにも気付かされた。

「月代、」
「ん?」
俺に接する態度まで最近やけに優しいのにもむかつく。
「付き合うってなに?」
「え?」
「だから、付き合うって具体的にどういうことなんだ?」
「大切にする、ってことかな」
「上杉を?」
「うん」
俺より?古泉より?楠木より?と問い掛けて辞める。
だってさ、大切にする、って定義からして曖昧すぎる。

「具体的にどうなんだよ?
 キスとかそういうことをするかしないかってことか?」
代わりに聞いたダイレクトアタック。俺はほんとバカだよな。
月代の沈黙が痛い。けどここ聞かないとなんかすっきりしないんだ。

「同じようなこと、俺、上杉にも聞いたことあってさ、」
え?こんな質問にちゃんと考えて答えてくれんのか?
「愚問だったんだろうな、って今、聞かれて思った」
「え?」
「したければするかもだし、
 しなきゃしないでもいいんだ」
したければするのかよ。と、なぜか沈む俺がいる。
「好きでいていいんだって安心があって
 そういうのにドキドキできる関係があるだけでいいんだ。」
上杉にドキドキすんのかよ。って、ますます沈む俺がいた。

「・・・た・・じゃん」
「え?」
「月代に俺、キスしたじゃん」
覚えてねーけど。
「あ、うん」
「あ、ん時はドキドキとかしなかったのかよ」
「水品の行動にいちいちドキドキしてたら身がもたねーよ。この酔っ払い」
ちぇ。
「悪かったな」
「べつにいーよ。
 おまえが後悔しなけりゃ、さ」
いーのかよ。

「上杉は男が好きなのか?月代もそうなのか?」
俺はさ、月代は違うって思ってた。
だから上杉の一方通行片想いで終わるんだろうって思ってた。
上杉も女にもてるしそんなイメージなかったからそのうち目が覚めんだろって思ってた。

「上杉はどーなのかな。こういうの初めてだって言ってた。
 俺は、俺も、どーなのかな。男でも女でもあんま、抵抗ない」
俺でも、か?と聞きそうになったけど、自分の発言の無礼さに気付いて
「ごめん。不躾な質問ばっかした」
今更だけど謝る。
だいたいこいつ、月代、
んなこと聞くなって怒ればいいのに、
ちゃんと聞いてくれて答えてくれるのがわるい。
「水品だったらいいよ。
 理解してくれようとしてるんだって思うし
 マイノリティだって距離置かれるよりその方がいい」
「そうかよ」
少しだけ解ったから。
上杉が月代に告白した理由。

月代を独占したかったら恋人になるのがイチバンだってそう、思ったんだろ?




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月代にばかばか言われる俺だけど
(そのぶんばかばか言い返してるけどな、あいつもばかだし)
だからって俺がいつも何にも考えてないわけじゃない。

上杉の告白にはホント驚いた。
上杉は上杉の考えがあっての恋なんだろうとは思う。
上杉が今はまだその時じゃないと決めたんなら俺は言わない。
月代にも誰にも。俺はそこまで無神経な人間であるつもりはない。

でもこの事実を隠せるほど俺は賢くなかったようで、翌日いきなりバレた。



『事後処理』



「なんかこそこそしてるんだよね、君」
昔から人一倍鼻の利く古泉に感づかれた。チッ!タレ目のくせに!
「なんのことだよ?」
「自分で気付かない?挙動不審すぎるよ?」
「どこがだよ!普通だっての!」
「なんなのよ。ホントに無自覚なわけ?」
「だからなんだってんだよ・・・・・・」
「仕方ないから教えてあげましょう」
「なにをだよ・・・・・・」
「つっきー見る回数が多い。
 目が合ったらいつもは噛み付くくせに今日はよそよそしく目を逸らしてます」
「う・・・・・・」
「次に、つっきーの隣の席も気にしてる。
 ・・・・・・上杉?」
「ぐっ・・・・・・」
「ああ!」
「なんだよ」
「口を割らなくてもなんとな~く解った。ていうか確定?」
「なんでだよ」
「でもどうして水品が知ってるわけ?」

あああああああああ・・・・・・!古泉ぃー!
コイツエスパーか?それとも俺が悪いのか?

「間違われたんだよ!」
これで納得できんならマジで解ったなコイツ。
「なるほど、とんだ人違いしちゃったものだね上杉も。
 よりによって水品になんて。で、再チャレンジするって?」
マジで解っていやがるらしい。

「しねぇって」
「ふうん。それから?」
「は?」
「水品は?」
「は?」
なんか昨日も同じ質問された気がする。上杉から。

「あ~まだ気付いてないのね、まあいいわ」
「まあいいわ、じゃねーよ。なにがだよ古泉」
「それは自分で気付くまで気付かないというか認めないと思うよ。水品はね」
「意味解んねー。兎に角、俺は言うつもりじゃなかったんなからな。古泉も言うなよ」
言わねーだろうな、古泉は。と思う。
俺より全然ポーカーフェイスでひらひら笑って
素知らぬ素振りで変化なんか微塵も見せないんだろう。

「俺は言わないけど、水品の態度でバレないようにね。
 とくにつっきー本人に。
 そうねぇ。動揺しそうになったらこのつっきー思い出したら?」
「は?」
古泉が携帯をいじって手渡した。
画面には月代の白目を剥いたアホ顔がこれでもかと映っていた。マジでアホだ月代。
こんなのに告白を試みる上杉はこの月代を見たら眼が覚めるぞ。マチガイナク。
「ぶっははははははは。なんなのこいつ。なんなのこの顔。俺にもくれ古泉」
「いいよ。はい、送信っと」
これ上杉に送ってやろうかな?と、
改めてみたら別に教室で見せないような珍しい顔でもなかった。

なんでこんなのに想いを寄せちゃったんだろうな。
優等生ってのはどっか思考の路線がおかしいのかな。
アイツ結構イイヤツっぽかったし、頭もイイのに、もったいねー。
とか色々どうでもいいこと考えてたら日誌を抱えた月代が弁当片手にやってきた。

「昨日の日誌書き直しだって。
 なんでだよなぁ笹山ちゃん横暴」
「なんて書いたの?」
「書くことないから笹山ちゃんの似顔絵を」
「ばーか。当たり前だろ!ばか月代!」
「おっ?元気になったか?今日いちばんの挙動不審小僧め」
月代にも見抜かれてたのか。不味い。
「うっせ。変な顔」
「変な顔ってなんだよ」
「これだよ」
「うーわー、なんでおまえ俺の顔、携帯の画面で見てんの?
 おまえ俺のことどんだけ好きなわけ?ファンなのか?そうだったのか?」
「どの画面見て、んなことが言えんだよ。このアホ面見ろよ」
「愉快でいいだろアホ面」
自分でもアホ面言いやがった。
もう月代の顔がアホにしか見えなくなった。

マジ古泉には感謝だ。
古泉いなきゃいつかバレてた。
どう考えても本人にバレるのは最悪だ。
それに、やっぱ、古泉にバレて良かったと思う。
俺一人で抱え込むのにはどうにも荷が重い秘密だ。
何か思うことがあったときに相談するならj古泉は適任だ。

そういう訳で本当は不本意だったんだけどごめんな上杉。と、心ん中で手を合わせる。









すげぇことになった。すげえことを知った。マジでヤバイ。

『告白』

全ての元凶は月代だ。
そもそもあいつが
「水品いいところに!」
とか言って来てさ、
「上杉と放課後すぐに待ち合わせしてたんだけど
 ちょっと日直の仕事頼まれて遅れそうなんだよ。
 もう上杉行っちゃってるみたいで伝言頼まれてくれない?」
 
とか俺に(俺に!)頼むからこんなことに・・・・・・。

くそ。
同じクラスなのにわざわざ呼び出しして待ち合わせてる事に
重要性を見出せなかった月代と俺のうっかり具合もどうかと思う。
しかも上杉と待ち合わせている場所は旧校舎の使われていない教室。
意味深じゃないと思う方がどうかしてる。
が、変に勘繰るにも上杉と月代じゃ勘繰りようがないのも事実だった。

「上杉ー」
教室のドアの前で呼んだ。
それにしても誰一人いない旧校舎。
1階の突き当たりの教室はホント静まり返ってる。
ドアを開けようとした俺の影を察知してのことなのか
「月代、あの・・・・・・待ってくれ」
上杉の声が静止を促した。
ドア越しだから声がくぐもって違ったトーンで聞こえる。
そのせいで上杉も俺の声と月代の声解んねぇのかな、なんて思った。
そもそも月代が来ると思って待ってるんだからそう思い込んでても仕方ない。

月代じゃありませんよー。代行の伝言ですよー。
なんて軽口で否定しようとしたら恐るべき処遇にぶち当たった。
俺はこのときもっと早く否定の言葉を口にしていればと悔やまれてならない。

「そのままで聞いてくれないか」
え?あ、これ完全に月代だと思い込んでるな。
なんか重要なことだったらマズイ!とばかりに俺は行動に出た。
月代にバカだバカだと言われる俺だ。考えるより言葉が出る。言葉よりも行動に出る。
ガラリと教室のドアを開けたのと同時に真っ赤な顔でうつむいた上杉が痛烈な告白を発した。

「ずっと好きだった。」
はいいいいいいいい?
驚きすぎて「俺を?」とか聞いちゃう俺。
否、解ってる。解ってますよ。解ってるんですが混乱したんだよ。

「月代・・・を。」
そうですよね。はい。
「水品?」
はいそうです。伝言係の水品です。
「月代が日直の仕事頼まれたらしくて  
 少し遅れるって伝言・・・・・・を・・・・・・俺に」
言うの遅かったな。うん。
「そうか」

気まずいなんてもんじゃねえ。
でも、たぶん俺より上杉のが気まずいだろう。
俺が上杉の立場だったら気まずすぎて死にそうだ。
告白の相手間違ったってだけじゃなく相手が同性なんてさ。
しかもその相手がよりによって月代とか何の冗談だっての。んん?

「ええええええええええええ!?」
「・・・・・・」
「上杉が月代に告白!?」
「・・・・・・聞き苦しいものを聞かせてすまない」
「それって恋とか恋愛の意味での好きってこと?」
「そういうことなんだ」
相変わらず真っ赤で俯いた顔の上杉が言った。
こんな会話してんのに優等生の精悍な顔立ちは健在だ。つーか、
「上杉ってホモなの?」
ああ、俺ってやっぱデリカシーねぇな。
「あっごめん・・・・・・その」
「そう・・・・・・なんだろうな。
 他に誰かをこんな感情で好きだと思ったことがないから解らないんだ」
俺のデリカシーのない問いに律儀に答える上杉はいいやつだなぁと思った。
「そんなつもりじゃなかったけど、聞いちゃって悪かったな。誰にも言わねぇから。その」
「こちらこそ確認もせずに不用意だった。
 水品にとばっちりを食らわせた。すまない。
 でも・・・・・・水品で、水品が来てくれてよかった」
「え?」
「やっぱり告白するべきじゃなかった・・・・・・と思う。ありがとう水品。」
うっかりハチベエな部外者の俺にありがとうなんて言っちゃってる上杉。
「告白、しねえの?諦めるってこと?」
「気が焦りすぎていて・・・・・・時期尚早だったと思う。
 迷惑をかけないように伝えられる時があればまたいつか。
 今は、その時じゃないように思う。」
「ふうん」
上杉が月代を・・・ねぇ。改めて認識した。
気持ち悪いかと言えば意外だけど不思議とそういう感情はない。
上杉は面倒くさい片想いしてんだな、と同情してしまったくらいで。

「なんで月代なわけ?」
「え?」
あ、また俺、考えなしで口走っちゃった。
「や。上杉モテるらしいじゃん。
 古泉の情報だけどさ、上様とか言われててファンいるって。
 そんな上杉がよりによってなんであんな月代なんかをさー」
「・・・・・・水品は」
「は?俺?」
「いや、いいんだ」
「なんだそりゃ。 
 しかし驚いたなー」
「すまない」
「別にいいけどさ」
「月代と仲が良い水品にとっては不快な話だろう。
 気持ちの悪い思いをさせて悪かった」
さっきも思ったけど気持ち悪いとは思わなかったんだよな、俺。
「好きになっちゃったんなら
 しょうがねぇんじゃね?
 別に気持ち悪くねえよ」
あ、これ、月代も言いそうなセリフだな。
月代も気持ち悪いなんて言わないだろうな。
むしろ「ありがとう」とか言って笑いそうだぜ。
上杉はやっと顔を上げてちょっとびっくりした顔してた。

「でも、なんで月代?」
席は隣同士だった気がするけど
上杉と月代の接点が見当たらない。
ここまで思い詰めて恋しちゃった理由って?
「解らない。
 気が付けば好きになっていた。
 好きにならない理由がないんだ」
壮大な告白に俺は固まってしまった。
おい、月代、おまえどんだけなんだよ。

「協力・・・・・・してやろうか?」
「え?」
報われないまでも
ここまで立ち入って聞いちゃったからには
なんかしてやれることはないかなと思ってしまった。

「仲を取り持つとかはできねーけど、月代の好きなタイプとか聞いてやろうか?」
つっても普通は女だよなぁ。前提的にそこからだよなぁ。
うわ、上杉とんでもなく不憫な恋してんのな。
「水品は良い人だな」

俺が上杉に対して思った感情を口にされた。
そんなこと俺に言うヤツなんか滅多にいねぇよ。
「上杉がいいヤツだからそう見えんだよ。
 俺もう行くわ。どうする伝言?ここで月代待ってる?」
「そうだな、待って当たり障りのない会話でもしようと思う。
 来てくれて、聞いてくれて、ありがとう水品。」
礼なんか言われた。
上杉って表情崩れないお堅い優等生ってイメージだったけど
なんか思ってたよりいいヤツで、改めて顔見たらやっぱ整った顔してた。
答辞読むくらい頭良くて学年主席で女子のファンがいてなんで月代を、と改めて思った。不憫なヤツ。

上杉を残して教室を出たら
廊下の先でこっちに向かう月代が見えた。
大股で廊下走って来て急いでるのが解った。
「よう月代」
「水品、まだ上杉いる?」
「いる」
「そっか伝言ありがと」
「月代、」
「ん?」
「忘れ物」
月代の背にバックドロップを見舞ってやった。

「なんだよいきなり。いてぇ」
とか言いながら上杉の待つ教室に走っていった。煩ぇ。それくらい食らっとけ。
あ~あ、あの教室であの上杉があの月代と何て話してるんだろうなぁと思った。
あの告白、俺じゃなくて実際月代が受けてたらどう展開したのかなぁとも思った。
上杉の秘密の恋をよりによって俺なんかが知っちゃうなんて本当についてない。
ついてなさ過ぎてこの恋が自分のもののような気すらしてきてどうしようもない。

くそ月代め。
空を見上げたら雲ひとつない青空がバカみたいに広がってた。










水品上杉の恋を知る



すげー秘密を知ってしまった。
俺だけじゃ隠し切ることなんか出来ないから
古泉が秘密を分かち合ってくれたのには感謝だ。

『ファーストキス』

知らなかった上杉ってホモなのか。
あれ、違うのか?や、ホモだよな。
だって月代男だし、上杉も男だし。
なのに上杉は月代に告白したいくらい好きなんだし。
いまいちピンと来ないのは上杉がホモホモしくないせいか?
ってホモホモしいってなんだ?ホモっていったい何なんだ?

「なー古泉」
「なによ。またくだらないことでも考えてたんでしょ?」

古泉は相変わらずカマ口調だ。コイツがホモってんなら解る。

「うっせ。上杉ってモテるんだろ?」
「みたいね。生徒会関連で女子と接する機会多いみたいだし
 成績上位者にいつもトップで名前貼り出されているし
 無理もないんじゃない」
「・・・・・・」
「笑わないクールな感じがいいんだって」
「ふうん」
「笑わねえクールな優等生上杉が
 へらへら笑ってばっかの月代を好きだとか何の冗談だよ」

「・・・・・・つっきーも最近人気あるみたいよ。
 ほら、体育祭の活躍で目立っちゃったから。
 それとね、つっきーがあんな感じなのは水品くらいよ」
「は?俺にくらいって何がだよ」
「そんなにへらへら笑ってばっかりじゃないってこと。
 ときどき息をのむほど綺麗で凄味を感じるのよね」
怖いくらいに。と古泉は続けた。
「そーかよ」

言われてみて
凄味のある月代の目を知っている。
スポーツテストで勝負を受けた真剣なあの目。
綺麗というならそういう表現で言えなくもない姿。
桜の木の下で見た月代は儚いとさえ映ったんだ。

「だからってさなんで月代?
 そもそも女にモテる上杉がなんでホモかと」
「下世話」

ぽかりと古泉に叩かれた。
まぁ確かに下世話だな。

「だってさーその・・・・・・上杉、月代とキスとかしたいとか
 思ったりするのかなぁ、とか」
「大下世話。水品が言うな」

ぽかりと古泉にもう一度叩かれて睨まれた。
そうなんだけど気になるじゃん。

「じゃあ水品はどうなの?」
「は?なんだよ俺がなに?」
「水品はつっきーとキスしたい?」
「は?なんでそんな質問になるんだよ!」
「どーよ?気持ち悪い?」

考えた。考えたこともないけど考えた。
男同士がオッサン同士とか考えるとうえぇって思う。
けど、月代とキスして気持ち悪いかと言えば別にそうでもない。
月代とは普通に手ぇつないだり肩組んだり日常茶飯事だしな。

おいまて。
でもキスは別だろ。
普通男同士でしないだろ。
つか俺ファーストキスまだだから。

「想像できねーもん。経験ないし」

チェリーボーイと知られている古泉になら言える。

「あるよ」
「は?」
「水品、キスしたことあるよ」
「はぁぁぁぁぁぁああああ?」

古泉は開いていた料理本をぱたんと閉じて
机に伏せから俺に向き直った。

「だからちゃんと答えて、気持ち悪い?」

気持ち悪くは、ない。んだと思う。
気持ち悪いなんて思ったら上杉に悪いと思ったわけでもなくて
上杉と月代のキスは不快なような気持ちがしなくもないけど、
俺と月代がキスと思えば不快どころか・・・・・・どうした俺。

「別に」

なんか顔が熱くなってきたからぶっきらぼうに言った。

「そう」
「で、なんだよ。俺キスしたことねーし」
「してたよ。月代と」
「はああああああああああ???」
「こないだ俺んちで鍋したじゃない」
「へ?ああ」
「そんときお酒入っちゃって水品がつっきーに絡んでたよ」
「ままま、まさか」
「キスしなきゃ脱がすとか言ってさー」
「おおお俺がっ?」
「随分積極的だったけど?」
「まじで?まじで古泉?まじで?」
「まじもまじ。つっきー押し倒してタイヘンヘンタイだったよ」

頭の中が真っ白になった。
鍋のとき確かに記憶が抜けてる。
頭を巡らせても記憶は戻らない。

俺が月代を押し倒してキスした?
俺が月代にキスをせがんだ?

「水品の考えで言うならどこから見てもりっぱなホモだったね」

古泉が俺に止めの一発を放った。

「てか、つっきーにはチュウ
 何度も何度も寝付くまでしてたのに
 俺には来なかったよねぇ。なんでかなぁ?」

古泉が俺に止めの二発目を放った。
もう勘弁してくれ。

「そそそそそ・・・・・・そのこと月代は・・・・・・」
「勿論、覚えてるでしょうね」

穴があったら入りたい。
なくても掘って入りたい。
つーか鍋したの1ヶ月もまえじゃねーか。何を今更知っちゃったんだよ。

「あ、チャイム鳴ったし行こうか」

日直仕事で月代がいない休み時間の屋上で
下世話な話を持ち出したばかりにとんでもないカウンターを食らった。
俺のファーストキスは月代なんだそうだ。しかも俺が迫ってだと。とんでもねぇ。

教室に帰ったら上杉と目が合った。
申し訳ない気持ちとよくわからない高揚感があった。

遅れて席に着く月代の顔は見れなくて、
でも背中や髪や仕草とかがいちいち気になって
授業に集中なんかできなかった。ちくしょう月代め。
キスってなんだろうな。キスってどんなんだろうな。

月代とどんなキスしたんだよ俺。

変えることのできない事実なら
覚えていないことを悔しく思った。

「秘密にしてたけど俺、
 魔法使いなんだよね」
とか言う月代の夢で目が覚めた。

その日の授業中、
転寝して見た夢は中学の時の夢だった。

「水品どしたよ?怖い顔して」
「なんで機嫌悪いわけ?」
「あの日じゃね?」
「いつから女子になったんだ?」

煩い、煩い、煩い。
痛い、痛い、痛い。
頭が割れるように痛い。視界が暗雲に包まれたように悪い。

「やめなさいよ~。女
 の子の前でそういうネタは下品」

古泉の声がした。俺のためじゃねーのかよ。その仲裁。
それでも古泉のおかげで雑音は退散した。
それでも俺の頭も視界も戻らない。

「今日は一段と酷そうだね。例の頭痛?」
言葉を発する余裕のない俺はギュっと目を閉じてYESと伝える。

「どうしたもんかねぇ。
 原因が解ればいいんだけれどねぇ」
障りのない小声で気遣うように古泉が囁く。

「病院に行っても原因不明。鎮
 痛剤飲んでも効き目無し。ねえ」
かつて遂げた俺の無駄な努力を古泉が口走る。

「解ってんだよ。
俺は声にならない声でつぶやく。
解ってんだ。原因が何かなんて。
この暗雲に痛みの原因があるんだ。
ここに頭突っ込んでるから痛むんだ。
見えないやつには感じないのなら、そう説明したって無駄だろう。
俺だって見えなきゃ信じられないから誰にも言わないんだ。
でも見える。見えるし、痛い。近づかないようにしてたのに取り込まれてしまった。

もっと距離を取って油断しなければよかった。
距離があると思っていても気付いたら取り込まれている時だってある。
そういうのは大抵、俺が、凹んだときなんだ。と、今までの痛い経験で知った。
だからって凹むのをやめようと思ってやめれるなら最初から凹んだりしない。
ちくしょう、目覚まし止ってんじゃねぇよ。
ちくしょう、電車遅れてんじゃねぇよ。
ちくしょう、5メートル差で門閉めんじゃねぇよ。
ちくしょう、数学の田中、俺ばっか当ててんじゃねぇよ。
ちくしょう、そこの女、人を勝手に写メ撮ってんじゃねぇよ。
こういう時の女のハシャギ声は酷く頭痛を刺激して反響するように鋭い痛みで貫いてくる。
可愛い女の子は嫌いじゃないし、それなりにそれなりな青少年たる男の性が疼くときもある。

それでもできるだけ痛みを伴わないようにと俺が決めた高校は
サッカー名門校で共学なのに男女校舎が別という高校だった。



『暗雲煙』



相変わらず1ヶ月に多くて5日、少なくて1日、
あの暗雲煙は最大の大きさで俺の前に現れる。

容赦なく俺を包む。
容赦なく痛みの世界へ引きずり込む。
頭痛の暗雲に俺は勝手に煙と名付けた。

興味がてらの格好付けで煙草を吸うやつもいたけれど俺は絶対に嫌だった。
煙だからだ。野焼きも煙突も焼却場も嫌いだ。煙だらけだからだ。

そして運の悪いことに今日は曇りで湿気じみてて
おまけに焼却炉へゴミを運ぶ当番になってしまった。
よりによってその辺りに暗雲雲が色濃く浮かんでいる。
嫌だ。近づきたくない。

教室からゴミ箱を抱えてここまで来たものの教室から覗いた焼却場の暗雲は肥大して見える。
たじろがないわけがない。だって俺はアレが見えるし、痛いんだ。
ぼんやりと突っ立っていたら月代の声が俺を呼んだ。

「水品これも。」

見るとシュレッダーにかけられた紙の残骸が詰められているビニール袋を掲げている。

「ああ、入れ忘れか」
「そうみたい。
 ゴミ箱置いてある横に落ちてた。二度手間は嫌だろ」
「わざわざサンキュ」

とは言ったもののやはり焼却場に足が進まず視線だけを辿らせる。
その俺の視線を追って、なのか月代も同じように視線を辿ったらしい。

「あ~、なんか嫌だなぁ。天気のせいか」
「え?」
「焼却場。焼却炉。それさっさと焼いちゃおう。俺も手伝う」
「え?」
月代は俺の手からゴミ箱を奪うとスタスタと珍しく厳しい顔で歩いて行く。
俺の当番なんだからそのまま突っ立っているわけにも行かずその背に続く。
「あ・・・」

俺は暗雲に包まれた光景を幾度も見、経験し、感じてきた。
それなのにそんなのは初めて見る光景だった。

月代が進むと暗雲煙が後退する。

月代が踏み込むとシャボン玉がはじける様に暗雲煙がはじけ飛ぶ。
がさがさとゴミを投げ込んでさっさと火を放ってバタンとその重い蓋を閉じてから月代は手を払った。

暗雲はたちまち消え去った。むしろ・・・そうむしろ浄化されたように見えた。
こういう現象を神が降臨したと表現するのなら俺は神の存在を信じる。

「月代・・・・・・」
「ん?あ、別に掃除当番サボったわけじゃないよ
 廊下踊り場終わったし、だいたいゴミ捨てなんて一番最後の役割だしな」
「そうじゃなくて・・・・・・見えるのか?」
「何が?」
「見えないのか?」
アレが見えるのが月代だったらいいと思ったのに。
月代と共通の見えるものだったらいいと思えるのに。

「なんかさーあの辺変な感じしなかった?湿っぽいってゆーのかさー」
「う・・・うん!うん!だよな!」
「だから燃えカスが散乱してんのか解んねーけど
 さっさと燃やして閉めちゃえばいーかと思って」
「今は湿った感じ消えた?」
「っぽいかな?」

消えたんだよ!散!って感じで消えたんだよ!
つーかおまえが消したんだよ月代!

「んじゃー教室帰ろうぜー」

俺の長年のまさしく頭痛の種を掻き消し去ってなんでもないように笑ってんじゃねぇ。
それ、すごいことなんだぞ。それ、奇跡みたいなことなんだぞ。
解んねーか。解んねーよな。見えない、痛まない、散!だもんなぁ。
解んねーのは俺も同じ・・・か。

俺には暗雲煙が見えて頭痛に襲われるのが解る。
月代は暗雲煙を感じて追い払う方法が解る。
そっちのほうがいいなぁ。ズルイよなぁ。
けれど。けれど。けれど。
月代といれば無敵じゃん?
月代といれる理由じゃん?

「つきしろ~~」
「な~んだよ~」
ふざけてると思ったのかふざけて返してくる。しかも特上の笑顔。

秘密を教えろって言ったアレ、
もし月代が夢の中のセリフみたいに
「魔法使いなんだよね」
なんて言ったなら俺は信じるしかない。

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BrownBetty 
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