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すげぇことになった。すげえことを知った。マジでヤバイ。

『告白』

全ての元凶は月代だ。
そもそもあいつが
「水品いいところに!」
とか言って来てさ、
「上杉と放課後すぐに待ち合わせしてたんだけど
 ちょっと日直の仕事頼まれて遅れそうなんだよ。
 もう上杉行っちゃってるみたいで伝言頼まれてくれない?」
 
とか俺に(俺に!)頼むからこんなことに・・・・・・。

くそ。
同じクラスなのにわざわざ呼び出しして待ち合わせてる事に
重要性を見出せなかった月代と俺のうっかり具合もどうかと思う。
しかも上杉と待ち合わせている場所は旧校舎の使われていない教室。
意味深じゃないと思う方がどうかしてる。
が、変に勘繰るにも上杉と月代じゃ勘繰りようがないのも事実だった。

「上杉ー」
教室のドアの前で呼んだ。
それにしても誰一人いない旧校舎。
1階の突き当たりの教室はホント静まり返ってる。
ドアを開けようとした俺の影を察知してのことなのか
「月代、あの・・・・・・待ってくれ」
上杉の声が静止を促した。
ドア越しだから声がくぐもって違ったトーンで聞こえる。
そのせいで上杉も俺の声と月代の声解んねぇのかな、なんて思った。
そもそも月代が来ると思って待ってるんだからそう思い込んでても仕方ない。

月代じゃありませんよー。代行の伝言ですよー。
なんて軽口で否定しようとしたら恐るべき処遇にぶち当たった。
俺はこのときもっと早く否定の言葉を口にしていればと悔やまれてならない。

「そのままで聞いてくれないか」
え?あ、これ完全に月代だと思い込んでるな。
なんか重要なことだったらマズイ!とばかりに俺は行動に出た。
月代にバカだバカだと言われる俺だ。考えるより言葉が出る。言葉よりも行動に出る。
ガラリと教室のドアを開けたのと同時に真っ赤な顔でうつむいた上杉が痛烈な告白を発した。

「ずっと好きだった。」
はいいいいいいいい?
驚きすぎて「俺を?」とか聞いちゃう俺。
否、解ってる。解ってますよ。解ってるんですが混乱したんだよ。

「月代・・・を。」
そうですよね。はい。
「水品?」
はいそうです。伝言係の水品です。
「月代が日直の仕事頼まれたらしくて  
 少し遅れるって伝言・・・・・・を・・・・・・俺に」
言うの遅かったな。うん。
「そうか」

気まずいなんてもんじゃねえ。
でも、たぶん俺より上杉のが気まずいだろう。
俺が上杉の立場だったら気まずすぎて死にそうだ。
告白の相手間違ったってだけじゃなく相手が同性なんてさ。
しかもその相手がよりによって月代とか何の冗談だっての。んん?

「ええええええええええええ!?」
「・・・・・・」
「上杉が月代に告白!?」
「・・・・・・聞き苦しいものを聞かせてすまない」
「それって恋とか恋愛の意味での好きってこと?」
「そういうことなんだ」
相変わらず真っ赤で俯いた顔の上杉が言った。
こんな会話してんのに優等生の精悍な顔立ちは健在だ。つーか、
「上杉ってホモなの?」
ああ、俺ってやっぱデリカシーねぇな。
「あっごめん・・・・・・その」
「そう・・・・・・なんだろうな。
 他に誰かをこんな感情で好きだと思ったことがないから解らないんだ」
俺のデリカシーのない問いに律儀に答える上杉はいいやつだなぁと思った。
「そんなつもりじゃなかったけど、聞いちゃって悪かったな。誰にも言わねぇから。その」
「こちらこそ確認もせずに不用意だった。
 水品にとばっちりを食らわせた。すまない。
 でも・・・・・・水品で、水品が来てくれてよかった」
「え?」
「やっぱり告白するべきじゃなかった・・・・・・と思う。ありがとう水品。」
うっかりハチベエな部外者の俺にありがとうなんて言っちゃってる上杉。
「告白、しねえの?諦めるってこと?」
「気が焦りすぎていて・・・・・・時期尚早だったと思う。
 迷惑をかけないように伝えられる時があればまたいつか。
 今は、その時じゃないように思う。」
「ふうん」
上杉が月代を・・・ねぇ。改めて認識した。
気持ち悪いかと言えば意外だけど不思議とそういう感情はない。
上杉は面倒くさい片想いしてんだな、と同情してしまったくらいで。

「なんで月代なわけ?」
「え?」
あ、また俺、考えなしで口走っちゃった。
「や。上杉モテるらしいじゃん。
 古泉の情報だけどさ、上様とか言われててファンいるって。
 そんな上杉がよりによってなんであんな月代なんかをさー」
「・・・・・・水品は」
「は?俺?」
「いや、いいんだ」
「なんだそりゃ。 
 しかし驚いたなー」
「すまない」
「別にいいけどさ」
「月代と仲が良い水品にとっては不快な話だろう。
 気持ちの悪い思いをさせて悪かった」
さっきも思ったけど気持ち悪いとは思わなかったんだよな、俺。
「好きになっちゃったんなら
 しょうがねぇんじゃね?
 別に気持ち悪くねえよ」
あ、これ、月代も言いそうなセリフだな。
月代も気持ち悪いなんて言わないだろうな。
むしろ「ありがとう」とか言って笑いそうだぜ。
上杉はやっと顔を上げてちょっとびっくりした顔してた。

「でも、なんで月代?」
席は隣同士だった気がするけど
上杉と月代の接点が見当たらない。
ここまで思い詰めて恋しちゃった理由って?
「解らない。
 気が付けば好きになっていた。
 好きにならない理由がないんだ」
壮大な告白に俺は固まってしまった。
おい、月代、おまえどんだけなんだよ。

「協力・・・・・・してやろうか?」
「え?」
報われないまでも
ここまで立ち入って聞いちゃったからには
なんかしてやれることはないかなと思ってしまった。

「仲を取り持つとかはできねーけど、月代の好きなタイプとか聞いてやろうか?」
つっても普通は女だよなぁ。前提的にそこからだよなぁ。
うわ、上杉とんでもなく不憫な恋してんのな。
「水品は良い人だな」

俺が上杉に対して思った感情を口にされた。
そんなこと俺に言うヤツなんか滅多にいねぇよ。
「上杉がいいヤツだからそう見えんだよ。
 俺もう行くわ。どうする伝言?ここで月代待ってる?」
「そうだな、待って当たり障りのない会話でもしようと思う。
 来てくれて、聞いてくれて、ありがとう水品。」
礼なんか言われた。
上杉って表情崩れないお堅い優等生ってイメージだったけど
なんか思ってたよりいいヤツで、改めて顔見たらやっぱ整った顔してた。
答辞読むくらい頭良くて学年主席で女子のファンがいてなんで月代を、と改めて思った。不憫なヤツ。

上杉を残して教室を出たら
廊下の先でこっちに向かう月代が見えた。
大股で廊下走って来て急いでるのが解った。
「よう月代」
「水品、まだ上杉いる?」
「いる」
「そっか伝言ありがと」
「月代、」
「ん?」
「忘れ物」
月代の背にバックドロップを見舞ってやった。

「なんだよいきなり。いてぇ」
とか言いながら上杉の待つ教室に走っていった。煩ぇ。それくらい食らっとけ。
あ~あ、あの教室であの上杉があの月代と何て話してるんだろうなぁと思った。
あの告白、俺じゃなくて実際月代が受けてたらどう展開したのかなぁとも思った。
上杉の秘密の恋をよりによって俺なんかが知っちゃうなんて本当についてない。
ついてなさ過ぎてこの恋が自分のもののような気すらしてきてどうしようもない。

くそ月代め。
空を見上げたら雲ひとつない青空がバカみたいに広がってた。










水品上杉の恋を知る



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すげー秘密を知ってしまった。
俺だけじゃ隠し切ることなんか出来ないから
古泉が秘密を分かち合ってくれたのには感謝だ。

『ファーストキス』

知らなかった上杉ってホモなのか。
あれ、違うのか?や、ホモだよな。
だって月代男だし、上杉も男だし。
なのに上杉は月代に告白したいくらい好きなんだし。
いまいちピンと来ないのは上杉がホモホモしくないせいか?
ってホモホモしいってなんだ?ホモっていったい何なんだ?

「なー古泉」
「なによ。またくだらないことでも考えてたんでしょ?」

古泉は相変わらずカマ口調だ。コイツがホモってんなら解る。

「うっせ。上杉ってモテるんだろ?」
「みたいね。生徒会関連で女子と接する機会多いみたいだし
 成績上位者にいつもトップで名前貼り出されているし
 無理もないんじゃない」
「・・・・・・」
「笑わないクールな感じがいいんだって」
「ふうん」
「笑わねえクールな優等生上杉が
 へらへら笑ってばっかの月代を好きだとか何の冗談だよ」

「・・・・・・つっきーも最近人気あるみたいよ。
 ほら、体育祭の活躍で目立っちゃったから。
 それとね、つっきーがあんな感じなのは水品くらいよ」
「は?俺にくらいって何がだよ」
「そんなにへらへら笑ってばっかりじゃないってこと。
 ときどき息をのむほど綺麗で凄味を感じるのよね」
怖いくらいに。と古泉は続けた。
「そーかよ」

言われてみて
凄味のある月代の目を知っている。
スポーツテストで勝負を受けた真剣なあの目。
綺麗というならそういう表現で言えなくもない姿。
桜の木の下で見た月代は儚いとさえ映ったんだ。

「だからってさなんで月代?
 そもそも女にモテる上杉がなんでホモかと」
「下世話」

ぽかりと古泉に叩かれた。
まぁ確かに下世話だな。

「だってさーその・・・・・・上杉、月代とキスとかしたいとか
 思ったりするのかなぁ、とか」
「大下世話。水品が言うな」

ぽかりと古泉にもう一度叩かれて睨まれた。
そうなんだけど気になるじゃん。

「じゃあ水品はどうなの?」
「は?なんだよ俺がなに?」
「水品はつっきーとキスしたい?」
「は?なんでそんな質問になるんだよ!」
「どーよ?気持ち悪い?」

考えた。考えたこともないけど考えた。
男同士がオッサン同士とか考えるとうえぇって思う。
けど、月代とキスして気持ち悪いかと言えば別にそうでもない。
月代とは普通に手ぇつないだり肩組んだり日常茶飯事だしな。

おいまて。
でもキスは別だろ。
普通男同士でしないだろ。
つか俺ファーストキスまだだから。

「想像できねーもん。経験ないし」

チェリーボーイと知られている古泉になら言える。

「あるよ」
「は?」
「水品、キスしたことあるよ」
「はぁぁぁぁぁぁああああ?」

古泉は開いていた料理本をぱたんと閉じて
机に伏せから俺に向き直った。

「だからちゃんと答えて、気持ち悪い?」

気持ち悪くは、ない。んだと思う。
気持ち悪いなんて思ったら上杉に悪いと思ったわけでもなくて
上杉と月代のキスは不快なような気持ちがしなくもないけど、
俺と月代がキスと思えば不快どころか・・・・・・どうした俺。

「別に」

なんか顔が熱くなってきたからぶっきらぼうに言った。

「そう」
「で、なんだよ。俺キスしたことねーし」
「してたよ。月代と」
「はああああああああああ???」
「こないだ俺んちで鍋したじゃない」
「へ?ああ」
「そんときお酒入っちゃって水品がつっきーに絡んでたよ」
「ままま、まさか」
「キスしなきゃ脱がすとか言ってさー」
「おおお俺がっ?」
「随分積極的だったけど?」
「まじで?まじで古泉?まじで?」
「まじもまじ。つっきー押し倒してタイヘンヘンタイだったよ」

頭の中が真っ白になった。
鍋のとき確かに記憶が抜けてる。
頭を巡らせても記憶は戻らない。

俺が月代を押し倒してキスした?
俺が月代にキスをせがんだ?

「水品の考えで言うならどこから見てもりっぱなホモだったね」

古泉が俺に止めの一発を放った。

「てか、つっきーにはチュウ
 何度も何度も寝付くまでしてたのに
 俺には来なかったよねぇ。なんでかなぁ?」

古泉が俺に止めの二発目を放った。
もう勘弁してくれ。

「そそそそそ・・・・・・そのこと月代は・・・・・・」
「勿論、覚えてるでしょうね」

穴があったら入りたい。
なくても掘って入りたい。
つーか鍋したの1ヶ月もまえじゃねーか。何を今更知っちゃったんだよ。

「あ、チャイム鳴ったし行こうか」

日直仕事で月代がいない休み時間の屋上で
下世話な話を持ち出したばかりにとんでもないカウンターを食らった。
俺のファーストキスは月代なんだそうだ。しかも俺が迫ってだと。とんでもねぇ。

教室に帰ったら上杉と目が合った。
申し訳ない気持ちとよくわからない高揚感があった。

遅れて席に着く月代の顔は見れなくて、
でも背中や髪や仕草とかがいちいち気になって
授業に集中なんかできなかった。ちくしょう月代め。
キスってなんだろうな。キスってどんなんだろうな。

月代とどんなキスしたんだよ俺。

変えることのできない事実なら
覚えていないことを悔しく思った。

「秘密にしてたけど俺、
 魔法使いなんだよね」
とか言う月代の夢で目が覚めた。

その日の授業中、
転寝して見た夢は中学の時の夢だった。

「水品どしたよ?怖い顔して」
「なんで機嫌悪いわけ?」
「あの日じゃね?」
「いつから女子になったんだ?」

煩い、煩い、煩い。
痛い、痛い、痛い。
頭が割れるように痛い。視界が暗雲に包まれたように悪い。

「やめなさいよ~。女
 の子の前でそういうネタは下品」

古泉の声がした。俺のためじゃねーのかよ。その仲裁。
それでも古泉のおかげで雑音は退散した。
それでも俺の頭も視界も戻らない。

「今日は一段と酷そうだね。例の頭痛?」
言葉を発する余裕のない俺はギュっと目を閉じてYESと伝える。

「どうしたもんかねぇ。
 原因が解ればいいんだけれどねぇ」
障りのない小声で気遣うように古泉が囁く。

「病院に行っても原因不明。鎮
 痛剤飲んでも効き目無し。ねえ」
かつて遂げた俺の無駄な努力を古泉が口走る。

「解ってんだよ。
俺は声にならない声でつぶやく。
解ってんだ。原因が何かなんて。
この暗雲に痛みの原因があるんだ。
ここに頭突っ込んでるから痛むんだ。
見えないやつには感じないのなら、そう説明したって無駄だろう。
俺だって見えなきゃ信じられないから誰にも言わないんだ。
でも見える。見えるし、痛い。近づかないようにしてたのに取り込まれてしまった。

もっと距離を取って油断しなければよかった。
距離があると思っていても気付いたら取り込まれている時だってある。
そういうのは大抵、俺が、凹んだときなんだ。と、今までの痛い経験で知った。
だからって凹むのをやめようと思ってやめれるなら最初から凹んだりしない。
ちくしょう、目覚まし止ってんじゃねぇよ。
ちくしょう、電車遅れてんじゃねぇよ。
ちくしょう、5メートル差で門閉めんじゃねぇよ。
ちくしょう、数学の田中、俺ばっか当ててんじゃねぇよ。
ちくしょう、そこの女、人を勝手に写メ撮ってんじゃねぇよ。
こういう時の女のハシャギ声は酷く頭痛を刺激して反響するように鋭い痛みで貫いてくる。
可愛い女の子は嫌いじゃないし、それなりにそれなりな青少年たる男の性が疼くときもある。

それでもできるだけ痛みを伴わないようにと俺が決めた高校は
サッカー名門校で共学なのに男女校舎が別という高校だった。



『暗雲煙』



相変わらず1ヶ月に多くて5日、少なくて1日、
あの暗雲煙は最大の大きさで俺の前に現れる。

容赦なく俺を包む。
容赦なく痛みの世界へ引きずり込む。
頭痛の暗雲に俺は勝手に煙と名付けた。

興味がてらの格好付けで煙草を吸うやつもいたけれど俺は絶対に嫌だった。
煙だからだ。野焼きも煙突も焼却場も嫌いだ。煙だらけだからだ。

そして運の悪いことに今日は曇りで湿気じみてて
おまけに焼却炉へゴミを運ぶ当番になってしまった。
よりによってその辺りに暗雲雲が色濃く浮かんでいる。
嫌だ。近づきたくない。

教室からゴミ箱を抱えてここまで来たものの教室から覗いた焼却場の暗雲は肥大して見える。
たじろがないわけがない。だって俺はアレが見えるし、痛いんだ。
ぼんやりと突っ立っていたら月代の声が俺を呼んだ。

「水品これも。」

見るとシュレッダーにかけられた紙の残骸が詰められているビニール袋を掲げている。

「ああ、入れ忘れか」
「そうみたい。
 ゴミ箱置いてある横に落ちてた。二度手間は嫌だろ」
「わざわざサンキュ」

とは言ったもののやはり焼却場に足が進まず視線だけを辿らせる。
その俺の視線を追って、なのか月代も同じように視線を辿ったらしい。

「あ~、なんか嫌だなぁ。天気のせいか」
「え?」
「焼却場。焼却炉。それさっさと焼いちゃおう。俺も手伝う」
「え?」
月代は俺の手からゴミ箱を奪うとスタスタと珍しく厳しい顔で歩いて行く。
俺の当番なんだからそのまま突っ立っているわけにも行かずその背に続く。
「あ・・・」

俺は暗雲に包まれた光景を幾度も見、経験し、感じてきた。
それなのにそんなのは初めて見る光景だった。

月代が進むと暗雲煙が後退する。

月代が踏み込むとシャボン玉がはじける様に暗雲煙がはじけ飛ぶ。
がさがさとゴミを投げ込んでさっさと火を放ってバタンとその重い蓋を閉じてから月代は手を払った。

暗雲はたちまち消え去った。むしろ・・・そうむしろ浄化されたように見えた。
こういう現象を神が降臨したと表現するのなら俺は神の存在を信じる。

「月代・・・・・・」
「ん?あ、別に掃除当番サボったわけじゃないよ
 廊下踊り場終わったし、だいたいゴミ捨てなんて一番最後の役割だしな」
「そうじゃなくて・・・・・・見えるのか?」
「何が?」
「見えないのか?」
アレが見えるのが月代だったらいいと思ったのに。
月代と共通の見えるものだったらいいと思えるのに。

「なんかさーあの辺変な感じしなかった?湿っぽいってゆーのかさー」
「う・・・うん!うん!だよな!」
「だから燃えカスが散乱してんのか解んねーけど
 さっさと燃やして閉めちゃえばいーかと思って」
「今は湿った感じ消えた?」
「っぽいかな?」

消えたんだよ!散!って感じで消えたんだよ!
つーかおまえが消したんだよ月代!

「んじゃー教室帰ろうぜー」

俺の長年のまさしく頭痛の種を掻き消し去ってなんでもないように笑ってんじゃねぇ。
それ、すごいことなんだぞ。それ、奇跡みたいなことなんだぞ。
解んねーか。解んねーよな。見えない、痛まない、散!だもんなぁ。
解んねーのは俺も同じ・・・か。

俺には暗雲煙が見えて頭痛に襲われるのが解る。
月代は暗雲煙を感じて追い払う方法が解る。
そっちのほうがいいなぁ。ズルイよなぁ。
けれど。けれど。けれど。
月代といれば無敵じゃん?
月代といれる理由じゃん?

「つきしろ~~」
「な~んだよ~」
ふざけてると思ったのかふざけて返してくる。しかも特上の笑顔。

秘密を教えろって言ったアレ、
もし月代が夢の中のセリフみたいに
「魔法使いなんだよね」
なんて言ったなら俺は信じるしかない。

「水品の圧勝だったな」

スポーツテストの翌日、
昨日の弱った姿を微塵も感じさせない
いつもの顔で登校してきた月代が言ってきた。

上杉でも古泉でもなく真っ先に俺のトコに来たから
まあ、何をでもないけど許してやる。

「棄権かよ、ふざけんな」
「悪い」
いつもの俺の適当な憎まれ口に素直に謝るなよ。
「熱、もういいのか?」
「うん、一晩寝たら下がった」
「よかったな」
「ありがと」
なんか調子狂うんだけど。

気になることがある。
上杉が昨日言ったこと。
月代が熱出したのは上杉のせいだって。
それどう意味?どういうこと?なんなの?
どう聞いていいか解らなくてとりあえず、
上杉の名前出そうとしたところで古泉が来た。

「つっきー大丈夫?
 今日は休まなくて平気?」
「大丈夫。心配ありがと古泉」
ちぇっ。聞きそびれた。

「なんか変な気分だよ」
月代が言った。
「なにが?」
古泉が聞いた。
「俺、熱、出たの初めてなんだよね
 風邪も引いたことないんだよ」
「マジ?」
「あらまあ」

この歳になって風邪初体験って!
「バカは風邪引かないって言うからな!」
良いこと思いついた!って言ってみたら

「はい。言うと思った!バカに言われたくないわよね~
 だいたい月代風邪引いたって話してんのにそれはないわ」
と古泉に言われた。
月代は不思議な感じで力なく笑ってた。

「つっきーなんか元気ない?
 まだちょっと調子悪い?」
古泉もどっかおかしい月代に気付いたみたいで
わりと真剣な顔で心配してた。

「そう?」
月代は何でもないみたいな返答してたけど
なんだか上杉のことにしても解らないことだらけで
もやもやしてどうしようもなかったから月代に飛びついた。

「ちょ水品!」
「どうした?」
月代の首根っこに後ろから両腕で羽交い絞めたら
 
ちゃんと普通の体温で俺よりちょっと低いくらいで
もう熱もない普通の月代に安心した。

「平熱だ」
「うん。もう下がったよ」
俺の羽交い絞めをふりほどくことなく月代が笑う。
首から月代のなんかいい匂いがした。
くんくん嗅いだらさすがに古泉が
「ちょ、やめなさい。犬みたいよ」
だってさ。犬でもいいや。

「何がいい?」
ふいに月代が聞く。
「何がって何が?」
「勝負、俺負けちゃったし」

負けたもなにもお前、風邪引いて熱あって、
なのに午前中、サッカー部期待の星のこの俺に、
よりによって走りで勝ってんじゃねーか。ふざけんな。

「負けてねぇよ」
「棄権したから?」
「そうじゃねぇよ。
 そうじゃなくて・・・・・・もういいよ!」
「水品は、帰宅部のつっきーに、
 走りで負けたサッカー部期待の星だものねぇ」
「うっせえ古泉!」
それを言うんじゃねえ!

「どうしてもってんなら・・・・・・」

「は?」
「ん?」
「秘密教えろ」

上杉のこととか
なんでもいいから
もっと月代を教えろ
俺の知らない月代とか嫌なんだよ。
昨日からのもやもやが消えないんだよ。

「秘密って・・・・・・」
古泉はあきれたように言うけど
「いいよ。秘密かあ。何だろうな」
月代は後ろにへばりついてる俺に
首を回してすげえ近距離のトコの顔で言った。

俺は月代を嫌いなんかじゃないんだって
強く、強く、思った。
嫌いなんかじゃないんだ。
張り合いたいわけでもないんだ。
ただ、この胸のもやもやを知りたいんだ。

知ってるなら教えてくれよ。
おまえの秘密も教えてくれよ。


びっくりした。月代に。
あいつなんで運動部に入らねーんだろう?
マジでそう思うくらい運動神経よかったから。

一日スポーツテストの日。
月代に勝負を挑んだ俺。

筋トレ系は俺の勝ちだったし、
他も僅差でほとんど勝ったけど、
まさか走りで俺が月代に負けるとは。
サッカー部の俺としてはそれだけは、
絶対負けられないし負けたくなかった。

だから結果として俺は負けた気がした。

午後の体力テストでもし負けたら
完全に俺の完敗だしそれは避けたい。

そう思って、
月代を見るもどこにもいない。
あいつメシどこて食ってんだっけ?
「古泉、月代どこだ?」
隣で弁当箱を広げる古泉に聞いたら、
「つっきー?あ、さっき笹岡ちゃんと話してたの見たけど
 教室にいないわねえ」
だど。
笹岡ちゃん?笹岡先生と?
「ちょっと俺、行ってくる」
「どこに?」
「月代んとこ」
「なんで?」
「うっせえ!」

なんでなんか知るかよ。
なんでかいなきゃ気になるんだ。
なんでか月代の顔が見たいんだ。

丁度、笹岡先生が中庭を歩いているのが見えた。
職員室まで行かずに済んだとダッシュして追った。

「笹岡先生!」
「おう水品どうした息せき切って?」
「月代は?」
「月代?」
「さっき先生と月代が話してたって!」
「ああ、なんか顔赤いし
 ふらふらしてたから声かけたんだ」
「ふらふら?」
「ああ。保健室に連れてった」
「保健室?
 具合悪いんですか?」
「熱があるみたいで
 今は安静にしてる」
「マジか!」
「おい、水品……」

笹岡先生はまだ何か言いかけてたけど
聞いてる余裕なんか俺にはなかった。

熱があった?
俺に走り勝っといて?

保健室のドアを開けたら
なんか不思議な光景があった。
なんで上杉?なんで月代と上杉?

横たわる月代に寄り添っている上杉。
白いベッドに横たわる月代は目を閉じていて
その横で月代の顔を覗き込むようにしている上杉。

なんか、なんでか、一瞬ドキッとした。
だいたいなんで上杉なんだ?

「上杉、保健委員だっけ?」
確かこいつクラス委員だったよな。
「水品」
慌てたように椅子から立って
「否、違う」
と答えた。
「月代熱あんの?」
「ああ」
「具合どう?」
「今は眠っている。
 顔が熱くて苦しそうだ」
「ふうん」
なんだかむかついた。
誰にか何にかわかんねえ。

月代に近づこうとしたら、
上杉が席を立って月代から離れた。
さっきまでスポーツテストで競い合った月代が
蒼い顔で苦しそうに息をしながら目を閉じていた。
弱ってる月代なんか見たことなかったから驚いた。
驚きすぎて俺まで弱ってしまって胸が苦しくなった。

「なんで熱なんか出してんだよ。
 午後の勝負どうすんだよ」
なんて言いながら本当は午後の勝負なんて
スポーツテストの勝ち負けなんてどうでもよくなってた。

月代、目え開けろよ。
熱下げて俺見て笑えよ。
勝手にこんなとこで弱ってんなよ。

「なんで上杉はここにいんの?」
俺は月代がこんなんなってるの知らなかった。
なのに保健委員でもなければ接点もなさそうな上杉。
上杉には振り返らずに月代の閉じた目を見て聞いた。

「……だから」
「え?」
「月代が熱を出したのは俺のせいだから」
「は?」
きっと俺はぶしつけなまでに凶悪な顔で上杉を見た。
上杉はうつむいてから月代を見やるように顎をあげた。

「どういう意味?」
と言葉にすると同時に
昼休みを終えるチャイムが重なった。
廊下をこちらに向かう足音が聞こえて
「おまえらまだいたのか?
 チャイムなったぞさっさと戻れ」
と笹岡先生が入室して来た。
上杉はなんか言いたそうにしてて、
何を言おうとしてるのか解ったから、
「行くぞ上杉。
 俺らがいても月代に何もできねーよ」
と促した。
そうでも言わなきゃ、上杉、
ここにいるって言いそうだったから。

聞きそびれた上杉への疑問。
なんで月代が熱を出したのが上杉のせいなんだよ?
上杉と月代に何の接点があってどうなってそうなるんだ?

むかむかしてたらスポーツテストの持久走で
同じサッカー部で同部屋のチビ生田に抜かれた。
くそ!それもこれもどれも全部月代のせいだからな!

授業を終えて月代のトコ
上杉よりも絶対に早く行こうと思ってたのに
遅れて来た笹岡先生が月代は早退したと告げた。

瞬間なんでか上杉と目が合って気まずかった。
「なんなんだよもう!」
イライラして頭をかきむしってたら
その髪を撫でつけながら
「心配ね」
って古泉が言った。
「触んな!」
俺は古泉にあたった。
それくらいしかできなかった。

バカみたいに笑う月代の顔が懐かしかった。





 
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BrownBetty 
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